2019年04月11日 10:01 弁護士ドットコム
「先日、妻が無断でマンションを購入していたことを知りました」
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弁護士ドットコムに寄せられた相談です。相談者(夫)は、妻の行為が離婚事由にあたり、慰謝料の請求ができるのかどうか心配しています。
結婚20年目で同居しているにもかかわらず、妻は夫にバレていないと思いながら、少しずつ家財を買い足しているとのこと。妻が将来自分で住むためのものとみられるようです。
資金は、妻名義の預金から出されたものの「夫婦共有財産」で、マンションの購入にはその夫婦共有財産の3分の2に相当する額が使われたといいます。
詳細は定かではありませんが、結婚後に妻名義でゼロから給与(相続除く)を蓄え続けたとして、妻がその口座のお金を無断で使う行為は離婚事由にあたるのでしょうか。また、この無断購入されたマンションは「財産分与」の対象になるでしょうか。渡部孝至弁護士に話を聞きました。
ーーまず、妻が無断でした行為の問題点を教えてください
「妻の行った行為は、いわゆる使い込みと言われるものです。夫婦が共同で貯蓄した共有財産である多額の預貯金を、夫に隠した上で妻が一方的に使うわけですので、まず倫理的に問題のある行為であることは間違いありません。
仮に妻が自分名義の口座で管理していたとしても、これが夫婦の現在または将来の生活のために使用する金銭であることは、夫婦の間で暗黙の了解がなされているでしょう。特に夫婦の協力とは無関係に得られた財産でない限りは、共有財産とされます(民法762条2項)」
ーー妻の行為は「その他婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるでしょうか
「このような使い込み行為が離婚事由として認められるかどうかですが、離婚事由に当たる可能性は十分にあります。
妻の浪費や借財、使い込みなど、夫婦の経済に悪影響を及ぼす行為が常に離婚事由に当たるわけではありませんが、その行為の悪質性や金額次第では、夫婦関係を破綻させるものとして、離婚事由に該当する場合はあるものと考えられます。
今回のケースだと、家の購入という高額の支出であり、共有財産の3分の2が使われたことや、購入を夫に隠していたこと、また家は将来自分だけが住む目的で購入していたこと等からすると、妻の使い込みは夫婦関係を破綻させる行為であると言えるでしょう」
ーー慰謝料の請求は認められそうでしょうか
「先程述べたように、確かに使い込み行為は倫理的に問題のある行為ですし、離婚事由にもあたり得る行為ですが、一般的には妻の使い込み行為が民法上の不法行為を構成するとして損害賠償請求(今回のケースだと慰謝料)が認められるケースは少ないものと思われます。
よほど目的や行為が悪質であって夫の権利が侵害されていることが明らかな場合は別ですが、むしろ、離婚時の財産分与の金額を定める際の事情として考慮されることが多いようです」
ーー「財産分与」においてこのマンションはどう扱われるでしょうか
「財産分与については民法768条3項において、『家庭裁判所は、当事者双方がその協力によって得た財産の額その他一切の事情を考慮して、分与をさせるべきかどうか並びに分与の額及び方法を定める』と定めています。
妻の使い込み行為は、『その他一切の事情』として財産分与の金額を定める際の事情として考慮されます。
なお、本件のマンションは、共有財産である預貯金がマンションという資産に形を変えたものとして、共有財産に含まれることを前提に、財産分与の金額が定められるでしょう」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
渡部 孝至(わたなべ・たかし)弁護士
弁護士法人はるかぜ総合法律事務所代表弁護士。京都大学法科大学院卒業し司法試験合格後、東京都内で法律事務所を開設。離婚や相続、消費者被害などの一般民事から企業法務まで幅広く取り扱う。「離婚・離縁事件実務マニュアル」など著書多数。
事務所名:弁護士法人はるかぜ総合法律事務所
事務所URL:http://www.harukaze-law.com/