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新幹線で「果物ナイフ」持った老夫婦、警察出動の騒ぎ…なぜ「違法」にならなかった?

2019年04月04日 10:21  弁護士ドットコム

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JR静岡駅で3月15日夕方、新幹線の車掌が、乗客の中にナイフを持っている老夫婦を見つけて、警察に通報する騒ぎがあった。


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テレビ静岡などによると、老夫婦は、果物の皮をむくために「果物ナイフ」を持っていたという。新幹線は15分ほど遅れて出発したが、2人は無事に目的地に到着できたそうだ。



●正当な理由なく、果物ナイフを携帯することは「違法」

法律上、正当な理由なく、刃体の長さが6センチをこえる刃物を携帯することが禁止されており、処罰される(銃刀法22条)。また、6センチ未満の刃物を携帯することも処罰対象となっている(軽犯罪法1条2号)。



もちろん果物ナイフの携帯もこれらの法律が適用されることになる。「正当な理由」があれば不問とされるわけだが、どういう場合そうなるのだろうか。刑事事件にくわしい德永博久弁護士が解説する。



●正当な理由は「社会通念」に従って判断される

「『正当な理由』といえるためには、研磨・修理・鑑定・売買の目的など、刃物を携帯・運搬することについて、職務上または日常生活上の必要性があり、社会通念上相当と認められる場合に限定されます。



銃刀法22条および軽犯罪法1条2号のいずれにおいても、その犯罪を不成立とする要件である『正当な理由』があるかどうかについては、『社会通念』に従って判断されます。



『社会通念』とは、日常用語でいいますと、いわゆる『常識』に近い判断基準と考えるとわかりやすいと思います。ただ、その判断基準は、時代や場所などによって、絶えず変化することから、問題となったケースごとに『正当な理由』があるかどうかについて、個別具体的な事情を踏まえて、検討・判断する必要があります」



●「果物の皮をむくため」だけでは判断できない

今回のように、果物の皮をむくために果物ナイフを持っているような場合は「正当な理由」にあたるのだろうか。



「単に、『果物の皮をむくため』という理由だけで、『正当な理由』があるかどうかを判断するのではなく、『果物ナイフの所持者が、いつ、どこで、どのような態様で果物ナイフを所持していたのか』などといった諸事情まで含めて判断する必要があります。



今回は、(1)老夫婦(体力的には、他人に危害を加える危険性が一般的に低いと思われます)が、(2)新幹線という比較的長い時間乗車することを前提とする車両内の自己の座席において、(3)自分たちが食べるための果物を所持したうえで、(4)その果物の皮をむくための手段として果物ナイフを携帯していた、といえます。



これらの諸事情を踏まえれば、『正当な理由』があったと認定することが妥当だと思われます。



ただし、この結論は、今回のケースに限ってあてはまるものですので、一般的に『新幹線の中に果物ナイフを持ち込んでも、かまわない(正当な理由があるから犯罪不成立)』といった誤解をしないように留意してください」



(弁護士ドットコムニュース)




【取材協力弁護士】
德永 博久(とくなが・ひろひさ)弁護士
第一東京弁護士会所属 東京大学法学部卒業後、金融機関、東京地検検事等を経て弁護士登録し、現事務所のパートナー弁護士に至る。職業能力開発総合大学講師(知的財産権法、労働法)、公益財団法人日本防犯安全振興財団監事を現任。訴訟では「無敗の弁護士」との異名で呼ばれることもあり、広く全国から相談・依頼を受けている。
事務所名:小笠原六川国際総合法律事務所
事務所URL:http://www.ogaso.com/