2019年04月08日 10:21 弁護士ドットコム
夫婦で事業を営む、というのはよくある話ですが、夫婦関係にヒビが入ってしまった場合、仕事面はどうなってしまうのでしょうか。
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とある女性・陽子さんは夫が社長をつとめる会社で役員(立場上は従業員)として働いていましたが、夫の不貞行為が原因で別居することになりました。ところが、陽子さんは働き口がないため、気まずいながらもその会社で働き続けたそうです。
しかし、夫は陽子さんに「解雇してやる!」「お前は役立たないから家に帰れ!」などの暴言を吐き、しまいには陽子さんの給料を払わないことが何度もあったそうです。
今後、離婚することも考えられますが、陽子さんがクビになる可能性もあるのでしょうか。武田健太郎弁護士に聞きました。
「離婚のみを原因として、陽子さんを解雇することはできません。
陽子さんは、会社と雇用契約を締結したうえで従業員として勤務しているのであり、雇用契約において、離婚は無関係であるからです。
また、解雇をする場合には、客観的に合理的な理由があり、社会通念上の相当と判断できる理由が必要になり(労働契約法第16条)、離婚が、ただちに解雇をする場合に求められる合理的な理由及び社会通念上の相当性に該当するとはいえないからです。
なお、離婚が、客観的に合理的な理由の有無の一つの判断要素にはなり得ますが、離婚のみで解雇することはできません。
万一、配偶者が、離婚のみを理由として陽子さんを解雇した場合は、同解雇は解雇権の濫用となり、解雇は無効といえます」
陽子さんがもし、従業員ではなく、取締役だった場合、解任が法的に認められる可能性はあるのでしょうか。
「配偶者が強制的に解任することはできませんが、会社法の手続に則った上で解任される可能性はあります。
具体的には、(1)株主総会の解任決議(会社法第339条第1項)、(2)任期満了後に再任決議を行わないことによって、陽子さんは会社の取締役を解任される可能性があります。
万一、配偶者が、会社法の手続に則らずに配偶者の独断に陽子さんを解任した場合は、陽子さんから損害賠償請求(会社法第339条第2項)をされる可能性があります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
武田 健太郎(たけだ・けんたろう)弁護士
大学時代にサッカーで全国大会を二連覇し、その後、日本フットボールリーグ(JFL)でサッカー選手として活動しました。また、教員免許も取得しています。
現在は、労働問題の他、離婚・男女問題、交通事故、学校問題などの民事事件から、成人・少年等の刑事事件まで幅広く扱っております。
事務所名:武田健太郎法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13102/o_25762/