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夕闇に誘いし漆黒の天使達、1stAL記念インタビュー「“カッコいい”に“おもろい”を乗せたら“バカ“になる」

2019年04月10日 18:12  リアルサウンド

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 人気YouTuberにしてコミック系ラウドバンドでもある「夕闇に誘いし漆黒の天使達(エンジェル)」が4月3日、1stフルアルバム『はじめての夕闇に誘いし漆黒の天使達』をリリース。13日には全国ツアー「はじめて」の開幕も迫っており、音楽面に注目が集まっている。ほぼ毎日、YouTubeに笑える動画をアップしながら、音楽にもガチで取り組むという、類を見ない活動形態で多くのファンを獲得している彼ら。リアルサウンド テックでは、そんな彼らの活動歴からそのスタンス、1stフルアルバムに込めた思いや今後の展望まで、じっくりと聞いた。(編集部)


(参考:東海オンエアらも注目 “YouTuber×バンド”で新たな立ち位置築く、夕闇に誘いし漆黒の天使達


■夕闇に誘いし漆黒の天使達、結成秘話を語る


ーー当サイト初登場ということで、まずはバンドの結成と、YouTubeでの活動を始めた経緯から聞かせてください。


小柳:千葉以外、高校が一緒で、学校内で組んでいたバンドが元になっていて、バンド名も当時のままなんですよね。最初は校内だけの活動だったんですけど、ライブハウスにも出ようということになって、初めて外でライブしたのが、「ホーム」と言っている『Thunder Snake ATSUGI(以下、Thunder Snake)』で。オリジナル曲もあったかどうか、というくらいのレベルで、そこから本格的にスタートした感じですね。そこから徐々にオリジナル曲を作っていって、コピーと半々になって、全部オリジナル曲になって、半年くらいしてから動画投稿を始めた感じです。それも、メンバーから言い出したんじゃなくて、第三者から言われて(笑)。『Thunder Snake』のブッキング担当者ーーいまは店長なんですけど、その人が「バンド、ちゃんとやろうぜ」と言ってくれて、そのなかで「動画も流行っているから、やってみたら?」という話になったんですよ。


ーーなるほど。面白いメンバーだから、何か別の表現もできるんじゃないか、という提案ですね。


ともやん:俺らが18歳の秋くらいかな。


小柳:YouTuberという言葉が出てきて、ちょっとたったくらい。そこで金を稼ぐつもりなんてなくて、本当にツイッターを始めるくらいのノリでしたね。


ーーバンドのPR、という側面が大きかったでしょうか?


小柳:そうですね。カッコいいバンドがYouTuberっぽいドキュメント映像を上げるのはシャバいと思っていたんですけど、僕らはコミックバンドで、ライブでもふざけているから、動画でふざけても一緒かなと。最初はYouTuberの真似事で、週一の投稿を始めた、という感じです。


ーーそんななかで、公募により千葉さんが加入しました。


小柳:泣く泣くそうなりました。ツイッターで募集をかけたら、応募総数が2件で。メンバーの見た目のバランスから、プラスアルファになる容姿の人がいいよね、という話をしていて、一人目が変なメガネの人だったんです(笑)。


ーーそれはそれで面白そうです(笑)。


小柳:そうそう、それはそれでよかったんですけど、ちょっと待とうと。そんななかで千葉が応募してきて。ビジュアルもいまより尖っていたし、神奈川のバンドなのに「千葉県から通えます」というのもパンチが効いていていいなと(笑)。


にっち:千葉から町田のスタジオまで、毎回通うって(笑)。


小柳:そのときに、おかしいやつだって気づけばよかったんですけどね(笑)。最初はとりあえず既存曲を送って、スタジオで合わせてみようと。バンドのインタビューだと、よく「スタジオに入って一緒に演奏してみたら、グルーヴがバチッと決まって、こいつしかいないなと思った」みたいに言いますけど、全然フィーリングが合ってなかったんですよ。


一同:(笑)。


小柳:もう、弾いてもらわないほうがいいくらい(笑)。でも、パンチがあったのと、やっぱり女子ウケしそうな容姿だったから、そのまま来てくれと。ボーカルがこれで裸一貫でやってるので、サイドがファンを引っ張って来なきゃいけないですから。もともとは俺らにはない、ザ・バンドマンみたいな見た目だったんですよ。


ともやん:髪型もいまより短くて、チャラい風だったんです。で、こいつかなと(笑)。


にっち:特に反対もなく、ヌルっと入りましたね。スタジオのあと、近くのデニーズに行って、「……入る?」「……入る」みたいな感じで(笑)。


ともやん:もういいよ、千葉の話は(笑)。


小柳:ここ、2行でまとめといてください(笑)。


ーーそう言わず、千葉さんにも聞かせてください(笑)。千葉さんはなぜ、他県から通ってまでこのバンドに入りたいと思ったんですか?


千葉:これ、あんまり話してないんですけど、たまたま夕闇のツイッターが流れてきたんですよ。ついていた動画がライブハウスで盆踊りしている映像で、それが衝撃的すぎて。その魅力に惹かれてしまったからです。


ともやん:ちゃんとバカだったな(笑)。


ーーそうしていまの体制が整ったと。高校時代の楽曲を聴いて恥ずかしがる動画もありましたが、そもそも皆さんは、どんな音楽に触れてきたのでしょうか?


小柳:僕はX JAPANを聴いて「ヤバいな」と思って、そこから中学くらいまではずっとビジュアル系を聴いていました。あとはアイドルも好きで、深く掘っているのはその2つですね。流行りの音楽もいろいろ聴いて、結果的にそれが相まって、いまの音楽につながっているのかなと。


ーー確かに、ヘビーな音とキャッチーなメロディに、ビジュアル系もアイドル曲も生きていますね。みなさんはどうですか?


ともやん:メンバーみんな趣味が違うんですよね。僕はベタなポップスから入って、中2のときにロックバンドというものに出会って、しばらく広く浅くいろいろ聞いて。こういうヘビーな音楽に出会ったのは高校生で、ヒップホップを聴いたり、アイドルを聴いたり、ジャニーズを聴いたり、けっこうバラバラで。そのぶん、いろんなところから刺激を受けてきたという実感はありますね。


にっち:僕はアニメが好きで、アニソンからバンドに興味を持ちました。『BLEACH』の主題歌(「~アスタリスク~」)をやっていたORANGE RANGEさんとか。そこからポップスはほとんど聴かずに、バンドばっかでしたね。中学生の時にONE OK ROCKやSPYAIRに出会って、だんだんとヘビーな音楽にハマっていって、いまに至ると。


ーー千葉さんはJ-POPの有名曲をほとんど知らないことでもお馴染みですが、どんな音楽に触れてきたのでしょう?


小柳:こいつは子守唄がスクリレックスで……。


一同:(笑)。


千葉:バンドを聴き始めたのは、中学の友達にGLAYを勧められたのがきっかけだったんですけど、その友達がすべて握っている感じで。X JAPANとか、L’Arc~en~Cielとかも聴かせてもらったし、ギターを始めたのも彼の影響ですね。


小柳:恩人じゃん。そいつ入れよう?(笑)


■「作詞」じゃなくて「台なし」という工程


ーーさて、「カッコいい」と「おもろい」は多くの人間が憧れるもので、しかし表現する/作品にするという意味では、どちらかを軸に定めるケースが多いと思います。けれど、みなさんはほぼ毎日「おもろい」動画をアップしながら、音を聴けば「カッコいい」。相当レアな活動形態だと思うのですが、そのバランスをどう考えているのでしょうか。


小柳:どっちもやりたいというよりは、「カッコいい」に「おもろい」を乗せたら「バカ」だよね、というか。


ともやん:無意識ですね。あと、トラックはふざけられないので。


小柳:そうそう。だいたい千葉かともやんが持ってくるトラックに、にっちがドラムをつけて、そこから歌詞とメロを作ってるのは僕なので、結果的に台なしにしてしまうという。夕闇には「台なし」という工程があるので。


ともやん:「作詞」じゃなくて「台なし」(笑)。


ーーなるほど(笑)。そうして、パッと聴いた感じ美メロでめちゃくちゃいい曲だけれど、よく聴いてみるとパチスロ『バジリスク』の話でしかない、「絆-kizuna-」のような曲が出来上がるわけですね。


小柳:そうですね。歌詞には僕の生活の一部が切り取られるので、今回のアルバムもギャンブルの曲が2曲入っていたり。


ーーメンバーのみなさんも「台なし」の工程=小柳さんの歌詞を楽しみにしていると思うのですが、トラックを作る段階で、ある程度「こんな曲に」というイメージはあるのでしょうか?


ともやん:僕は何も考えていないですね。メロはある程度、配慮しますけど、歌詞は何も考えず。


千葉:僕も何も考えていなくて、めちゃくちゃ楽しみにしてます。「これは悪そうな曲になるぞ!」と思っていて、いざレコーディングに入ってみたら、寿司の曲(「SUSHI SONG」)になっていたり(笑)。


ーー実際のところ、歌詞はどこから発想するのでしょう?


小柳:僕はみんなで歌うシンガロング的なパートを重視していて、「ライブで盛り上がる」ことをメインに考えがちですね。だから、最初にパンチラインみたいなものを考えて、そこから広げていくことが多くて。例えば、ピザの曲(「君に届かない声はイタリアにも届かない、故にミラノ風」 )があるんですけど、これは<オーイエイ ピザ好き イエイ No.1 マルゲリータ>というフレーズからバーッと広げたもので。


ーー「猫サンキュー」などもパワーワードですね。確かにライブ感のあるアガる楽曲が多くて、その意味では、先ほど出た「絆-kizuna-」は異色かもしれません。


小柳:そうですね。あれはみんなで盛り上がるというより、聴いて「何やってんだろう」という笑いを目指したというか。エモい感じに謳ってるけど、スロットの話だよなと。休憩曲というか、バラードに近いというか、腕を組んで休みながらでも笑えるかなと。


ーー何となく聴いていると感動するんじゃないかと。


小柳:(歌詞の内容を)知らなければ。例えば、にっちとかはスロットをやらないのでーー。


にっち:普通にエモく叩いてますよ(笑)。もともと歌詞は全任せで、レコーディングまで知らないくらいなので。


ーーさて、記念すべき1stフルアルバムということで、これまで夕闇を聴いてこなかった人が手に取る機会も増えると思います。こんな一枚にしよう、という思いはありましたか?


小柳:初期からライブでよくやっている曲も、シングルの表題曲以外はほとんど入れていないんです。初めて聴く人に届けよう、というコンセプトで、それなら人気曲を集めて新曲を1~2曲、という構成でもよかったんですけど、僕らはYouTubeもやっていて、普通のバンドより新規の人に見てもらえる機会が多いわけだし、同じことの繰り返しだとしんどいところも出てくるなって。ほとんど知っている曲のアルバムでツアーを回っても、これまでと同じことにしかならない。だから半分は新曲にして、「知らなくてもアルバム買っていけばわかる」という一枚にしました。


ともやん:タイトルのとおりですよね。トラックは入門用の教科書のような感覚で作っていました。僕がトラックを担当したのは7曲なんですけど、そのなかでも「絆-kizuna-」のような曲もあれば、「Goodbye卒業」のような曲もあり、バリエーションを出そうと考えて。結果的にいろんなタイプの曲をギュッとまとめた、バランスのいい一枚になったので、よかったなと思います。


にっち:これまでシングルは4枚出してきましたけど、とりあえずこのアルバムを聴いておけば夕闇のライブは楽しめるぞ、という一枚ですね。シングルより先にアルバムを聴いてもらって、よかったらシングルも聴いてね、という感じで。


千葉:自分で言うのもなんですけど、全部いい曲なんですよ。いい曲で、いいところがあるので、手に取ってくれる方には細かいところも聴いてもらいたいですね。


ーーこれも自然にできていることなのかな、と思うのですが、YouTubeでの活動と音楽活動の相関関係についても聴かせてください。動画の企画でバンドならではの音楽ネタが出てくることもありますし、逆に日々動画でさまざまな企画をやっていることから、音楽にフィードバックされるされるものもあるのか。


ともやん:それで言うと、MCのしゃべりは若干うまくなったよね。


小柳:ああ、確かに。動画でしゃべるのって実は勇気がいるし、しゃべりの基礎能力だったり、掛け合いだったりのおもしろさは、動画から来ている気がしますね。


ともやん:あと、ライブ自体の組み立て方も幅が広がったのかなと。普通のバンドマンはやらない小ネタを挟んだり。


千葉:僕はあんまり感じてないですね。自由奔放にやらせてもらっているので……。


小柳:(優しい口調で)感じてください。


■ 動画映りを気にするのと同じように、ライブ映えするように


ーーでも、動画の企画で、千葉さんがライブでシンガロングをしていない、という検証があり、見事に改善されるという例もありました。これも、動画から音楽へのフィードバックと言えるのでは?


小柳:あれはただのエマージェンシーですけど、確かに他のバンドはやらないでしょうね。歌うようになったって、普通に戻っただけですけど(笑)。


ーーにっちさんはドラムスということもあり、ライブではあまりしゃべりを披露する機会がありませんが、その他の点についてどうでしょう?


にっち:「見られ方」というか、自分のパフォーマンスは気にするようになりましたね。動画映りを気にするのと同じように、ちゃんとライブ映えするようにと。


ーー4月13日から全国ツアーが始まりますが、その先の目標についても聞かせてください。


小柳:バンド活動で言えば、この特殊な立場を利用して、いろんなバンドと対バンすることですかね。バンドをやっているだけでは絡めない人とも絡めるというのが、YouTuberをやっている強みだと思うので。


千葉:立場を利用する(笑)。


ともやん:日々がめまぐるしくて、あんま考えてなかったね。


小柳:基本的には消えないようにがむしゃらに、という感じですけどね。目の前のことを言うと、ツアーを全会場ソールドアウトさせることかな。


にっち:いつかZeppツアーとかやりたいですね。


(橋川良寛)