スーパーGT開幕戦岡山サーキット。レクサスLC500、ニッサンGT-Rのライバル2車に対して、ホンダNSX-GTは午前の練習走行では圧倒的に最終コーナーのボトムスピードが速く感じた。減速量が少ないにも関わらずアクセルオンのタイミングも早く、アンチラグの音もライバルより派手だ。
一方、ほぼ全開で抜けるその手前の“キンク”、そしてマイクナイトコーナーでは昨シーズン開幕戦でみられた路面のバンプによる跳ねが収まっており、リボルバーコーナーの外側などでも縁石に乗ったときにも昨年のような上下動が小さくなって、安定性と速さの両方を手に入れたように見えた。
NSX-GTは2018年開幕戦と比べると参加条件における車両最低重量は15kg重いが、それを跳ね除けて大幅な進化を遂げたことになるのかもしれない。
開幕戦の参加条件では「GTAが指定するバラストウエイトを指定位置に搭載しなければならない」と決められている。指定バラストウエイト重量やその位置について公表されていないものの、どうやらフロントオーバーハングに搭載されている様子。ホイールベース外、前軸の前に重りがあればヨーモーメントが増大するのは必至であり、重量差をいたずらに拡大するのではなく特性差を埋めるという観点から妥当な措置と思える。
ここで思い出すのが昨シーズンまでのNSX-GTの状況だ。ミッドシップではあるが共通モノコックを採用するためにエンジン搭載位置は妥協の産物で、どうしてもリヤヘビーである。アンダーステア傾向があり、それをセットアップの前後バランスで曲がるようにすると急激にナーバスな特性を示すこともあった。
フロントにエンジンがない分、ラジエターを抜けて車両上部に抜ける風の流れには自由度が高く、この部分でもダウンフォースを稼ぐことができる。フロントのタイヤの荷重不足を空力で補っていた。
そこに開幕戦の参加条件のウエイト搭載方法である。もしも指定ハンデウエイトがそのフロント荷重不足をちょうどうまく補っていたとしたら、参加条件は狙いと逆の効果を発揮したことになる。あるいは規定を逆手にとったホンダ開発陣を讃えるべきか。予選では上位独占……と想像したものの、結果はさにあらず。ニッサンがフロントロウを占拠した。
昨シーズンのNSX-GTは午前練習走行から午後の予選、特に予選Q2に急激にタイムアップを果たしていた。そのイメージからすると上げ幅が相対的に小さい。コースサイドで見ていているイメージではGT-Rは午前より明らかにパワーアップを感じるが、NSXにはそれを感じなかった。コーナーの動きは午前と変わらないものの、迫力に欠ける……。
ミッドシップのNSXには参加条件がつく。その数値も年間で固定されていない。昨シーズンも途中で見直されたように、今シーズンもその可能性は常にある。ここまで視野に入れたNSXの今回の予選パワーだとしたら……スーパーGTはやっぱり奥が深い……!?