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「ダンメモ×デアラ」激アツシナリオを生み出した3つの軸とは? 橘&大森両先生がネタバレ全開で解説【インタビュー】

2019年04月04日 13:02  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

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ライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』を原作とするスマートフォン向けRPG『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~(ダンメモ)』が、現在アニメ第3期を放送中の『デート・ア・ライブ』とクロスオーバーイベントを展開。3月28日11時00分から4月18日14時59分にかけて開催される。

「大冒険譚 剣姫カタストロフ」と題された本イベントのストーリーは橘公司先生と大森藤ノ先生がW原案・共同執筆という形で携わっており、両作のファンにはたまらない濃密な内容。
イベント配信時に公開した前半に引き続き、後編となる今回の記事ではふたりの高い熱量が生み出したクロスオーバーシナリオの内幕について、両原作者にお話いただいた。
ネタバレを多分に含んでいるため、本記事を読むのはイベントクリア後を推奨!
[取材・構成=山田幸彦]

インタビュー前編はこちら>「ダンメモ×デアラ」奇跡のコラボが生まれた舞台裏は? 大森藤ノ先生&橘公司先生が明かす【インタビュー】

■カタルシス重視で、攻めた内容に
――異色のシナリオに仕上がっているのではないか、というお話が前半でありましたが、確かにクロスオーバーとしては攻めた内容という印象を受けました。

大森
大前提としてユーザーのみなさんにストレスを与える展開はダメだと思いつつ、最後のカタルシスのために攻めさせていただきました。
執筆中は、一作の小説を作るくらいの意気込みでやっていましたね。


やっぱりせっかくやるなら、毒にも薬にもならない話にはしたくなかったですからね。
ただ、攻めているとはいえアニメの範囲内に収まる設定とキャラクターだけでやろうという話はあって。
例えば、原作読者にむけた話になっちゃいますけど、本当は今回【六の弾】を撃たせるつもりだったんです。
でも、アニメに出てないから【一二の弾】 にしとこうとか。

大森
早速ネタバレですね(笑)。……そんな中でアニメ1期、2期を踏まえたネタもあって、アニメで扱われている範囲内といえども『デート』ファンに喜んでもらえる流れになっているのではないかと思います。
原作に出ているセリフを使っているシーンもあるのですが、致命的なネタバレではないので、興味を持った方は原作も読んでいただけると嬉しいです。

――前半では、折紙のキャラ描写に大森先生が苦労されたというお話がありましたけれども、『デート』主人公である士道に関してはいかがだったのでしょうか?

大森
『デート』を全巻読んだ結果、士道さんに関してはやりたいことがいっぱい出てきて、その度に橘先生とすごい綿密に打ち合わせをさせていただきました。その結果、あまり苦労せずに書けたかなと。


中盤の士道とベルのシーンは、全キャラ中一番僕が手を入れてない場所だと思います。

大森
ありがとうございます。橘先生には悪いんですけれど、士道という主人公にしか目がなかったんですよね(笑)。十香たちメインヒロインを差し置いて。


なかなか珍しい人だよそれは!(笑)。士道とベルの絡みに関しては、(島﨑)信長くんも面白いと言っていました。

大森
本当ですか! すごい嬉しいです! 橘先生が直しを入れずに採用してくれるのも嬉しいですけど、士道の魂を理解してもらえているキャストさんに面白いと言っていただけるのも、作家冥利に尽きます。

――『デート』の主人公である士道を大森先生が動かされるのを見て、橘先生がご自身で書かれるときとは違う面白さを感じられた部分もあったのでしょうか?


ありましたね! 顕著に感じたのは『熱さ』。大森さんの士道は熱血分が多いです。

大森
ごめんなさい!!


いやいや、すごく良いことですよ!
特に終盤ベルと殴り合うシーン。あそこは熱量が高くて、この熱さは僕も勉強しなきゃな、と思いました。

大森
ありがとうございます。
そうだ、士道といえば、WFSさんと話す中で、「ガチャじゃなくて☆3の配布でいいから士道が欲しい!」と延々と言っていたんですよ。
でも、結果実装はされなくて、今回のイベントで唯一の心残りです……!

――スマートフォン向けゲームならではの悩みですね(笑)。


十香と狂三は確定として、あとは誰を入れるかって話だったんですよね。
そんなとき会議終わりの大森さんから電話がかかってきて、「士道、ダメでした……すいません!」と。申し訳ないのですが、あまりに悔しそうすぎてちょっと笑ってしまいました。
とはいえ、士道を入れるならヒロインを入れたいというWFSさん側の意見もよくわかりますし、商業的には正しいと思います(笑)。

★4[ナイトメア]時崎 狂三、★4[プリンセス]夜刀神 十香

――ある意味、原作者の橘先生以上に入れ込まれていたのですね。

大森
どうしてもラノベ主人公として同じ熱量を持つベルと士道を絡ませて、化学反応を見たかったんです!
デートの原作を読んだ時、真っ先に思い浮かんだシーンが終盤の二人の姿でしたし。実際のシナリオでも士道がベルの良き理解者になってくれるキャラクターだったので、ガチャも入れてほしいなと(笑)。
でも、橘先生やWFSさんの判断もわかるんです。精霊はすごい引力を持っているキャラクターたちですから。

――十香と狂三以外のキャラクターのチョイスに関しては、どういった流れで今の形に収まったのでしょうか?

大森
アニメ3期で精霊化するので、折紙は出したいという話はありましたね。


そうですね。サポートキャラも出したいってことで琴里ちゃんも。

★4[エンジェル]鳶一 折紙、★4[イフリート]五河 琴里

大森
琴里はWFSさんも推していた感じですね。
あとは『キノの旅』、『進撃の巨人』と続いて『ダンメモ』恒例の声優被りにまつわるネタをやりたいということで、リリルカを演じている内田真礼さん繋がりから『デート』の耶倶矢をチョイスして。

★4[ベルセルク]耶倶矢&リリルカ


あとは、そこに『ダンまち』勢のコスチュームチェンジが加わった形ですね。
コスチュームチェンジは毎回ありますけど、今回もすごかったですね。反転アイズは素晴らしかった。

★4[魔王剣姫]アイズ・ヴァレンシュタイン

大森
攻めさせていただきました。『デート』と『ダンまち』の両方を知っている人は、PVで驚いてもらえたらいいなって。


そして忘れてはいけない琴里衣装のヘスティア様。なんて残酷なことを。
何がとは言わないけれど、なんて残酷なことを。

大森
自分のわがままでそこに関するシナリオも入れてもらいましたね(笑)。

★4[女神司令官]ヘスティア

――『ダンメモ』のコラボイベントといえば、コスチュームチェンジに纏わる衣装ストーリーも見どころですが、今回どのようなポイントにこだわられましたか?

大森
前半でお話したように、自分は『デート』の原作で登場したヒロインの中では六喰が大好きで。そこで、今回登場はさせられないまでも、ネタをなんとか入れられないかなと思い、衣装ストーリーに六喰ネタを入れたんです。
具体的に言うと、琴里の服を着たヘスティアが「胸が苦しい」っていう掛け合いのほとんどは、原作で六喰が琴里の衣装を着て苦しいと言うシーンのリスペクトです! トランジスタグラマー繋がりということで(笑)。


ヘスティア様に琴里の衣装を着させるってのは、ツインテール同士で行けるだろうという理由で、早めに決まりましたね。
逆に、琴里がヘスティア様の衣装を着て紐がだらーんとなってるっていうのも考えたんですけど、それは採用されませんでした……(笑)。

大森
やってみたかった気持ちもありますが……絵面的にちょっと琴里がかわいそうかなと(笑)。


みんなの心にちょっとだけ優しさが残っていた。
琴里とヘスティア様を筆頭に、衣装ストーリーはどれもなかなか面白く仕上がったのではないかと思います。

大森
ネタバレすると、ヘスティアの衣装ストーリーはギャグ全開で、アイズはシナリオ部分の補完になっているんです。本編の描写がユーザーさんには少し不親切だったかもしれないですけど、衣装ストーリーでより補完できるようになっているので、気になった方はぜひ見ていただければと思います。


琴里の衣装ストーリーは1回大森さんから上がってきた時点で十分面白かったんですけど、そこからさらにいじらせてもらいました。

大森
ふたりでふざけ倒しています(笑)。
あとはそうですね、これまでのダンメモのシナリオで何度か試していた『地の文』を思いきって導入しています。『ビジュアルノベル』じゃないですけど、『クロスオーバー』と呼んで頂いた理由はここにあるのではと個人的には。

■W主人公×デート×ループ

――今回のクロスオーバーのメインストーリーの中で、特におふたりがこだわられたポイントはどこになりますか?

大森
前半に関しては『デート』のキャラをまんべんなく絡ませているんですけれど、後半は時が逆行して、ベルと士道がふたりで事件に立ち向かうストーリーになっているんですよね。そこは本当にやりたかったことです。


僕から「せっかく狂三がいるんだから巻き戻そう」 ということは提案させていただいて。

大森
プロットを読んだスタッフさんとお話したときに、「ループものってクロスオーバーでできますか?」と言われたんです。確かに、違う作品のキャラも絡むクロスオーバーで、情報量の多いループものをやるって、なかなかにハードルが高いんですよね。
最初はやり遂げます……としか言えなかったです(笑)。


でも、結果的に上手い形に収まってくれたと思います。

大森
なんだったら時間関係のシナリオを書くのが初めてだったので、これが初めてで良かったな、と思えたくらい経験値を頂けました。

――ストーリーの中でアイズが重要な立ち位置になったのは、どういった経緯があったのでしょうか?


『デート』って、その名の通りデートするのが基本骨子にあるので、「『ダンまち』と絡めた場合に誰を?」となったときに、アイズに白羽の矢が立ったんです。

大森
今回は、「ループもの」「『ダンまち』キャラをデートで落とす」、そして「士道とベルの熱い絡みを見せる」という3つが軸になっていますね。
あとは『ダンまち』側のネタになってしまうんですが、今回ベルがアイズを救う話を描きたいと思っていたので、それもやらせていただいて。


「コラボシナリオで、そこ踏み込んでいいのかい?」と思いました(笑)。

大森
原作でアイズを救う話をまだやっていないので、それの予習をしようと思ったんです。「ベルがアイズを救うとしたら、どうするのか?」という。
それプラス、『ダンまち』7巻の春姫編の復習のつもりでも書いたので、個人的にも勉強になったし、『ダンまち』を知っている方はニヤリとできると思います。

また、リヴェリアというキャラクターがアイズを救ううえで語らずにはいられないキャラクターで、そこにベルと士道が向き合うのもハイライトかなと。

――士道しか精霊の力を封印できないという『デート』の設定をどう入れ込むのかと思いましたが、実際に見てみると「なるほど!」となりました。


今回登場する封印の指輪ですね。これは『ダンまち』世界由来の霊力なんで封印できますという。
設定を『デート』原作に忠実にし過ぎると、縛りがきついですからね。

大森
そこは面白さ重視で、あえて整合性を気にせずに書いた部分でもあるので、原作ファンの方には目を瞑ってもらい、ひとまずお祭りを楽しんでいただければと。
キャラたちにもツッコミをさせてますけど、「コラボだからこうなんだ!」と説明一切なしでやっています(笑)。


そんな中で不思議に噛み合うポイントもあって、大森さんが精霊に風属性をこじつけてきたのはなるほどなと思いました。

大森
本当に偶然の産物です。「この手がありましたよ、橘先生!」って感じでした(笑)。アイズにも精霊の血が流れているという設定があったからなんですが。

――今回のシナリオの黒幕は、『デート』に登場するアイザックでしたが、こちらはどう決められていたのでしょうか?

大森
「ラスボスを出したい!」という気持ちはあったんですよね。ループものをやるうえで、モンスターを倒して終わりでは締まらないなと思っていて。


最初はアイズでしたね。 でも、ヘイトを稼ぎ過ぎちゃうのもどうかという話になって。

大森
シナリオ的に攻めてはいるものの、やはりそれぞれのメインキャラクターたちがヘイトを稼ぐのはいけないという縛りは設けていたんです。
そこで、泥を被ってくれるじゃないですが、堂々たる風格の敵キャラを出したいと思って、『デート』原作でも素晴らしい悪役であるアイザックを呼びたいですと我儘を。
シナリオを既に読まれた方にはわかってもらえると思いますが、声優さんの演技も光って、素敵なラスボスになっています。

あ、でも全力でネタバレですけど、某声優さんと以前お会いした時に「置鮎さんみたい演技って言われて本当に困りました!」と怒られました。内田さん、本当にありがとうございます、ごめんなさい……。

■2回目のコラボにもやる気満々!
――現在は、ひとまずイベントを無事開催され、ほっと一息……というところかと思いますが、今回の「剣姫カタストロフ」で共に原案・執筆を担当されたことで、おふたりの中で今後やりたいことは生まれましたか?

大森
直近で言えば、『デート』とのクロスオーバーもう1回やりたいな、なんて(笑)。同じ熱量を持って取り組めたのが本当に楽しかったので。


次があったら、士道の実装も許されるんじゃないですか?(笑)。あと、万が一『デート』に4期があったら六喰が出せるよ!

大森
あっ! それを聞いて、すごくやりたくなってきました(笑)。


もし機会があれば、ぜひまた実現したいですね!

――では最後に、今回の『大冒険譚 剣姫カタストロフ』で、ぜひ振り返っていただきたい場面などについてお話いただければと思います。


やっぱり、僕としては狂三関連のシーンですかね。いい感じに暗躍してくれました。

大森
原作もそうですけど、狂三はおいしいポジションですよね、いろいろと(笑)。


そして、ループもの特徴として、今回のイベントはクリアしてから見返すと、「このキャラはこういう行動をしていたのか!」と、謎が解ける部分もあるのではないかと。
あとは前半終了からの後半の開幕の部分がとても熱い展開に仕上がっているので、そこからの士道やベルたちの再起を楽しんでいただけていれば何よりですね。

大森
自分たちなりにライトノベルのカタルシスをできる限り出そうと思い、最後に向かってひた走ったシナリオにはなっているので、両主人公がどう決断するのか、キャラクターたちにどう言葉をかけていくのかは、まだプレイしていない方にはぜひ見てほしいし、クリア済みの方は何度も見返してもらえればなと。

あとは、『デート』と『ダンまち』のキャラクター陣が作品の壁を越えてかけ合いを行っていること自体が非常に貴重だと思うので、夢の共演をひとつひとつ堪能していただけると嬉しいです。
今回のイベントでも、WFSさんはとても熱意をもって取り組んでくださったので、『デート』ファンのみなさんもこれを機に『ダンメモ』を楽しんでいただければと思います!
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