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日本企業の中国進出に朗報? アリババ新サービスで越境EC市場はますます好調に

2019年04月07日 08:51  リアルサウンド

リアルサウンド

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 中国では近年、インターネットの急速な普及、キャッシュレス化による決済の利便化、市場ニーズの多様化など様々な環境の変化を受け、消費者の購買プロセスや購入方法も大きく変わってきている。


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 絶大な消費力を持つと言われる新世代、いわゆる「90後(1990年代生まれ)」の若者を中心に、ショッピングのスタイルもこうした環境の影響を受け、リアル店舗に足を運んで商品を購入する従来の習慣からインターネット通販、オンラインショップでの購入を主流とするスタイルへと移行している。


 一時期、日本で話題となった中国人観光客の「爆買い」。日本で“メイド イン ジャパン”の商品を大量購入する行為やその消費力が大きな注目を集めた。彼らが大量購入していた背景には、品質への信頼もあるが、中国国内において商品に対する安全•安心を求めるニーズが大きいこと、中国国内の消費力が成長したこともある。


 中国国内で流通している海外商品に偽物や粗悪品が混ざっていることもあり、現地で購入することへの信頼需要が高い。もちろん、「現地で買う=品質保証」という消費心理もあるだろう。ECサイトを通じて購入した商品のリピーターも多いだろうし、現地でしか購入できないレア商品を手に入れることができることも魅力の一つにはなっていると思われる。


 ただ、こうした傾向を持続させていくことは、非常に難しい。例えば、中国人観光客に人気が高い日本の商品で説明すると、家電製品以外で、化粧品、医薬品、日用品、そして健康食品だ。これらは、肌につけるもの、口にするもので、特に品質、安全性への要求も高く、日本の商品は幅広い年齢層から絶大な支持を得ている。


 これら人気商品に共通する特徴が継続購入、継続使用する可能性があることだ。かといって、そう度々海外に行き購入するというのもあまり現実的でない。そうすると、自ずと代行購入や越境ECサイトの利用という選択肢にたどりつく。近年の越境ECサイトは商品カテゴリーがますます充実し、海外ブランドの出店も多いので、消費者にも豊富な選択肢が与えられる。


 一方で、越境ECサイトの利用には、商品の安全性や品質保証に対する不安や物流に対する懸念など避けられないリスクを抱える。また、関税処理を含めた繁雑な手続きが必要で、個人にとっては大きなストレスにもなりかねない。


 海外企業からすると、文化、習慣や嗜好の違う中国市場に向けた越境ECサイトへの出店は商品管理、コスト管理や事業戦略など少なからずリスクを負うことになるし、中国市場に関する現地情報が少なければ、それも越境ECサイト販売に関して躊躇する要因になる。


 こうした課題を抱える海外企業を後押しする輸入支援サービス、越境EC支援として、2019年3月、アリババ・グループの「天猫国際(Tmall Global)」が打ち出した新たなサービスが、「TOF」と「CIP」の2つのソリューションである。


 アリババ・グループは、これまでも淘宝網(TaoBao)、天猫(Tmall)、支付宝(Alipay)、盒馬鮮生、無人レストランなどさまざまな形態のサービスを世に送り出し、その都度、話題をさらっている。天猫国際とは、アリババ・グループが運営する越境EC専門のサイトで、出店条件が高く、商品品質への保証も徹底しているので、ECサイトにおいても「天猫」のブランド力が高く評価されているようだ。


 このアリババ・グループの名を世界に知らしめたのは、今ではすっかり定着した中国最大の越境ECのイベントである11月11日のシングルデー商戦と言える。ちなみに、シングルデー商品は、海外の正規品を安く購入できるとして若者を中心に人気となり、今では毎年恒例のECショッピングにおけるビッグイベントになっている。


 さて、今回、天猫国際の新たなサービスとして紹介されたソリューションの一つ、TOF(Tmall Overseas Fulfillment/天猫海外フルフィルメント)は、一言でいうなら、海外企業に対して、「受注、梱包、発送、受け渡し、代金回収」までの一連の業務サービスを提供することだ。


 これにより、海外企業は、会社の規模に関わらず、低リスク&低コストで少量の商品を販売することができるようになるが、少量販売ができるということは、例えば、中国市場に本格参入する前のマーケティングとして、ターゲットとする消費者の嗜好をリサーチでき、商品データの分析も可能ということになるというメリットがある。


 もう一つのソリューションであるCIP(Centralized Import Procurement/海外一括仕入れサービス)は、アリババ・グループが海外6カ所に設立した物流センターを活用し、アリババ・グループが取り扱う全ての商品を世界各地から一括して調達するシステムサービスのことだ。アリババ・グループが運営するオンラインショップ以外、リアル店舗で販売する商品も一括して調達することで、海外企業は、アリババ・グループのプラットフォームを利用し、約7億人のアクティブユーザーに自社商品のアプローチをすることが可能となる。


■淘宝のセレクトショップ(オンラインとオフラインの連携)


 この2つのソリューションが海外企業の中国市場への参入を支援するサービスとして、国内外の企業からの関心が高い。


 ところで、こうした支援サービスは、消費者にとってどのようなメリットがあるのだろうか?


 知名度よりも品質を重視する消費傾向にある現在の市場に対応して、商品購入の豊富な選択肢は、消費者の満足度を高めることができる。


 消費者ニーズも多様化し、越境ECを活用する消費者の中で、“ブランド”よりも、より“高品質”、より“安全”な商品を求める声も多く聞こえる。現地に行かずとも、安心&安全、そして手軽に商品を入手できるシステムは、消費者にとっても価値が大きい。


 アリババ・グループは、これまでも市場消費をリードする斬新なサービスを次々と打ち出してきたが、「革新的」な戦略を継続提供していくことで、ますます存在感を強め、中国市場で優位にたつことができるとも言える。


 将来的にもオンラインとオフラインの融合による販売戦略は、アリババ・グループが考えるソリューションビジネスの重要なポイントになるだろう。


参考:https://www.alibabagroup.com/cn/news/article?news=p190321a
https://www.tmall.com/


(フライメディア)