東京商工リサーチは3月下旬、「事業所内保育所の設置に関するアンケート調査」の結果を発表した。事業所内保育所とは、企業が従業員の子どもや近隣住民の保育を目的として設置する保育施設のこと。調査によると「自社に設置していない」は98.4%で、「設置している」はわずか1.6%にとどまる。設置しない主な理由には、「人材確保ができない」や「運営のランニングコストがかかる」が挙がっている。
調査は今年2月20日~3月6日に実施。9081社から回答を得た。
「複数の企業が共同利用できる保育施設、施設整備のための助成金」に高いニーズ
「事業所内保育所を設置しない理由と背景」を地域別に見ると、「子どもを連れた事業所までの通勤が困難」は「東京」(19.5%)や「大阪」(11.3%)で高い。
待機児童問題に見られるように、都心部を中心に保育の受け皿が不足し、復職を妨げている。企業に「受け皿不足で考えられるデメリット」を聞いたところ、「社員の不本意な復職延期」が19.4%で最も多く、「遠方の保育施設利用による社員の不本意な時短勤務」(15.8%)、「認可保育所への希望が通らず、認可外保育施設への入所」(13.9%)、「子どもの預け先が見つからなかったことを理由にした退職」(9.5%)が続いた。
「事業所内保育所の整備推進にはどのような国の施策が必要と思うか」を聞くと、「複数の中小企業が利用できる共同保育施設」(53.5%)を挙げる企業が最も多かった。ほかには、「保育人材の処遇改善のための助成金交付」(46.0%)や「施設整備のための助成金交付」(37.2%)も挙がった。
中小企業ほど設置による採用、復職率向上のメリット大
一方で、「設置している」と答えた企業(1.6%)に効果を聞くと、「産休・育休利用者らの復職率の向上」(51.4%)や「人材採用に有利」(50.0%)という回答が寄せられた。
効果を企業規模別に見ると、「復職率の向上」は「中小企業」(57.2%)、「大企業」(39.1%)、「人材採用に有利」では「中小企業」(54.1%)、「大企業」(41.3%)と、どちらの項目も中小企業が大企業に10ポイント以上の差をつけている。事業所内保育所の設置によるメリットは、中小企業の方が大きいことがうかがえる。