終わってみればトップ4独占。いよいよ開幕したスーパーGT第1戦岡山のGT300クラスの公式予選は、ある意味で衝撃的な結果に終わった。もちろん車種の話ではない。2018年からGT300で速さと強さを発揮しているブリヂストンタイヤのことだ。
GT300というカテゴリーは、もちろんGT500と同様にタイヤコンペティションがある。そのため世界各国で用いられているGT3カーの中でも、最もグリップが高いタイヤを履いている特殊なカテゴリーだ。
また一方で、チームとタイヤメーカーが二人三脚でタイヤを開発することにより、車種の適性を活かした戦略が採れたりと、よりスーパーGTの魅力を増している要素のひとつと言える。
ただ2018年は8戦中5戦を制しているとおり、タイヤコンペティションのなかでブリヂストンが頭ひとつ抜けだしている感がある。当然ながら多数のチームを抱えるヨコハマ、そして長年タッグを組むチームと懸命にタイヤを開発しているダンロップとも、ブリヂストンに追いつくべく開発を続けている。
とは言え、今回の予選結果は衝撃的なものだ。当然ながら、ブリヂストンユーザーもタイヤを車種に合わせるためにオフの間、ハードワークとも言える開発を続けてきたし、ドライバーたちも素晴らしいアタックをみせたからこその予選順位なのは間違いない。ARTA NSX GT3の福住仁嶺のアタックも、K-tunes RC F GT3の阪口晴南、埼玉トヨペットGB マークX MCの脇阪薫一、LEON PYRAMID AMGの蒲生尚弥も、それぞれ賞賛されるべき走りをみせた。
それでも、他メーカーのタイヤを使うチームやドライバーからは「なんと言ったらいいか……」と苦しい声ばかりが聞こえてきたのが土曜の岡山国際サーキットの実情だ。
道具の差を言ってしまえば言い訳にしかならない。多くのドライバーはタイヤについてあまり触れたくはない。それでも同じ車種を使うチームから1秒や0.5秒といった決定的な差をつけられてしまうと、ある意味己の才能を信じて戦うしかないレーシングドライバーからすれば、やるせない気持ちになってしまうものだ。
あるエンジニア(他社タイヤ使用チーム)は「今までもっているノウハウから、車種に合わせて引き出しを開ければ、すぐに合っているタイヤを出せるのがブリヂストン。これができるのは、世界でも3社くらいしかないんです」という。それほどブリヂストンの技術力は、他社からすれば羨望の的ということだ。
ただ、もし仮にこのままブリヂストン装着車が勝ち続けた場合、「ブリヂストンを履けた者勝ち」なレースになってしまう恐れはないか。GT500にも多数のタイヤを供給しているブリヂストンを履けるチームのキャパシティは限られている。つまり、魅力あるGT300が、技術力より政治力がモノを言ってしまうレースになってしまうのではないかという可能性だ。
当然賞賛されるのはレースを制してこそ。他チーム、メーカーたちはスーパーGT第1戦岡山の決勝に向けて巻き返すべく、すでにさまざまな戦略を練っている。そして次戦以降に向けても開発は進むはずで、それは大いに期待したい。そうなってこそのGT300なのだが、今回の予選結果はある意味で顕著すぎる結果となった。
タイヤコンペティションはスーパーGTの魅力の大きなもののひとつであるのは、重ねて記しておく。ただ、今回の予選結果、そして決勝レースの結果次第では、今後のスーパーGT、そしてGT300の未来に向けた重要なターニングポイントになるレースになるのかもしれない。そんな思いを感じさせた予選となった。
ちなみに言っておけば、決勝日は雨の予報も出ているが、近年ウエットで図抜けて速いのもブリヂストンだ。