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VLN:ニュルに登場したワンオフのBMW M2コンペティション。開発の狙いをシューベルト代表に聞く

2019年04月02日 15:01  AUTOSPORT web

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ニュルブルクリンクを走るシューベルト・モータースポーツのBMW M2コンペティション
難攻不落の名コース、ニュルブルクリンクを舞台に争われているVLNニュルブルクリンク耐久シリーズ。このレースには数多くのレーシングカーが参戦しているが、多くのエントリーを集めているBMW M235iレーシングカップとは異なる、BMW M2コンペティションがデビューした。このマシンは、BMWでレースを戦う名門シューベルト・モータースポーツが開発した新プロジェクトの『BMW M2コンペティション』だ。このプロジェクトについて、トロステン・シューベルト代表に聞いた。

 シューベルト・モータースポーツは、BMWはもちろんミニやBMWモトラッドの店舗をドイツで展開しながら、レースを戦う名門チーム。GT3レースでも車両開発を含めて活躍し、数多くの勝利を挙げてきたチームだ。2018年はドイツのADAC GTマスターズでホンダNSX GT3を走らせ話題となったが、今季はふたたびBMWを走らせている。

──昨年はいったんBMWから離れて、ホンダNSX GT3も投入しました。今回、BMW M2コンペティションをニュルに投入しましたが、その理由は?
トロステン・シューベルト(以下シューベルト):チーム創立から20年を迎え、手作りのマシンでVLNや24時間レースに出ていた古き佳き時代の原点に戻り、もう一度自分たちらしいレースに戻ろうと思ったからなんだ。

──VLN1では、このM2コンペティションは多くの注目を浴びていましたが、このマシンのコンセプトはどんなものでしょう?
シューベルト:昨今では、アマチュアドライバーがモータースポーツを気軽に楽しもうとしても、GT3カーはもはや億万長者の遊びになってしまった。大金持ち以外のジェントルマンたちにも、もっと自由に、もっと楽しくモータースポーツに馴染んで欲しいんだ。『このシューベルトのM2で、ニュルへ一緒に出てみませんか?』というコンセプトだよ。『シューベルトが何やら始めたな』と多くの関係者やファンがピットを訪れてくれて、嬉しかったね(笑)。

──M2コンペティションの開発はすべてシューベルト・モータースポーツ独自で行ったのですか?
シューベルト:そのとおりだ。ベースとなるM2コンペティションは、M2のボディにM4のエンジンが搭載されているだけに非常に人気がある車種で、ドイツ国内でも納車に待たなければならない状態だった。正規ディーラーを8店舗経営する弊社でも、かなり長い時間待たされたからね。昨年の12月中旬にやっと納車され、クリスマス休暇を挟んで1月から本格的にマシン造りをスタートさせた。納車を待つ11~12月の間は、ディフューザーやリヤウイング、エアロパーツ等、自社のカーボンワークショップでパーツ造りに勤しんでいたよ。

──自社製作のレーシングカー作りは、かなり大変な作業ではありませんか?
シューベルト:弊社は長年BMWモータースポーツから、Z4 GT3やM6 GT3、M4 GT4の開発テストチームを任されていたからね。そのノウハウが十分にあり、特に難しいということはなかったよ。特にM4 GT4からは多くを流用している。

──M2コンペティションのパーツは、主に市販車のものが使用されているのですか?
シューベルト:ドライブシャフトやステアリング、エンジンやギヤボックスはM4 GT4のものを使用し、ソフトウェアはレース用に書き換え、エンジン性能も変えられるようにしてあるんだ。M4 GT4自体も多くの量販車用パーツを使用しているから、シューベルトのM2コンペティションも同じように、誰もが簡単に入手できるパーツが多く使用されているよ。

──今後、このM2コンペティションは一般のドライバーやチームに販売を考えているのですか?
シューベルト:そのつもりだ。今シーズン中のホモロゲーション取得を目標に努力している。可能なかぎりジェントルマンやレース初心者にも扱いやすいように作っているから、将来的にはニュルでたくさんのドライバーに乗ってもらい、楽しんで勝ってほしいと願っているよ。

──今回、VLNではM2コンペティションのデビュー戦となりました。その感想は?
シューベルト:いまのところ予想外にトラブルもなく、順調にゴールできた。チームファクトリーの至近距離にあるオッシャースレーベンと、このVLNと事前テストとで、すでに1500㎞を走り込んでいるんだ。今後改善をしていくとすれば、もう少し冷却装置を大きめにできないかと考えているところだ。さら6月のニュルブルクリンク24時間までに走り込んで、すみずみまでマシンのコンディションをチェックし、目標はニュル24時間を無事に完走することだ。

──2019年のシューベルト・モータースポーツとしての活動内容を教えてください。
シューベルト:今年はこのM2コンペティションで、VLNとニュル24時間のSP8Tクラスへ参戦する。また、BMW M6 GT3でスパ24時間、ADACのジュニアプログラムのサポートでルノー・クリオカップ、オランダのチームのサポートでヨーロッパのGT4選手権を戦うよ。その他に、ポルシェ・カレラカップ、ポルシェ・モービル1・スーパカップ、それからVLNとニュル24時間で、ニッサンGT-RニスモGT3を走らせるKCMGに、メカニックやレース機材の貸し出し等を行う。メーカーやカテゴリにこだわらず、活動の幅を広げるつもりだよ。20年目を迎えて新たに歩むシューベルト・モータースポーツの活動を応援してほしいね!