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『ストロベリーナイト』なぜ再び? プロデューサーが憧れた「姫川玲子シリーズ」の新しい世界観

2019年04月11日 10:21  リアルサウンド

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 2010年のスペシャルドラマ放送から、2012年には連続ドラマ化、2013年には劇場版も公開された竹内結子主演『ストロベリーナイト』が、この春『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)として新たに生まれ変わる。キャスト、スタッフを一新し、再び「姫川玲子シリーズ」を映像化する理由をプロデューサーの渡辺恒也氏に聞いた。


【インタビュー】二階堂ふみが挑む、新たな姫川玲子像


■「姫川と菊田の2人の関係の変化」


ーー今回はフジテレビ木曜劇場枠での放送になりますが、そもそもどのように企画が進んでいったのでしょう?


渡辺恒也(以下、渡辺):前回、僕が担当したのが月9ドラマ『海月姫』で楽しいコメディドラマだったので、最近やっていなかったという個人的な思いですが、刑事ドラマをやりたいと考えていました。それと元号が変わるタイミングでもあるし、刑事モノに限らず、今の時代の映し鏡になるような、時代性を切り取った社会派の要素のあるものをやりたいと思っていて。刑事モノだと、毎回起きる事件の犯人を探すミステリーの部分と、主人公たちが窮地に立たされながらどう脱していくのかというサスペンスの要素が作れます。昔から刑事モノの色んな作品がありますが、それだけの面白さ、力強さがあると思っているので、次はそういうドラマを作りたいなと考えていました。


ーーその中でもすでに人気作となっている「姫川玲子シリーズ」を再び実写化しようと思った経緯は?


渡辺:刑事モノのなかでも、女性主人公をやりたいなと原作も含めて探していた中で、参考にしようと『ストロベリーナイト』シリーズを観たんです。映画の後に原作の「姫川玲子シリーズ」の長編の新作が3作ほど出版されていて読んだのですが、そこで描かれていた姫川と菊田の2人の関係の変化をすごく新鮮に感じました。今回、『サーガ』と名付けていることに繋がりますが、「姫川玲子シリーズ」の新しい3作の世界観まで含めて作りたく、一から姫川と菊田の関係性を描くには、「ストロベリーナイト」という最初の事件から描かなければと思いました。途中からこのストーリーの部分だけ別のキャストでやりましょうとなるのは変な話だし、前作で描いていた話も含めて最初からもう一度再構築していくシリーズをやりたいと企画しました。


ーー現代版としてどのような要素が加わっていくのでしょうか。


渡辺:原作の一番新しい「ノーマンズランド」が2017年に出版されていますが、実際に2009年に書かれた最初の「ストロベリーナイト」以降、その時その時の時代性を切り取ったテーマが原作の中にも描かれているんです。実際に起きた薬害エイズの事件がテーマになっている話もありますが、インターネットやSNSで知り合った人間が犯罪に巻き込まれるようなことは10年前と今ではちょっと違う形になるだろうと思います。原作にない部分で+αどこまでやっていくかによりますが、今の2019年だからこそ起こりうる犯罪は一つのテーマとして入れていきたいです。


ーー最近のTVドラマは、実際の社会問題を題材にしたり現代のリアルな実状とリンクした仕掛けが多いなと感じます。


渡辺:飽きさせないためですかね。今、ドラマって、地上波以外にもたくさんある中から選ばれるし、過去の名作も手軽に観れるようになってきてますよね。そうした中で、今観てもらう理由を作り出さないといけないのが制作者の使命だと思っています。


■「すごくいい姫川になる」


ーーかつて竹内結子さんが演じた姫川玲子を、今回は二階堂ふみさんが抜擢されましたね。


渡辺:もちろん僕の中には、原作と竹内さんが演じられた姫川玲子のイメージがありました。でも、その2つが完全にイコールではない部分もあるなと思って、この2つのイメージに縛られないように考えていこうと。姫川は優秀な刑事でありながらも、危うい部分と、若い女性のリーダーとしての前向きさ、ポジティブさがあって、両面を持ち合わせてるキャラクターだと思うんです。二面性って誰にもあるけど、すごく人間的だなと思っていて、シーンによって全く違う顔を見せてくれるような方に演じてもらいたいと思ったんです。二階堂さんは色んな映画、ドラマを拝見していますが、江口(洋介)さんと共演された『脳男』だったり、昨年の『この世界の片隅に』(TBS系)の遊女役を観て、幅広い表情ができる方なんだなと感じていました。人間の両面性を説得力を持って演じきれる方だと思ったし、想像のつかない姫川になるんじゃないかなという期待も込めてお願いしました。


ーー渡辺さんが現場で感じている二階堂さんの姫川としての魅力はどうでしょうか。


渡辺:セリフのあるなしに関わらず、表情の説得力がすごくあります。画面越しに見ていて引き込まれるんです。姫川の持っている信念の強さが、本当によく表に現れてきてるなと感じています。すごくいい姫川になると思います。


ーーそして菊田役を演じるのが亀梨和也さんです。


渡辺:菊田の役も当然、前作の西島秀俊さんのイメージがある中で、姫川をただ後ろに一歩下がって支えるだけじゃなくて、菊田という人間から見た姫川を映すことによって、菊田の人柄も分かっていくような、視聴者に近い目線にいるキャラクターにしたいと考えました。ヒーローだけど、やっぱり一歩下がって、客観的な目で冷静にチームを見ている菊田像が、亀梨くんのイメージに重なるところがあったんです。役としてのキャラクターの中身はもちろん、ドラマ全体の中での菊田の役割についても客観視して考えたアイデアをいただくこともあって、一緒に連ドラを作っているなかでもすごく頼りになる方です。


ーー前作では武田鉄矢さん演じたガンテツは、本作では江口洋介さんですね。


渡辺:ガンテツはアウトローで、違法ではないけれどルールのギリギリのところを攻めていく、一筋縄にいかない刑事のイメージでした。もう一方で、圧倒的な、背負ってるものの深さと強さを今回は作っていきたいなと考えていました。そこにいるだけでこの人は何かやってくれるぞという江口さんの圧倒的な存在感が、ガンテツとしての良いスパイスになってくるといいなと思っています。


■「真摯に受け止めたい」


ーー今回のドラマでは、「姫川玲子シリーズ」の中の、「ストロベリーナイト」「ソウルケイジ」「インビジブルレイン」「ブルーマーダー」など全作が描かれていくのでしょうか?


渡辺:長編であるその4作の加え、短編の話もいくつか入っていきます。


ーー同じ物語をもう一回展開するというところで、どのように差別化を?


渡辺:連続ドラマなので、台本を作りながら自然と原作と違う部分も生まれていきます。例えば今回、第1話で菊田が姫川班に合流するパートを描いていますが、原作や前作とちょっと違うんです。その辺りから描くことによって、自然とストーリーの中で、菊田がどうやって姫川班との距離を詰めていくのかというために必要なシーンが出て、自然にこれまでとの違いが出てきます。姫川と菊田の関係性はもちろん、今回は姫川がどういう人なのか、彼女がどうして優秀な刑事と言われているのかを、視聴者と同じ目線である菊田の存在を通して映していきたいと考えています。


ーー原作者・誉田哲也さんからは「前作を越えなければいけないんですよ」と返事があったそうですね。


渡辺:舞台だと、みんながもう一度観たいから同じキャストで再演をやることがありますが、今回はそれとはちょっと違います。全く違うキャスト、全く違うスタッフで新たに作っていくので、僕らの意識としては前作の『ストロベリーナイト』と同じものではないんです。もちろんリスペクトして作っていきますが、あえてそれと違うことをやろうともしていません。あくまで、このメンバーで考えていく上で一番面白くできるドラマ作りをしていくだけだと思っています。それが結果として、前作をご覧になっていたファンの方々にも観ていただいて、「こういう『ストロベリーナイト』もありだよね」と思っていただけるかどうか。まず、僕らはそこを目指しています。前作をご覧になってない方は初めてこの『ストロベリーナイト・サーガ』の世界に触れてもらって、原作や前作を観てみようとなれば嬉しいですし。色んな楽しみ方をしていただければと思っております。


ーー第1話、第2話と今後放送が始まっていきますが、反響をどのように受け取っていきますか。


渡辺:難しいですね、真摯に受け止めたいです(笑)。第1話の原作になっている「ストロベリーナイト」はよく組み込まれているお話で、僕もいち読者としてもいち視聴者としてもすごく面白く感じています。「みんな、きっとこういうふうに驚くんじゃないかな」と期待している部分もあるので、その通りになれば、しめしめ、ですね。


(大和田茉椰)