先週末のインディカー・シリーズ第3戦アラバマでのポール・トゥ・ウインがセンセーショナルだったのか、佐藤琢磨はロングビーチに入ってから、メディアに引っ張りだこだった。
この第4戦となるロングビーチが琢磨は初優勝を飾った場所であることも、そうさせるのだろう。
日本のファンの期待も大きくは違わなかったはずだ。あわよくば、ロングビーチでも勝利し2連勝できるのではないかと期待する声も多かった。
実は2013年AJフォイトの時も連勝に迫ったことがある。ロングビーチで初優勝を挙げた次のブラジルで、最終ラップまでトップを走りながらヘアピンで抜かれ勝利を逃した。
このレースでは2位だったものの連続表彰台は、初めてだった。この年の快進撃は期待以上のものだった。しかし好結果であれば、我々にとってうれしいことは変わらない。
ロングビーチで優勝、もしくは表彰台でも獲得出来れば、今シーズンへの期待も例年以上のものになるのは間違いなかった。
しかし、そうは簡単に事は運ばない。ましては僅差の接戦が続くインディカーでは、ほんの小さなボタンのかけ違いで大きく順位を落とすこともある。
琢磨はロングビーチに入ってから、プラクティスで苦戦した。
「アラバマのセッティングがベースにあって、それをグラハム・レイホールとわけながら、いいセッティングを探していってるんですが……」
金曜日のFP1とFP2では14番手、17番手とトップ10にすら入る事はできなかった。1秒以内の僅差でもラップタイミングは残酷に順位を並べる。土曜日のFP3でも16番手。まるで先週の速さを失ったように見えた。
Q1はグループ1での予選アタックで、ブラックタイヤでのペースは良くトップタイム。その後レッドタイヤに変えたが、その間にトニー・カナーンのクラッシュでセッションが終了。幸いにもQ1突破はなったが、レッドでのアタックのフィーリングを掴めないままQ2に進むことになる。
Q2ではブラックタイヤで2周タイムを出した後、レッドに変えてタイムアタックに出た。1周目のタイムではトップ6に入れず、再度アタックを続けたが、2周目のアタックに入ったところで再度赤旗となり、Q3進出を阻まれてしまった。
「レッドタイヤでの感触がわからないまま、Q2になってしまいました。レッドでの最初のアタックは少し手探りの所がありましたし、1分6秒台は出たかもしれませんが、トップのロッシのタイムが出せたかはわかりません」と琢磨。結果的に予選は8番手に終わった。
朝のウォームアップ走行ではセッティングを大きく変更してのぞみ、5番手に浮上。チームメイトのグラハムも4番手だ。
「エンジニアのエディ(ジョーンズ)に言って、大きくセッティングを変えてもらいました。良いフィーリングにはなりました」と表情も明るくなった。しかし、レースに向けてはまた別の要素も絡んでくる。
最初はレッドタイヤで行くと決めていたというが、グリッドにはブラックタイヤで登場。「気分が変わった」と笑いながらも、何か腹案でもあったのだろうか。
レースがスタートし、ポジションをキープしてターン1に入った琢磨。レース直後はルーキーのパトリシオ・オワードが、その後には第2戦サーキット・オブ・ジ・アメリカズで優勝したコルトン・ハートが琢磨のテールに襲いかかってきたが、ベテランの琢磨は要所を抑えて、ルーキー達の出鼻を挫いた。
前を行くペンスキーのシモン・パジェノーを追いつつも決め手を欠いて最初のピットストップを迎えた。29周目にピットに入りコースに戻っても8番手のまま。前のパワーがミスコースするとポジションを上げたが、パジェノーを追いかける状態は変わらなかった。
今度は先にピットに入って挽回を狙ったが、パジェノーを抜くどころか、後方のパワーに逆転される。さすがペンスキーだ。
8番手に戻った琢磨は、パワーとのギャップを埋めるべく彼を追ったが、最後までこれを捉えることができず、85周目のチェッカーとなった。これでシリーズランキングは4位となってしまったが、2017年、2018年とリタイアしていたロングビーチで久しぶりにチェッカーを受けたことになる。
「今日はなかなかレースが動かなくて厳しいレースでした。パジェノーに対してアンダーカットを狙ってみたけどうまくいかなかったし、今日のクルマの状態では8位ということなんでしょう」
「この後はロードコースとスーパースピードウエイのテストがあって、その後5月を迎えますが、テストプログラムをしっかり消化して準備を整えたいと思います」
4戦を終えたインディカー。少し間をあけて、インディアナポリスでのインディカーGPとインディ500のマンス・オブ・メイを迎える。