4月5日、東京都千代田区の日本外国特派員協会で、2018-19年アジアン・ル・マン・シリーズGTクラスチャンピオンを獲得したCarGuy Racingのドライバーでもある木村武史代表、チームのマネージングを務めるケイ・コッツォリーノが記者会見に臨み、2019年のル・マン24時間参戦を発表するとともに、チームに新たに元ザウバーF1チームのオーナー兼代表だったモニシャ・カルテンボーンが加わることが明らかにされた。
CarGuy Racingは、会社経営者でもあるビジネスマンの木村が、子どもの頃からのクルマ好きが高じスタートさせた独自のプロジェクト『CarGuy』のレーシングチーム。独特のロジックでビジネスで成功を収めた木村は、2015年にランボルギーニ・スーパートロフェオに参戦を開始すると、みるみるドライビングスキルを上げ、2018年にはスーパーGTにまでステップアップした。
同時に昨年は、AFコルセのメンテナンスとワークスドライバーのジェームス・カラドを招聘し、2018-19年のアジアン・ル・マンにフェラーリ488 GT3で参戦を開始。全4戦のシリーズで無傷の4連勝を飾り、見事GTクラスのチャンピオンを獲得し、2019年6月のル・マン24時間の参戦権を確保した。
すでにル・マン24時間の主催者であるACOフランス西部自動車クラブから発表されたエントリーリストにも名前があり、木村の夢のひとつだったル・マン参戦を決めていたCarGuy Racingだが、その参戦発表の舞台は、数多くのトップアスリートたちが記者会見の場として臨んでいた、日本外国特派員協会の会見場だ。
その独特の背景に「この青い幕の前で自分が話すのは緊張します(笑)」という木村は通訳を介して、ネイティブに話すことができるケイ・コッツォリーノは英語で会見でコメントを残したが、ふたりと同時に、驚きの“スペシャルゲスト”がチームに加わることが明かされた。ふたりの横に、元ザウバーF1チームのオーナー兼代表だったモニシャ・カルテンボーンが登場したのだ。
カルテンボーンは、2010年からザウバーのCEOを務め、2017年にチームを離脱。その後はF4チームの共同経営などを行っていたが、今回ル・マン24時間参戦を決めたCarGuy Racingで将来に向けたミッションに関わることになった。
■ル・マン制覇、そしてその先に向けたカルテンボーン加入
今回CarGuy Racingはル・マン24時間参戦が初。当然木村もコッツォリーノもサルト・サーキットを走るのは初めてだ。ただ木村は「私は日本人です。ヨーロッパで、日本人が優勝してひと泡吹かせたいと思っています」と初挑戦ながら、ル・マン優勝を狙っているという。
「ル・マンに初めて臨みますが、優勝を正直目指しています。私たちは世界最強のジェントルマンチーム、そしてフェラーリチームであると思っています」と木村。
今回の挑戦にあたっては「地の果てまで名前が響き渡っているような」企業が、木村のレーシングスピリットに共感し、近々大きな規模のスポンサードの契約を結ぶという。また、ル・マンでは豪華なゲストの登場もあるとのこと。非常に豪華な参戦体制が築かれつつあるようで、今回のカルテンボーン加入はそのためのものでもある。
「モニシャさんは大変有名な方ですが、ル・マン制覇に向けてパートナーシップを結び、私たちのチームの将来的なビジョンに向けて、いろいろな話をさせていただいている最中です」と木村は語る。
そしてチームに加わることになったカルテンボーンは「今日この場に来られて嬉しいですし、このプロジェクトに関わることができて嬉しく思っています」と語った。
「木村さんからプロジェクトについて語られたときは、とても興味深いものを感じました。彼らからはモータースポーツへの情熱が感じられました。またチームの歴史も興味深いものです。チームが次のステップに向かうためには強固な基盤が必要で、特にル・マンのような戦いではそれが重要になります」
「目標はクリアで、モータースポーツの世界で成功するために、ひとつひとつステップを踏んでいくことです。だからこそ私は今日ここに来ましたし、チームに加わることができてとても興奮しています」
そして木村の思いは、ル・マン24時間参戦、LM-GTE Amクラス優勝だけには留まらない。「2020年からスタートする計画がある、ル・マン最高峰クラスのハイパーカーに挑んでいきたい」と木村は明かした。CarGuy Racingがハイパーカーに挑戦するためには、チームを本格的にプロフェッショナルな集団としなければならない。カルテンボーンの招聘は、これにも絡むものだという。
ル・マン24時間初挑戦・初制覇、そしてハイパーカーと、CarGuy Racingは世界を目標に動き出した。今回の外国特派員協会での会見にも見られるとおり、今までの日本チームとは一線を画すようなチーム運営がみられている。新たにカルテンボーンという“大物”を加えた“自動車冒険隊”の動きは大いに楽しみにしたいところだ。