「忙しいとは、心を亡くすと書きます」とかいうセリフがある。それはその通りだ。仕事で多忙を極めると、何かと失うものが多い。健康とか、プライベートの時間とかね。
ただ、逆にあまりに仕事が暇で、しかもそれで食っていけるとなると、それはそれで問題も多いようだ。いやはや人生、バランスを取るのも難しい。(文:松本ミゾレ)
「電話1本取っただけ」「つまらんわ どうしてくれようか」
先日2ちゃんねるで「ワイ、ガチの社内ニート 今日もYouTube見て1日が終わりそう」なるスレッドを発見した。出社してもすることがほとんどなく、手持ち無沙汰のまま帰るまでの長い時間を過ごす労働者の話である。
このスレ主、スレッドを立てた日には「電話1本取っただけ」、「くっそつまらんわ どうしてくれようか」と書き込んでいた。そりゃそうだろう。スレッドのタイトルにあるように就業中、動画を観ながら過ごしていたようだけど、これも実際なかなかの苦痛じゃないだろうか。特にすごく観たい訳でもないのに、惰性で観ている可能性も高いし……。
彼は中小のSEで、手取りは25万程度。まあ、年齢によるけど、今の時代ならそこまで悪くない給与状況ではないだろうか。まさに活かさず殺さずの報酬帯というか。
厄介なのは、あまりに暇で、しかも給与がもう少し低ければ転職にも前向きになるのに、そうではないという点だ。月収25ぐらいだと、まあ贅沢しなければちゃんと食べてはいける。この絶妙の25万という数字が、彼を日々の退屈地獄から脱却する意欲を奪っているように感じる。
「今日はKindleで漫画読んどった」
実はこのスレッドをこうして引用してみたいと思ったのには理由がある。僕の知人が一時期ビルのメンテナンス管理をやっていたんだけど、まぁ死ぬほど暇で暇でしょうがなかったそうだ。一応ビルのパトロールに、毎朝と毎夕の清掃をすることは任されていたものの、ざっくばらんに書けばそんなのあっという間に終わる。
待機室はあるが狭いし、テレビもなかったし、コンセントもないのでスマホを充電しながら動画も観れない。それを朝から晩までやっていると、一月30万。この報酬は知人にとって魅力的かつ、前述のスレ主と同じく、暇地獄から抜け出せない呪縛として長く機能していたそうだ。
ただ彼の場合、ほどなくして子供ができたために結婚することとなり、まとまった費用をもう少し稼ぐために転職することを強いられた。結果的に暇地獄からは脱却できたが「もしデキ婚してなかったら、今もあの狭い待機室にいたかも」と思うことも多いという。
さて、スレッドの話に戻ると、同じような社内ニートって案外他にもいるようだ。いくつかその事例を書き込みから引用の元、紹介したい。
「トイレでスマホの毎日。額面35万の仕事だから楽してる」
「今日はFF9の攻略サイトばっかみてたわ」「焦燥感ヤバイ」
「社内ニートはニートよりも辛い」
「4月から転勤で引き継ぎ済ましたから社内ニートやわ 今日はKindleで漫画読んどった」
暇も持て余すようになると、これがなかなかキツい毒となる。もちろん忙しいばかりの職場も大変だけど。