平成の次の新元号「令和」は、和書から取られた初の元号となった。菅官房長官は4月1日の会見で、典拠は万葉集巻五に収められた「太宰帥大伴の卿の宅に宴してよめる梅の花の歌三十二首 序文」の冒頭、「時に初春の令月、気淑く風和ぐ。梅は鏡前の粉を披き、蘭は珮後の香を薫らす」と明かしている。
発表を受け、万葉集に注目が集まっている。KADOKAWAは同日、角川ソフィア文庫から発行している『新版万葉集 現代語訳付き』(伊藤博)と『万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』をそれぞれ8000部、合計1万6000部重版すると決定した。同社担当者によると、2日も注文が相次いでいるため、さらなる重版も計画中だという。
アマゾンの売れ筋書籍ランキングでも、万葉集が上位に入っている。ライトノベルや写真集などが並ぶ中、2日午前時点で、上位20位に4種類の万葉集関連書籍がランクインしている。
「緻密な作業と時間がかかるこうした本に光を当ててもらえてとても嬉しい」
このうち2位は角川ソフィア文庫の『万葉集 ビギナーズ・クラシックス 日本の古典』。12位が講談社文庫の『万葉集 全訳注原文付』(中西進)、13位が学研の『まんがで読む 万葉集・古今和歌集・新古今和歌集』(吉野朋美)、18位が角川ソフィア文庫の『新版万葉集 現代語訳付き』(伊藤博)だった。
いずれも配送センターに在庫がないか一時的に在庫切れで、12位、13位、18位の書籍は「入荷時期未定」だ。
KADOKAWAの担当者によると、同社の万葉集関連書籍には「1日だけで普段の何十倍もの注文が来た」という。角川ソフィア文庫の万葉集は中高生からの定期的な需要で版を重ねてきたが、「1日で8000部やそれ以上の重版をするというのはこれまでにない」と驚いていた。
「こうした古典の本を作るのっていうのは、著者も編集者も何年もかかるものです。分量も内容の精度もそうですが、緻密な作業があって長期間必要になります。そうした本に光を当ててもらえて非常に嬉しい」
32種の歌と序文が載っているのは「新版の1巻」。ビギナーズ・クラシックスには歌の解説のみ収録されている。
紀伊国屋書店は万葉集の特設コーナーを設置予定
書店も対応に追われている。紀伊國屋書店新宿本店では、元号の典拠となった序文が載っている万葉集の書籍は1日に完売した。ネットで「この本に載っている」という情報を見て買いに来る人が多かったという。一夜明け2日になり、各出版社からはわずかに商品が入ってきた。書店では、序文が掲載されている本に「この本に載っています」とポップを付けて案内している。
「今は出版社がなけなしの在庫を提供してくださっている状態なので、すぐ売り切れると思います。安定して本が入ってくるのには1週間から10日かかると見られますので、その頃から万葉集の特設コーナーを作る予定です」
担当者によると、よく売れているのは序文が収録された書籍だけで、他の巻や歌集、古典の売れ行きは変わっていないという。古典ブームはまだ先のようだが、
「万葉集は難しいので、噛み砕いた入門書などにも目が向くかなと、周辺書籍も取り扱う予定です。また、万葉集を読んだ方が古今和歌集や竹取物語など、他の古典に興味を持つこともあるかと思うので、それらも取り揃えたいと思います」
と話していた。