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Suchmosとユニコーンの最新作が雄弁に語る“ロックバンド”の面白さ チャートインを機に考察

2019年04月06日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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参考:2019年4月8日付週間アルバムランキング(2019年3月25日~2019年3月31日・ORICON NEWS)


 2019年4月8日付のオリコン週間アルバムランキングではback number『MAGIC』が165,896枚を売り上げて初登場首位。2位のすとろべりーぷりんす『すとろべりーすたーと』の約2倍と、さすがのスタートダッシュをきめている。初登場がひしめくランキングのなかでも注目したいのは、4位にランクインしたSuchmosの『THE ANYMAL』と続く5位にランクインしたユニコーン『UC100V』だ。世代もスタイルもまったく異なる二組だが、そのサウンドはどちらもロックがまだ面白いものでありうることを示している。


(関連:Suchmos、新作『THE ANYMAL』サウンドの大きな変化 音楽シーンに一石を投じる作品に


 すでに各所で詳細な評が出ているが、Suchmos『THE ANYMAL』は彼らの大きな転換点だ。昨年リリースのミニアルバム『THE ASHTRAY』での、キャッチーなサビに頼らずに長尺の楽曲をじっくり聴かせるアプローチが先鋭化している。以前のヒット曲「STAY TUNE」ではあれだけ印象的なフックをつくりだしていた彼らだけに、こうした変化は実に興味深い。のみならず、『THE ASHTRAY』ではマッドチェスターの残り香を感じさせるグルーヴ感を湛えていたのが、サイケデリックな浮遊感へ舵を切ってもいる。この方向転換には、コード進行やメロディ、あるいはリズムのつくり方もさることながら、フレーズの途中で左右を横切るといった大胆なパンニングであるとか、あるいはディレイやリバーブといった空間系のエフェクトを躊躇なく使ったサウンドデザインも重要な役割を果たしている。先行配信もされた「ROLL CALL」は、アナログディレイやリバーブがこれでもかと施された破壊的なダブワイズが素晴らしい。サイケ、プログレ、クラシックロックが引き合いに出されることの多い『THE ANYMAL』だが、ところどころで過激な音響が顔を出すのが、個人的に気に入っているポイントだ。ドライでミニマム、そしてボトムの低い(それこそサブベースの活用など)音像がポップソングの王道となりつつある現在、こうした遊び心のある空間性を持ったバンドサウンドがリスナーを沸かせていることも痛快。


 一方ユニコーンの『UC100V』は、往年のロックサウンドを現代風に蘇らせたかのような躍動感とラウドさに驚かされる。いや、ユニコーンを捕まえて“驚かされる”というのもなんだか失礼ではあるのだが。音数は絞りつつも各楽器がきちんと空間を埋め尽くす、心地よくもダイナミックなアンサンブルは、“ユニコーン100周年”(なぜ100なのか、細かい理屈はここでは省くが……)を掲げるバンドらしからぬ瑞々しさだ。左右のチャンネルにぱっきりと振り分けたツインギターに、手数が多めのドラムスと全体を支えるベースが中心に据えられたサウンドデザインは、王道であると同時に楽器同士の現代的な分離の良さをつくりだしている。再始動後の諸作と並べても、バンドの一体感と楽器ごとの動きの捉えやすさを両立した楽しみがいのあるサウンドという点で、頭一つ抜けている印象がある。力の抜けた、ユーモアとかっこよさが絶妙なバランスで混じり合った歌詞も良い。


 近年、ロックバンドをやる、ということに対するアンビバレントな思いを抱えるミュージシャンも多いなかで、この2作は“まだこのかたちで鳴らせる面白い音がある”ことを雄弁に語っているように思う。しかもそれが“いい意味で変わらないもの”にとどまらず、多かれ少なかれアップデートされているとなれば、なおさらだ。(imdkm)