関西大学の宮本勝浩名誉教授は、2019年のゴールデンウィークの経済効果の推定額を2 兆1395億8969万円と発表した。推定額は、2012 年の東京スカイツリーの建築費用や観光客の消費を含めた経済効果 (1861億2000万円)の約11.5倍、2017年の上野動物園のシャンシャン誕生の経済効果(267億4736万円)の約80倍となった。
経済効果は、直接的な消費である「直接効果」と、「一次波及効果」、「二次波及効果」の合計で表される。宮本名誉教授は、
「国内・海外旅行によるプラスの経済効果」
「休日増加に伴うデパートなど小売店の売上増加によるプラスの経済効果」
「休日増加に伴う非正規従業員の仕事減少による、非正規従業員の収入減少・消費減少がもたらすマイナスの経済効果」
の3つについて試算した。
旅行だけで9000億円以上のプラス 「いつもより海外で景気よくお金を使う」
JTBが今年4月4日に発表したデータによると、ゴールデンウィークの国内旅行者の人数は2401 万人だという。交通費、宿泊費、土産代、 飲食費などを含む一人あたりの平均費用は3万6800円のため、国内旅行の総額は8835億6800万円となる。
海外旅行者数は66万2000人で、一人当たりの平均費用は26万8000円。海外旅行の総額は1774億1600万円となる。
日本人が海外旅行で使ったお金のうち、いくらかは海外のホテルやレストランなどに支払われる。宮本名誉教授によると、国内の旅行会社に入るマージンは通常20~25%程度だという。
しかし、「ゴールデンウィークの時は、日本人旅行者は景気よくお金を使うので旅行費は高くなり、国内旅行会社の取り分は 30%前後になることもある」ことを踏まえ、日本人海外旅行者の支払った金額のうち約25%が日本の経済効果に貢献すると仮定し、国内で消費される金額を443億5400万円と推定した。これで、国内・海外旅行による直接効果は9279億2200万円となる。
次に、小売店の売上増加による効果を試算した。経済産業省の「ミニ経済分析」から2017年1年間の小売店の売上総額を計算し、平日数と休日数から、平日・休日それぞれ1日あたりの売上金額を出した結果、10連休中の小売業の増加額は1012億4988万円となった。
非正規労働者は全体で556億円の収入減の試算
総務省や厚労省の資料で発表されている非正規職員・従業員の人数や平均時給などを元に、非正規従業員の収入減少による消費減少の効果も試算した。今年のゴールデンウィークは、5月1日が皇太子さまの天皇即位による祝日、4月30日と5月2日は祝日法により祝日になっている。例年ならこの3日間は平日だったはずだ。
宮本名誉教授は、平均時給1250円で1日7時間働く非正規労働者のうち、1割が3日間働かなくなると仮定。非正規労働者全体の収入で、556億5000万円のマイナスが生じるとしている。
日本人の所得に占める消費の割合が69.4なので、このうち386億2110万円が、ゴールデンウィーク10連休で失われる消費とみなした。
国内・海外旅行の直接効果、小売店の売上増加による直接効果、非正規労働者の減収による直接効果を合計すると9905億5078万円。これに、一次波及効果と二次波及効果の額を合わせて2兆1395億8969万円と結論付けた。
宮本名誉教授は発表した資料の中で、10連休の経済効果が非常に大きい一方で、
「非正規労働者にとっては休日が増えることで収入減になる可能性があること、また、普段子どもを保育施設に預けている親や病院に通わなければならない患者さんにとっては、自分たちの生活にマイナスの影響が出る可能性があることも忘れてはならない」
と述べている。