2019年04月04日 10:21 弁護士ドットコム
男女間の些細なトラブルが思わぬ「事件」につながってしまうかもしれません。「元カノに車で引きずられた」という男性が弁護士ドットコムに相談を寄せています。
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男性は、車に乗っている元カノと口論に発展。元カノに車から降りるよう促され、ドアノブを掴んだとたん、車を急発進されたそうです。
「服や靴はボロボロになり、お尻は傷だらけになりました。頭や体もぶつけてしまい、ひどく痛みます」と男性はやるせない様子です。
同じような体験をした女性からも相談が寄せられています。「旦那が乗る車を追いかけたところ、そのまま引きずられてケガをしました」という女性。旦那は家出をしており、その日は荷物を取りに帰ってきていたのだそうです。
相手をなんらかの罪に問うことはできるのでしょうか。坂口靖弁護士に聞きました。
ーー車で引きずられた場合、相手をなんらかの罪に問うことはできるのでしょうか
「自動車で人を引きずる行為は、暴行罪、傷害罪や殺人未遂罪に問われる場合があります。いずれの罪に問われるかについては、被害者と自動車との接触状況、自動車の発進状況、速度、走行距離、被害者に生じたケガの程度などによって変わります」
ーー具体的に、どのような場合に殺人未遂罪や傷害(暴行)罪が成立するのでしょうか
「つぎのような場合においては、『被害者が死亡してしまう可能性があるものと認識できた』として、殺人未遂罪の罪責を問われることがあります。
・被害者が自動車の発進を防ごうとするなどしてボンネット上にいるにも関わらず、自動車を急発進または走行させた場合
・被害者が自動車からまだ降りきっておらず、ドアが開いたままの状態(身体の半分以上が車内に残ったままの状態)で、自動車を急発進または走行させた場合
・被害者を引きずったまま、長距離にわたって自動車を走行させた場合
他方で、
・被害者が完全に自動車から降りており、手がドアにかかっていた程度だった
・急発進ではなく、ゆっくりと少しだけ自動車を走行させた
・被害者が無傷もしくは軽傷だった
などの事情がより多く認められれば、傷害罪(被害者が負傷しなかった場合は暴行罪)の罪責が問われるに留まることが多いでしょう」
ーー相手に対して、ケガの治療費や慰謝料を請求することはできますか
「民法上は不法行為にあたりますので、ケガの治療費や慰謝料の請求が認められる可能性は高いでしょう。ただし、そもそも治療を受けていない場合は治療費の請求は認められません。
また、病院を受診していない場合は、ケガをした事実を証明することが困難になるので、慰謝料の金額も非常に少なくなってしまう恐れがあります。
もっとも、自動車を発進され、負傷してもおかしくないと評価できるような危険な目にあったということが立証できるのであれば、多少の慰謝料が認められる可能性はあります」
ーー自動車で引きずられたことを証明するのも難しそうですね
「はい。民事裁判では、そのような事実があったか否かが争点となることも考えられます。取り急ぎ、被害届を提出して刑事事件化し、証拠を確保してもらうことが極めて重要です」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。
事務所名:佐野総合法律事務所
事務所URL:http://www.sanosogo.com/