F1第3戦中国GPの決勝レース後、フェラーリのセバスチャン・ベッテルは、チームの発動したチームオーダーについて質問した記者たちに不満をぶちまけた。
F1にとって節目となった中国GPでは、スタートでベッテルの前に出たシャルル・ルクレールが、ベッテルを優先させるようチームから指示を受けた。これは前を行くメルセデスのルイス・ハミルトンとバルテリ・ボッタスとの差を埋めるべく、単独で彼らに挑む機会をベッテルに与える作戦だった。
しかし結果的にこのプランは失敗に終わった。ベッテルは3位のままフィニッシュし、ルクレールはレッドブル・ホンダのマックス・フェルスタッペンにアンダーカットされて5位に沈んだ。
レース後に行われたFIAの記者会見で、ふたりの走行順を入れ替えるというチームの決断について聞かれたベッテルは当初、激しくこの質問に反発し、誤解を招くような報道が何度も行われているように見えるとメディアを厳しく非難した。
「つまりこういうことだ。チームからの指示を聞いた瞬間、僕にはこの種の質問が来ることが予想できたんだ」とベッテルは語った。
「あまり答えたい質問だとは思えない。僕の発言のあちらこちらを抜き出して、結果として間違ったメッセージにしてしまうというメディア全体の仕事のやり方に、少し不満を持っているからだ」
「30分後にパドックで、誰かがまた僕に質問をしたとする。僕が率直な答えを話しても、きちんと書き留めたり記録したりしないだろうね」
「全員とは言わないが、そうやって仕事をしているように見える人もいる」
ベッテルはその後、質問に向き合うべく気持ちを取り直し、フェラーリの指示について弁護した。
「走っていて、僕の方が彼よりも速いと感じていた。ピットからもっと速く走れるかと聞かれたので、『大丈夫だと思う』と答えたんだ」
「自由に走り始めてみて、少し驚いた。驚いたというよりも、ラップをまとめ上げるのに少し苦労したんだ」
「リズムをつかんだら、それからは徐々に差を詰められるようになった。そもそもの目的がメルセデスに追い付こうとすることだったけれど、その時点ではもう彼らとの差が大きくなり過ぎていた」
FIAの記者会見を終え、今度はフェラーリの記者会見にルクレールとチーム代表のマッティア・ビノットとともに臨んだベッテルは、その日のレースを振り返りながら、あらためて取材陣に批判の矛先を向けた。
「先々週のレース(バーレーンGP)では、シャルルの方が速かった。差がとてもはっきりしていたし、今日よりもバーレーンでの方が多少は僕を追い抜きやすかっただろうね」
「だけどレース終了後に腹立たしかったのは、ふたりが3位と4位でフィニッシュできなかったことだ」
「もちろん僕はシャルルの前を走りたいし、彼は僕の前を走りたいだろう。それは当然のことだ」
「これ以上この話をしたいとは思わない。僕の発言が後でどう伝えられるのかがよく分からないからね。だからもうこれくらいにしておく」
気分を害した特段の事情があったのかと聞かれたベッテルは、「特にはない。僕が思うには、単にジャーナリズムの貧困さが理由だ。だけど僕はそれを判定できるジャーナリストではないから、僕の意見を当てこすりと受け取る必要はないよ」と皮肉めいた言い回しで答えた。