トップへ

反復横跳びしながら「アイデンティティ」熱唱も 『サカナクションのNFパンチ』なぜ人気コンテンツに?

2019年04月07日 07:11  リアルサウンド

リアルサウンド

 サカナクションによる番組『サカナクションのNFパンチ』(以下、『NFパンチ』)が3月28日の2時間生放送で最終回を迎えた。 SPACE SHOWER TVのほか、YouTubeでも配信されファンの間で好評を博していた同番組。ファンだけが楽しめるものだと思われがちであるが、実は何の前提知識がなくても面白い。というか、YouTubeの専用チャンネルに上がっているアーカイブ動画を見ていると、どんどん次の動画を漁りたくなるスルメコンテンツだ。


(関連:ANREALAGE×ライゾマ×サカナクション山口がタッグ ファッションとテクノロジーが融合したコレクションを見た


 まずは知らない人のために、『NFパンチ』について説明していきたい。『NFパンチ』とは、サカナクションが音楽と音楽にまつわる新しい世界へいざなう番組。バンドのフロントマン・山口一郎の「今のメディアは音楽のわかりやすい部分しか伝えていない。音楽のもっと深い部分を伝えないと」という思いによって立ち上げられ(参照)、彼自身が趣向を凝らした企画を考案し、展開されている。ちなみに「NF」とは、“サカナクションに関わるクリエイター・アーティストと共に音楽に関わる音楽以外の新しいカタチを提案するプロジェクト”のことであり、彼らがオーガナイズする複合イベント(クラブイベント)「NF」のことである。


 番組の企画内容は、実に様々。ファッションスナップから写真の人物がどのアーティストのファンなのかを当てるゲストによる対戦形式の「NF将棋」、変装した山口がミュージシャンのメッカ・下北沢で弾き語りライブをする「絶対バレない男」、クラブに行ったことのない男女2人がNFを体験するというドキュメンタリー「はじめてのクラブ」、“フェス多過ぎ問題”をはじめとした昨今の音楽シーンにおける諸問題に鋭く切り込む「音楽のススメ」など、バラエティに富んでいる。


 これらの企画、とにかく一つひとつから伝わる熱量がすごい。たとえば、「はじめてのクラブ」では、山口自らクラブに行ってみたい応募者を面接したうえで実際に体験する男女を2人に絞り、山口が考案した「クラブ10カ条」を座学形式で直接指導。それだけでなく、SMAPやAKB48の振付も担当する振付ユニット・振付稼業air:manによるダンスの実践講座を、選ばれた男女2人と共に体験。そしてその男女2人が「NF」に初参加するとなると、山口がわざわざフォローに入るという至れり尽くせりっぷりなのだ。


 他にも、「NF将棋」では妻夫木聡や川谷絵音といった大物ゲストを呼び、「職業のススメ」ではレコード会社社員を集めてコアなトークセッションを繰り広げる。また、山口は、ほとんどの企画で司会者顔負けの軽妙洒脱なMCスキルで場を盛り上げているなど、見どころは数えきれない。


 そんなアツい番組『NFパンチ』が、なぜ終了してしまうのか。その理由は、2018年6月に番組スタッフを招集して行った「NF緊急会議」にて、公式Twitter、Instagram、YouTubeチャンネルのフォロワーがそれぞれ10万人、YouTube動画合計再生数1億回を掲げたものの、いずれも目標に届かなかったため。しかし、公式TwitterやYouTube動画のコメント欄には、「復活を待っています!!」「お願いです!NFパンチやめないでください!」「YouTubeにNFパンチほど良質なチャンネルは知らないから何らかの形で続いてほしい…」など、復活や継続を望むファンの声は多い。


 山口は『NFパンチ』立ち上げ時のインタビューにて、動画サイトの「釣りチャンネル」を例に取り「ものすごく専門的でマニアックなことを延々と放送し続けているんですね。釣りが好きじゃない人が観ると何も分からないんだけど、観ていくうちに、そのおもしろさにだんだん気づいたりするんです」と語っている(参照)。『NFパンチ』もまさにその理念が反映された番組で、見れば見るほど、山口及びサカナクションが標榜する音楽の深みにハマっていく。気になる方は、YouTubeの『NFパンチ』公式チャンネルに大量のアーカイブが残されているので、いつの日かの復活を待ちわびながら楽しんでみてはいかがだろうか。(こじへい)