2019年04月15日 11:01 弁護士ドットコム
「食べ放題」に行ったのに、まったく料理が出てこなかった。お金を返してほしいーー。こんな残念な思いをした人も少なくないようだ。
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都内のジンギスカン食べ放題に行った会社員のナナミさん(東京都在住・40代)もその1人。「ランチタイムはまだ終わっていないのに、サラダなどの副菜やデザートは残っていませんでした」と怒りをあらわにする。
ナナミさんは店に入るときに「料理はない場合もあります。なくなったとしても補充しません」と言われていたという。しかし、まさか本当にないとは思っていなかったようだ。
「食べ放題」で満足に食べられなかった場合、店側に「返金」を求めることはできるだろうか。消費者問題にくわしい岡田崇弁護士に聞いた。
「一般論として、(1)『客が注文した品物が出てこなかった』とか、(2)『客が注文した品物は出てきたが、著しく不十分な内容であった』という場合には、その責任は店側にあるといえます。
法律用語では、(1)のケースを『債務不履行』、(2)のケースを『不完全履行』と言います。こうしたケースにあたる場合、代金を支払う必要がありませんし、支払済みなら返還を求めることができます」
それでは、食べ放題はどうだろうか?
「少し極端な例ですが、『数時間もかかって、2皿しか提供を受けられなかった』とすれば、食べ放題としては著しく不十分な内容であったと評価できます。
こうした場合、店側の『不完全履行』ということになるでしょう」
その場合、法律上、客側は料金を返してもらえるのだろうか?
「法律としてはそうなりますが、不完全履行の場合、お客さんは必ずしも全額、返金を要求できるわけではありません。
食べ放題としては不十分だったとしても、食べた分だけは支払う必要があるのです。
まとめると、客は『食べ放題』の代金から、食べた分に値するお金を差し引いた部分について、返金請求できるのではないかと判断されます」
店側は、ナナミさんが店に入る際に料理がない可能性があることを説明している。客に事前の承諾を得ていれば、料理がなくても許されるのだろうか。
岡田弁護士は「承諾の内容としてどのようなところまで含まれているかが問題ではないでしょうか」と説明する。
「仮に承諾していたとしても、ジンギスカン食べ放題なのにジンギスカンが売り切れていたのであれば債務不履行になるでしょう。これに対して、ジンギスカン以外のものが全部売り切れていたということであれば不完全履行になりそうです。
サラダなどの副菜やデザートがなくなっていたということですが、ジンギスカン以外のメニューに占める割合が問題になるのではないでしょうか」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
岡田 崇(おかだ・たかし)弁護士
大阪弁護士会・消費者保護委員会委員、日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会委員、関西大学法科大学院元実務家教員(消費者取引法)
事務所名:岡田崇法律事務所
事務所URL:http://www.okadalaw.jp