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『映画 少年たち』にある“ジャニーズとは何か”の答え 京本大我、ジェシー、岩本照を軸に魅力を考察

2019年04月07日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 “ジャニーズとは何か”の答えが、『映画 少年たち』にはある。大人が作った社会の闇を突き抜ける想い、ぶつかり合う中で生まれる友情と絆、大事な存在のために自己犠牲をもいとわない純粋さ……ある種のフェティシズムにも近いジャニーズイズムを、これでもかと詰め込んだのが『映画 少年たち』という作品だ。


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 やがて大人になってしまう少年たち。その刹那的な美しさと尊さを、ジャニーズは叫び続けているのだ。歌いながら想いがあふれるシャウトに対して「音程が……」なんて論じるのと同じくらい、この作品については「物語の辻褄が」とか「演出がうんぬん」などとレビューするのはナンセンスなのだろう。


 まるで小さな男の子が、「あのね、あのね」と矢継ぎ早に話をしてくれるかのように、一つひとつのエピソードは唐突で荒削り。だから、こちらとしては「ちょっと待って」と整理したくなるのだが、それを許さない圧倒的なエネルギーが勢いよく脳内に流れ込んでくる。そして、鑑賞後に残るのは、理解できたのだろうかという少しの不安と、理解したいという欲求。そして、気づけば「ちょっと、もう1回見てくるわ」と引き寄せられてしまう。それが、ジャニーズなのだ。


 この重力の源は、本作を演じるジャニーズJr.たちの熱量に他ならない。『少年たち』は、1969年の初演以降、幾度となく公演されてきた舞台作品。これまで多くのジャニーズJr.たちが、この作品に携わってきた。そんな伝統的な作品が、今回映画化されたのは、まさにジャニーズイズムを体現する「役者が揃った」からだろう。


 特に主要キャラクターを演じた、京本大我(SixTONES)、ジェシー(SixTONES)、岩本照(Snow Man)は、本作になくてはならない逸材だ。赤房の新入り・ジュン役を務めた京本は、京本政樹を父に持つ芸能界のサラブレッド。日本人が古くから魅了されてきた女形を彷彿とさせる美しい顔立ちは、まだまだ無垢なジュンを演じるのにピッタリだ。また京本の世間擦れしていない、どこか浮世離れした存在感は、仲間のために無謀ともいえる作戦を企てるジュンのピュアさを際立たせている。


 京本自身は、人気ミュージカル『エリザベート』にルドルフ役で出演するなど、高い演技力、歌唱力、表現力で、エンターテインメント業界の次世代を担う存在として注目を集めてきた。自ら作詞・作曲も手がけ、コツコツとギターを弾く姿は、1人でこっそりと仲間の絵を描くジュンともリンクして見える。


 そんな京本と、同じユニットSixTONESで活動するジェシーは、赤房のリーダー・ジョーを演じる。ジェシーもジョーと同じく、アメリカ人の父、日本人の母から生まれた。もともとアメリカのブロードウェイミュージカルに刺激を受けて生まれたジャニーズにとって、世界に誇るエンターテインメントを日本から発信していきたいという願いはずっと根底にあるように思う。


 恵まれた体格、仲間から頼られるキャラクター、確かな歌唱力、堪能な語学力。そんなグローバルな雰囲気を持つジェシーが、和風美人な京本と共にSixTONESとして「JAPONICA STYLE」を歌う意味は、ジャニーズの歴史から見ても大きいように思う。国境を超えて愛されるスター、作品を生み出すのは、彼らなのではないかと期待も膨らむ。


 そして、自分たちが思っている以上に力を引き出すのは、最強のライバルの存在だ。ジェシー演じるジョーのライバルとなる青房のリーダー・コウタを演じるのはSnow Manの岩本だ。喧嘩ばかりの赤房と青房は、それぞれデビューという夢を追いかけてしのぎを削るSixTONESとSnow Manのリアルなライバル関係にも重なる。もちろん、劇中のように殴り合いの喧嘩はしないが、ダンスや歌で勝負を繰り返す彼らの演技にも熱が入る。


 なかでもコウタに扮している岩本は、日本古来の「男らしさ」を体現するような剛健さが魅力。口数は決して多くはないが、仲間のために頭を下げることもできる男気あふれるキャラクターだ。そのストイックで、仲間想いな一面は、これまでSnow Manメンバーと共に、数々のジャニーズ舞台を支えてきた岩本そのまま。がっしりとしたジェシーに負けない、強靭な肉体を持っていることも重要だ。歌唱力の面でも、演技力でも、まさにいい勝負。同じくらい仲間を愛しているというところでも、ライバルにふさわしいふたりが揃う。そんなタイミングは、そうそうあるものではない。


 また、本作で輝いているのはSixTONESにSnow Manだけではない。ローラースケートに、カーテンフライング、早替えマスクなど、ジャニーズが誇る舞台演出をこれでもかと披露するHiHi Jets、美 少年をはじめとした若手Jr.や、黒房を演じた関西ジャニーズJr.たちも続く。この層の厚さがあってこその、今このタイミングでの映画化なのだろう。


 やがて少年たちは大人になっていくけれど、その時間を映画という作品にすることで時計を止めることができるのではないか。リアルタイムで過ぎ去っていく“若さ”を愛でてきた舞台『少年たち』を永遠にする、挑戦作ともいえる『映画 少年たち』。今、この瞬間に少年たち(ジャニーズJr.)が集結したひとつの奇跡を、そしてほとばしる若さを体感せずに、ジャニーズは語れない。(文=佐藤結衣)