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オーストラリア・スーパーカー:“マスタング封じ”の規則変更跳ねのけ、DJR陣営がワン・ツー

2019年04月11日 11:01  AUTOSPORT web

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開幕戦デビューウインから8戦6勝と勢いを見せる2018年チャンピオンのマクローリン&新型マスタングのコンビ
オーストラリアを代表するツーリングカー選手権、VASCヴァージン・オーストラリア・スーパーカーの第3戦が南部タスマニア島のシモンズ・プレイン・レースウェイで開催され、直前に実施されたCoG(センター・オブ・グラビティ)規約の変更にも関わらず、今季デビューのフォード・マスタング勢がスピードを維持し、DJRチーム・ペンスキーの王者スコット・マクローリン、ファビアン・クルサードがレース1でワン・ツー・フィニッシュを飾った。

 F1開幕戦との併催だったアルバートパークでの第2戦を経て、開幕戦デビューウインから6戦5勝と2018年チャンピオンのマクローリン&新型マスタングのコンビが早くもシリーズを席巻する勢いを見せるなか、パドックでは「センター・オブ・グラビティ(車両重心位置)」に関する議論が勃発。

 VASCシリーズの技術部門が複数台のマシンを任意でテストした結果、今季からプライベーターとして参戦するニッサン・アルティマL33に対し、ホールデン・コモドアZB、そしてフォード・マスタングの2車種が重心位置でアドバンテージを得ていたと発表した。

 これは明らかに“マスタング封じ”の策とみられ、フォードのファクトリー支援を受けマシン開発を担当したDJRチーム・ペンスキーやティックフォード・レーシングは強く反発したものの、この第3戦を前にホールデンの開発チームであるトリプルエイト・レースエンジニアリング(レッドブル・レーシング・オーストラリア/RBRA)、ケリー・レーシング、そしてDJRの3チームがVASC技術部門主導のもとテストを行ない、バラスト搭載位置を修正することとなった。

 シリーズのCEOを務めるショーン・シーマーは「もちろん、3車種ともにレギュレーションには完全合致しており技術的違反はなんら発生していないが、Gen2規定を活用してデビューしてきたコモドアZBのときと同様に、マスタングは非常に高度なコンストラクションと技術的整合性を持っている。3台の公認車両に関して公平な競争精神のもとで、車種間の技術的な違いを最小限に抑えることを目指した措置だ」と説明した。

 その成果が反映されたか、第3戦の舞台となった4月6~7日のシモンズ・プレインではプラクティスから様相が一変し、RBRAのホールデンがトップタイムを記録。“セブン・タイムス・チャンピオン”のジェイミー・ウインカップがチームメイトの2016年王者SVGことシェーン-ヴァン・ギズバーゲンに0.0187差の首位に立つ。

 さらに予選3セッションからスーパーポールを経てグリッド最前列に躍り出たのは、フォードで13年間を過ごし今季からホールデン陣営へと移籍していたマーク・ウインターボトム(ホールデン・コモドアZB/Team 18 IRWIN Racing)となり、2015年王者にとっても約4年ぶりのポール獲得となった。

「本当に素晴らしい結果で、ちょっとばかり感情がこみ上げてきて気持ちを抑えるのが難しかったよ」と語ったウインターボトム。

「チームの全員を本当に誇りに思うし、いつも懸命に仕事をする彼らと戦うために僕はここへ来た。だからこそ、こういう成果を成し遂げたときにどんな感情が芽生えるかを共有したかったし、彼らはこれまで一度もポールを経験したことがなかったんだ。今日は特別な日になったし、その実現に一役買えたことを光栄に思うよ」

 しかしホールデン陣営の歓喜も残念ながら長くは続かず、プラクティスとは異なり予選フロントロウ2番手には虎視眈々のマクローリンがつけ、セカンドロウにはSVGに並びクルサードのDJRマスタングがエースを支援すべく控え、ホールデンvsフォードの一騎打ちを予感させるグリッドとなるなか、スタート直後の1~2コーナー攻防でDJRマスタングがTeam18のホールデンをパスしたところで勝負が決まった。

「実はこの週末はインフルエンザで苦しんでいて、100%のパフォーマンスを発揮することが難しかったんだ」と、優勝インタビューで驚きの事実を明かした王者マクローリン。

「CoGの影響も最小限に食い止めることができてよかった。これもすべて、DJRチーム・ペンスキーというチームの実力とフォード・マスタングの完成度を示しているよね」

 そして2位にも、一度はポジションを落としながらも3周目の攻防でエレバス・モータースポーツのデビッド・レイノルズ(ホールデン・コモドアZB)をターン5のアウト側から仕留めたクルサードが、その後もライバルにピット戦略を合わせてポジションを守り、DJRのワン・ツー体制を維持。最後の表彰台をホールデン・ファクトリードライバーのSVGが死守し、ウインターボトムは4位に終わった。

 明けた日曜のレース2に向けては、そのSVGが午前の予選でホールデンにとって今季2度目となるキャリア通算27回目のポールを奪取すると、フロントロウのクルサードを抑えきって84周200kmのレースを制し、レッドブル・ホールデンに今季初優勝をもたらした。

 しかしこのレースでも3位表彰台のレイノルズに続きマクローリンはしぶとく4位に入り、ランキングで2位に浮上したクルサードに対しても124ポイントの大量リードを築いている。

 続くVASC2019年シーズン第4戦はバック・トゥ・バックの連戦となり、シリーズは再び海を渡ってビクトリア州へ大移動。4月13~14日にフィリップ・アイランドでのスーパースプリント戦が待ち受ける。