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グランツーリスモ選手権にみた“eレーサー”世界王者の疑いようのない実力【大串信の私的レポート】

2019年04月11日 15:11  AUTOSPORT web

AUTOSPORT web

2019 FIAグランツーリスモ・チャンピオンシップ第1ラウンド・パリの様子
「やっぱりこいつら速いや!」と改めてあきれた。3月17日~18日、フランスのパリ市内で2019グランツーリスモ チャンピオンシップの第1ラウンド“ワールドツアー・パリ”が開催されるというので観戦に出かけたときのことだ。

 2018年から、グランツーリスモSPORTユーザーが参加できるFIA公認の競技会が始まったのはご存じのとおり。11月には世界各地から成績優秀選手をモナコに集めて世界一決定戦“ワールドファイナル”が開かれ、ブラジル人のイゴール・フラガが優勝を遂げた。
 
 モナコで初めて見た確かに彼は速く、そして強かった。フラガは年末の2018年FIA表彰式でF1王者ルイス・ハミルトン、WRCチャンピオンのセバスチャン・オジエと並んで年間優秀選手として表彰を受けている。

 そして2019年のシーズンが開幕した。開幕の舞台はパリ郊外シャンゼリゼ通りにあるパヴィヨン・ガブリエル。ここに昨年のモナコ同様、大型のスクリーンや12台のコックピット、コメンタリーブース、コントロールルームなどが設営された。招かれたのはワールドファイナルでの成績上位者を中心に全世界13カ国から選抜された24名の選手だ。

 ただ、あれから4カ月が経ち、会場がパリへ変わった今回も彼らが同じ速さや強さを見せてくれるのか、正直なところぼくは半信半疑だった。
 
 確かに昨年の世界一以来、フラガの名は世界的に知れ渡り、世界のグランツーリスモプレイヤーにとって憧れの存在となった。だがグランツーリスモは、言ってみれば究極のイコールコンディションで行われるレースだ。そこでつねに自分の能力を発揮するのはとても難しいはずだ。いわゆる”eレース”がまだ理解し切れていないぼくは興味津々だった。

 今回のワールドツァー・パリも2日間にわたり、公式練習、予選、決勝と“リアルレース”とまったく同じフォーマットでレースが行われた。レースは個人戦のネイションズカップと登録メーカー単位の団体戦として行われるマニュファクチャラーシリーズの2本立てになっているが、ぼくの注目は昨年の世界王者フラガが、ネイションズカップでモナコ同様の走りを見せられるのかどうかにあった。

 結論から言えば、そんなぼくの余計な心配をよそにフラガがパリでもひどく速かった。実はフラガは圧倒的な速さで予選レースをリードしながらタイヤ交換のミスで余計なピットインを強いられ予選レースで敗退した。しかしダートコースを舞台に12台で行われた敗者復活戦で1位となって決勝へ進出、その速さがホンモノであることを見せつけた。

 決勝では9番手スタートで惜しくも7位に終わったが、フラガの速さはぼくだけではなくシリーズに注目する者みなに改めて印象づけられたに違いない。

■思わずバーチャルとリアルの境が曖昧に

 このレースで優勝したのは3番手からスタートしたチリ代表のニコラス・ルビラーで、昨年のワールドファイナルでは決勝最下位だったところから勝ち上がった伏兵である。よほどうれしかったのだろう、仲間と表彰台に上がり国歌を熱唱する姿には心打たれた。

 ワールドファイナルでフラガと争い2位に終わったドイツのミカエル・ヒザルは、今回も2位に終わり絵に描いたような悔しい顔を浮かべていたのが印象的だった。

 個人的に期待していた日本のトップドライバー山中智瑛は、どこか噛み合わなかったようで決勝進出ならず、これもまた心がここにない表情のままレースを終えてしまったのは残念だった。

 実は決勝レースは未来的なマシン『X2014 Competition』でオートポリスを16周する形式で行われた。X2014 Competitionが見慣れたオートポリスのコースを走り始めたときには、「ウワ~、すごいマシンが日本に来たんだなあ」とリアルとバーチャルが僕の頭の中で混ざり合い、興奮と困惑で目眩がしたと白状しておこう。大変な時代が来たものだ。

 次回は6月22~23日、リアルレースのニュルブルクリンク24時間レースが開催されているニュルブルクリンク特設会場へ舞台を移しての開催となる。レースの様子はグランツーリスモ LIVE(https://www.gran-turismo.com/jp/live/)でリアルタイム配信の予定なので、24時間レースと並行しての観戦をオススメしておく。
 
 僕としてはやはりフラガと山中を軸にして眺めたいと思う。ここに安定した速さを示すヒザル、開幕戦の優勝者ルビラーがどう絡むのか。香港勢も無視できないぞ、とこれもまた僕の頭のなかではリアルレースとeレースが渾然とした状態になって少々困惑気味なのである。