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GLAYの歩みとともにTAKUROのギタリストとしての“地図なき旅”は続く 初のビルボード公演を見て

2019年04月12日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 GLAY TAKUROのソロライブ『GLAY TAKURO Solo Project 3rd Tour “Journey without a map 2019”』。2月27日にリリースされたアルバム『Journey without a map Ⅱ』を携え、3月14日Zepp Fukuokaから7公演を予定していた本ツアーは好評を博し、ビルボードライブ東京・大阪にて計4公演の追加公演を開催。4月6日、大阪にてファイナルを迎えた。筆者が参加したのは、4月3日ビルボードライブ東京の2ndステージ。会場に集まった観客はラグジュアリーな空間で食事や飲み物とともに楽器本来の音色に酔いしれる贅沢なひとときを過ごした。


(関連:GLAY TAKURO、ソロインストアルバム2作目でまだまだ成長「その喜びがエネルギーになった」


 TAKUROのソロプロジェクトでは、B’z松本孝弘をプロデューサーに迎え、ジャズやブルースを基調としたインストゥルメンタル楽曲を発表している。GLAYのメンバーとして自分がより成長するために、GLAYのために自分ができることは何かーーそう考えた末にたどり着いたのが、自らのギタープレイに磨きをかけるという選択だった。仲間とのジャズセッションを機に始まったTAKUROのソロプロジェクトは、今では2枚のオリジナルアルバムをリリースし、3回目のソロツアーを開催するまでに。そして今回初めて念願のビルボードのステージにも立った。ライブ中にTAKUROが感慨深く「続けてきてよかった」と言っていたのも印象的だ。


 今回のツアーでTAKUROのギターとともにセッションを繰り広げたのは、GLAYでも長年サポートを務めるTOSHI(Dr)のほか、 tatsuya(Pf)、石井ゆかこ(Ba)、米澤美玖(Sax)、江畑コーヘー(Gt)といったアクティブなプレイを見せる比較的若い世代のプレイヤーたち。さらに、『Journey without a map Ⅱ』の特徴の一つに、トランペットの存在がある。TAKUROはアルバムリリースのトークイベントでトランペットの魅力を“人間の持っている声の成分が含まれている”と表現し、むせび泣くような音色の特徴を捉えた楽曲を作りたかったと説明していた。そんな思い入れのあるトランペットにはツアー各地で異なるプレイヤーが迎えられた。東京公演ではシンガーソングライターとしても活躍するジャズアーティストのTOKUが登場。まさに歌うように奏でられる音色を生で体感すると、TAKUROの言葉の意味がより深く理解できた。


 ライブでは、バンドメンバーたちと時折目で合図を送り合ったり、体を寄せ合いながらセッションをリードするTAKUROの姿があった。GLAYではTERUの歌、GLAYの演奏を支えるいちプレイヤーとして位置付くTAKUROだが、自らが主体となりメロディを奏でることで得られる新たな楽しみや喜び、発見もあることだろう。


 一方で、TAKUROが作り出すGLAYの楽曲にもある、情景を映すような美しいメロディラインはインストゥルメンタルになっても健在だ。来る2020年のオリンピックにむけて変化する東京に胸を躍らせるような「Swingn’ Tokyo 2020」、TAKUROの故郷・北海道の風景を思い起こさせる「やすらぎのチセ」など、空間を曲ごとにあらゆる景色に変えてしまうのだ。プレイヤー各人の表現力の高さはもちろん、メロディに対して同じイメージを共有することができるからこそなせる技。ソロ作品やライブからは、改めてメロディメイカーとしてのTAKUROの凄みを感じ取ることができる。さらに、TAKUROをきっかけにジャズやブルース、それぞれの楽器の音色に興味を持つリスナーも少なくないだろう。そう考えると、GLAYや自らのために始めたこのプロジェクトが果たす役割は大きい。


 今年デビュー25周年を迎えるGLAYが“常に今が一番いい状態”を更新し続けている理由。それは、TAKUROはじめ、それぞれのメンバーがバンド以外の活動にも積極的に取り組み、現状に甘んじることなく前進し続けていること、そしてメンバー同士が刺激を受け合っていることにあるように思う。GLAYの歩みとともに、TAKUROのギタリストとしての“地図なき旅”はまだまだ続いていく。(久蔵千恵)