2019年シーズンインディカー・シリーズ第4戦アキュラ・グランプリ・オブ・ロングビーチではアレクサンダー・ロッシがポール・トゥ・ウインで今季初勝利を飾った。
昨年のロングビーチでもロッシはポールポジションから優勝しているが、今年の彼が見せたパフォーマンスは1年前のそれを遥かに上回る力強さで、85周のレースの80周、ピットストップを行った時以外はずっとレースをリードする完璧な勝利となった。
ロングビーチでは2012年から7年間で7人の異なるウイナーが誕生してきたが、今日、2年連続ウイナーが誕生。それも、予選からライバル勢を圧倒する、ドライバーが理想とする形での見事な勝ち方だ。
走行初日、金曜日のプラクティス1、プラクティス2でのロッシは、今ひとつマシンを好みに仕上げられずにいた。しかし、一晩明けた土曜日、予選を目前に控えたプラクティス3でマシンをレベルアップさせていくことに成功し、セッションの最後で最速ラップを記録。
その勢いを予選にも持ち込み、6人で競い合うファイナルでも、最後の最後で大逆転のPP獲得を実現して見せた。予選2番手はスコット・ディクソン(チップ・ガナッシ・レーシング)、予選3番手はウィル・パワー(チーム・ペンスキー)だった。
ハードコンパウンドのブラックタイヤでの走りが驚くべき安定感となっていたディクソンは、ロッシにとってレースで最もマークしなくてはならない強敵になると見られた。
しかし、決勝日の朝のウォームアップも活用し、ロッシはレース用セッティングでライバル勢を一歩引き離すマシンを手にした。
スタート直後に1回だけディクソンが真横に並びかけるシーンがあったが、その攻撃を封じ込めた後のロッシはリードを着々と広げ、まったく危なげのないペースを最後まで保ち続けて、2位に20秒以上の大差をつけてゴールした。
予選2番手だったディクソンとチップ・ガナッシ・レーシングは、ピットストップの悪さでロッシにプレッシャーを与え続けることができなくなった。
1回目のピットではチーム・ペンスキーのふたり、ウィル・パワーとジョセフ・ニューガーデンの先行を許した。そして、パワーがコースオフして4番手に挽回することはできたものの、2回目のピットで燃料補給システムに決定的トラブル発生。5番手までまた順位を下げた。
それでもディクソンはプッシュを休まずに続け、燃費で苦しむライアン・ハンター-レイ(アンドレッティ・オートスポート)をパスすることに成功。その勢いでグラハム・レイホール(レイホール・レターマン・ラニガン・レーシング)の背後へと迫ったが、彼を最後までパスできずに4位でのゴールとなった。
インディカーはレイホールの走りをブロッキングと判定。ディクソンはひとつポジションをアップさせ、3位で表彰台に上った。
前戦のアラバマを制した佐藤琢磨の2019年ロングビーチは予選順位と決勝順位が同じになった。スタートと同じ8位でゴールしたのだ。決勝前に大幅に進化させたマシンは、レースでは期待通りのパフォーマンスを発揮しなかった。
特にレッドタイヤにセッティングが合っておらず、レッドタイヤの方が優位と知りながらブラックで走らねばならないジレンマに陥った。
作戦も今回は的中しなかった。目の前を走り続けるシモン・パジェノー(チーム・ペンスキー)からポジションを奪おうと1回目のピットを1周早めたが、ピット作業に時間がかかってパジェノーを逆転することは叶わず、1台後ろにいたパワーに抜かれ、予選結果と同じ8位でゴールした。
「レッドタイヤの方が速いのはわかっていたけれど、自分たちのマシンはレッドでのパフォーマンスが良くなかった」と琢磨は悔しがっていた。
まだロッシの勝ち星はキャリア6回目に過ぎない。しかし、ポール獲得も優勝と同じ6回。しかし、ポールスタートから優勝したのは3回だけ。ポールからの勝率はパワーのポール55回/優勝35回よりもアベレージが低い。
マリオ・アンドレッティの史上最多PP=67回を上回る可能性すらあるパワーだが、ロッシはその27歳という年齢を考えると、ドライバーとしての成熟度ではパワーの若かりし頃を大きく上回っているように見えている。
彼は今後、どのようなリザルトを残すドライバーに成長して行くのだろうか。予選で最速となれたらレースでは2位以下をぶっちぎる……そんなドライバーに進化を遂げ、優勝を重ね、タイトルを感度も獲得するインディカーを代表するようなドライバーとなる可能性は十分にある。