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『なつぞら』草刈正雄は現代版“アルムおんじ”? 頑固ジジイが内に秘める深い愛

2019年04月10日 10:21  リアルサウンド

リアルサウンド

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 NHKの連続テレビ小説『なつぞら』で剛男(藤木直人)が連れ帰ったなつ(広瀬すず)に最初の頃は冷たく当たっていた泰樹(草刈正雄)。次第に、泰樹はなつの頑張りを認め、子どもだろうとも対等に向き合うようになる。今後もなつの生き様に大きな影響を与える人物となっていく。


【写真】なつにアイスクリームご馳走する泰樹


 そんな泰樹のキャラクターが、『アルプスの少女ハイジ』のアルムおんじと重なる、という声が続出。ネット上では、“泰樹おんじ”などと呼ばれ話題になっている。


 泰樹を演じる草刈正雄といえば、大河ドラマ『真田丸』(NHK総合)で演じた主人公・真田信繁(堺雅人)の父・真田昌幸を連想する人も多いのではないだろうか。昌幸は知略軍略に優れた天才武将で、戦国時代を生き延びるためなら手段を選ばない。草刈はそんな昌幸をコミカルに熱演。草刈のユーモアたっぷりな演技は若者からも熱い支持を受け、「二枚目なのにお茶目」と絶賛されていた。


 泰樹の豪傑な性格、豪快な物言い、佇まいはどこか昌幸に似ている。今作の制作統括である磯智明チーフプロデューサーは、「スポニチ Sponichi Annex 芸能」のインタビューで「真田昌幸と柴田泰樹の置かれている環境には近い部分がある」とコメント。実際、今作には多くの『真田丸』制作陣が参加している。また、「エンタメOVO」のインタビューでは、大森寿美男の脚本に“真田”の雰囲気を感じとった草刈が「昌幸のつもりでやっています」「泰樹さんは昌幸の生まれ変わりです」とも答えている。


 本作では、主人公なつがアニメーション業界に飛び込んでいく人生を描き、オープニング映像も全てアニメーションで制作。泰樹がおんじと話題になっている理由には、本作の背景にあるアニメーションとの関係が強いのだろう。たしかに、泰樹となつの関係はアルムおんじとハイジの関係によく似ている。アルムおんじはハイジと出会ったばかりの頃、無愛想で気難しい性格だった。だが、ハイジと接することで優しい性格を取り戻していく。 一方の泰樹も、東京から来たなつに冷たく当たっていたが、懸命に働くなつの姿を見て、徐々に心を開き、彼女を導いていく。


 泰樹は親しみやすいキャラクターではないし、柔らかな表情を見せることもなく、その厳しい口調には、娘婿の剛男もたじろいでしまうほど。だが、なつに対する泰樹の目が冷酷に映し出されたことは一度もない。たった一人で土地を開拓した泰樹だからこそ、なつの置かれている状況や彼女の孤独を誰よりも理解している。牛舎で懸命に働くなつの姿を、物陰からじっと見つめていた泰樹の目は、目の前の仕事に向き合うなつに対する慈愛に満ちていた。


 第4話で、泰樹はなつに自らが絞った牛乳でつくったアイスクリームを食べさせ、働くことについて説く。「堂々と、ここで生きろ」。その優しく、重みのある声から、泰樹が「偏屈な頑固ジジイ」ではなく「深い愛を持った人物」であることが伝わってくる。数多くの視聴者の心を魅了したこのシーンで、泰樹がなつの生き様に影響を与える人物となったのは確かだ。


 泰樹は頑固な人物だが、なつとの出会いがきっかけで少しずつ変わっていく。もしかすると今後草刈のお茶目な演技によって柔らかな表情の泰樹も見れるかもしれない。なお公式サイトに掲載のインタビューによると、今作には『真田丸』を少し意識した“遊び”が散りばめられているというので、草刈の演技や発せられる台詞には今後も目を離さずにはいられなさそうだ。


(片山香帆)