モータースポーツライターのクリス・メッドランドが、今年ルノーに移籍したダニエル・リカルドの近況をF1速報WEBで不定期連載。第1回目はオートスポーツWEBでも全文をご紹介します。
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ルノーのダニエル・リカルドの2019年シーズンが今のところ順調ではないことは、誰の目にも明らかだ。
レッドブルを離れるという大きな決断を下したリカルドは、ルノーでの新しいチャレンジに胸を躍らせているようだった。2019年シーズンの体制発表会では笑顔を絶やさず、ジョークを振りまく、いつもどおりの彼の姿が見られた。
だが、本当の彼の気持ちはどうだったのだろう。プレシーズンテスト中、トラックサイドで出くわした時、リカルドは、レッドブルのマシンをじっくり観察し、ホンダと他のパワーユニットとのサウンドを比較していた。
ルノーはテスト中はまずまずの状態に見えたものの、その時点ではまだ実際の立ち位置は判断できなかった。シーズンが開幕し、オーストラリアGPでは中団トップに近いところにいることを証明したが、主なライバルであるハースと比較しても、1年前よりも上位に近づいているようには思えなかった。
リカルドは今年もホームグランプリのオーストラリアで、多数の取材やイベントに忙殺された。毎年、母国ならではの仕事を大量にこなさなければならず、疲れ切ってしまう彼は、決まって「来年はイベントを減らすよ」と言う。ところが、1年たつとそれを忘れてしまうようで、また同じことが繰り返されるのだ。
オーストラリアGP決勝は、リタイアという不本意な結果に終わり、リカルドは「本当にがっかり」と落胆していた。自宅でゆっくり過ごすことで心身ともにリフレッシュできるだろうと私は思っていたが、実際はそうではなかったようだ。バーレーンの空港で会った時、リカルドは、パースの自宅にいる間中、親戚関係の予定を次々をこなさなければならず、リラックスできなかったと言っていた。
リカルドにとって本当の意味での開幕戦は、バーレーンだと私は思っていた。オーストラリアほど多くのイベントに駆り出されることはなく、ドライビングに集中できるし、コースのランオフも比較的大きく、マシンの限界を試すことができる。
プラクティスで彼は苦しんだものの、予選では堅実な結果を出した。しかし決勝でルノーが選んだ戦略は失敗だった。その上、トラブルでチェッカーまで数周というところでリタイアする羽目になり、再び不本意な週末となってしまったのだ。
グランプリ後のテストで十分な走行ができなかったことも、さらなる痛手となった。リカルドは、うまくいかない部分を解決するため、バーレーンテストの1日を有効に活用するつもりだった。昨年まで彼にとって強みだったブレーキング時の動きが、今年はうまくいかなくなっている。それを改善するためのチャンスだと考えていたのだ。しかしテスト初日、バーレーンは予想外の雨に見舞われ、彼は走行時間を4時間もロスすることになった。
周回を重ねることで、いくつかポジティブな変化が見られたと、リカルドはコメントしている。しかし今のところ、彼はまだルノーで快適に走れる状態にはなっていない。物事がいい方向に動き出したとはいえないまま、リカルドは第3戦中国GPを迎える。