NTTインディカー・シリーズ第3戦アラバマグランプリ。バーバー・モータースポーツパークでレイホール・レターマン・ラニガン・レーシングの佐藤琢磨は、痛快なポールポジションを決めていた。
それは琢磨自身の8度目のポールであると同時に、開幕から2戦連続でポールを取っていたチーム・ペンスキーのウィル・パワーからその座をもぎ取った。
前回のポールポジションは2017年のポコノ、そして前回の優勝は昨年のポートランド。今年はまだ表彰台もなく、ランキング14位に低迷していた琢磨が、このバーバーのポールポジションからどこまで挽回できるか注目される。
午前のウォームアップでは8番手に沈み、「う~ん、どうしようかな?」と思いを巡らせていた琢磨。
「グラハムとセッティングが少しわかれてるんだけど、ちょっとスピードが足りない」とやや不満気だった。決勝に向けてどうマシンを修正していくのか。
レースは琢磨とチームメイトのグラハム・レイホールのフロントロー2台が並んでフォーメーションに。
琢磨は最終コーナーからジリジリと隊列を引き連れてくると、途端にスピードを上げてスタートを切った。グラハムはやや反応が遅れたのか、後ろのスコット・ディクソンに突かれるようにしてターン1~2とクリアしていった。
ターン5のヘアピンにアプローチする頃には、琢磨はグラハムに3車身ほどのリードを築いていた。
「実はスタートを見据えて1速のギヤを変えていたんです」と後から種を明かしてもらったが、この1周目のリードが、2周目、3周目と徐々に広がっていく。2番手のグラハムがディクソンら後続をしっかりと蓋をして、琢磨にとっては盤石の状態になった。
「このバーバーはイエローコーションになる確率が低いので、なるべくピットインをストレッチ(伸ばす)するつもりだった。なのでマージンをできるだけ築いておきたかった」と、その思惑通りに琢磨は十分なリードを築き、16周目に少し早めにピットインをする。この時に左リヤタイヤの交換に手間取りタイムを失うが、今日の琢磨にとっては大きな問題ではなかった。
ブラックタイヤを履いてコースに戻ると、またもや快調なペースに戻り、28周目に先頭のセバスチャン・ブルデー(デイル・コイン)がピットに入ると再びトップに返り咲いた。
後ろから迫り来るディクソンが琢磨の背後に迫ったのは、ディクソンがピットアウトした時で、コールドタイヤのディクソンが琢磨に追い付く速さはなかった。
琢磨はディクソンに2秒前後のギャップを保ったまま、慎重にマシンを走らせた。
■レース終盤にヒヤリとする場面も
レースが終盤に差し掛かった頃、レイホールがマシントラブルでコース上にストップ。さらにマックス・チルトン(カーリン)のクラッシュでイエローコーションとなるも、リスタートで琢磨に追いつけるドライバーはいなかった。
今日のレースでいちばんヒヤリとさせた瞬間は、終盤ターン8で飛び出して芝生の上を走行していた時だ。
「あそこはブレーキングもターンインも難しいコーナーなんですけど、もしとなった時は、あそこを抜けようと思っていました。見た目には派手で、みんなをヒヤリとさせてしまったと思う(笑)。ボビーが心臓マヒを起こしてないと良いんだけど(笑)」
90周のレースを琢磨はトップでチェッカーを受け、インディカー通算4勝目を飾った。昨年のポートランドの優勝から4レースぶりという早さだ。
「今回は予選からマシンを仕上げてくれたエンジニアのエディ・ジョーンズとチームのみんなにお礼を言いたいですね。ボビーが僕をこのチームに迎え入れてくれてから、昨年は厳しい一年だったけど、今年エンジニアリングを強化した結果、予選でワン・ツーを取れたし、今日はタイヤマネジメントもうまくいって、ピットインでの順位交代以外ではトップを譲らなかった」
「最後はレッドタイヤでいっても良かったけど、ブラックでも十分にスピードがありましたね。ポール・トゥ・フィニッシュなんてイギリスF3以来だったし、ちょっと懐かしいと言うか、このパフォーマンスをずっと求めていたので、実現してくれたチームと応援してくれた皆さんにお礼を言いたいです」
この優勝でポールポジション、リードラップなども加点された琢磨は、年間ランキング3位まで急浮上した。
そして来週はインディカーに来て初優勝した思い出の地、ロングビーチで第4戦を迎える。