私が実施している管理職向け研修で、最近の若手に対する印象を受講生に聞くと、多くの方から次のような声が挙がります。
「飲みに誘っても、ついてこない」
「指示待ちで、積極性がない」
「上昇志向が低くて、欲がない」
今は"ゆとり"を通り越して"さとり"世代なんて呼ばれたりもしますが、こうした若者とどうコミュニケーションをとっていいかわからない、という管理職が多いです。一体どうすればいいのでしょうか。(文:働きがい創造研究所社長 田岡英明)
「仕事を通して社会へ貢献したい」「顧客の役に立ちたい」という欲求は強い
管理職の上記のような印象が出てくるのはなぜなのでしょうか? 若手社会人にインタビューを重ねる中で見えてきた私自身の考えは以下の通りです。
実は、今の若者も本当は貢献心や好奇心が強く、学習意欲も高い人が多いです。しかし、入社前に仕事に抱いていた思いへのギャップがあまりに大きく、すぐに諦め感に支配されてしまうようです。
なぜなら、今の若い人は成熟社会の中で育っています。それゆえ物欲以上に精神的な満足を求めており、「仕事を通して社会へ貢献したい」とか「お客様の役に立っていることを感じたい」といった思いを強く持っています。
私が1年間通っていた政策学校"一新塾"へも若手社会人の参加が非常に増えています。一新塾では、社会の問題に対して、受講生がチームを作り、その問題を解決していくプロジェクトを推進していきます。「子供の貧困問題」や「地方創生」といった課題をどうすればいいのか、ということを積極的に考える若者が増えているのです。ここにも最近の若者の社会貢献欲がうかがえます。
そのような若手が会社に入って現場に配属され、何のための仕事かわからないような作業をやらされる中で、すぐに諦め感にさいなまれるのは想像に難くないでしょう。
彼らは、本当は出世したくないわけではない、ということも感じました。ただ、ポストや報酬だけでは、強く動機付けされないため、管理職世代からすると上昇志向が低いな~と見えるようです。
今どきの若手は仕事の意義に飢えています。なので、ポストや報酬よりもやりがいや働きがいを求めているのです。
飲み会については、日本能率協会が興味深いデータを出しています。上司との飲み会に参加したい、という若手は入社当初は約70%にもなるのですが、ただ、この割合は年を経るごとに下がっていきます。残念ながら、上司と飲めば飲むほど「無駄な飲み会だな……」と、飲み会から遠ざかっているようです(笑)。飲み会にも学びのある工夫が求められます。
強みを伸ばしながら小さな成功体験を積ませていく
そんな本音を持つ今どきの若者を組織の戦力に育てていくためには、次の3つのポイントが必要です。
(1)仕事を渡すときに、目的と手段をセットで語る
仕事の意義に飢えている若者に対しては、目の前の仕事が"社会に価値を提供していることに繋がっているんだ"ということを丁寧に説明していく必要があります。組織に存在する仕事に無駄な仕事は一つもないはずです。そこをしっかり伝えていきましょう。
(2)良いところを見つけて伸ばす
若手を現在の自分と比べると、ダメなところばかりが目につきます。ダイバーシティ時代のマネジメントの基本は強みのマネジメントです。ある一定レベルまではしっかり育てる必要がありますが、そこから先は若手一人ひとりの強みに焦点を当て、仕事を通して育てていきましょう。
(3)小さな成功体験を積ませる
仕事を通して育てていく基本は、成功体験を数多く経験させることです。人材育成が上手な上司は仕事を小さく刻み、その一つひとつを確実に達成させ、成功体験の数を増やしていきます。大きな仕事を任せ、やり遂げさせるといった方法もありますが、数多くの成功体験を経験させた方が育成効果が高いと言われます。
今どきの若手の言動の裏には、上司が思いもしなかったピュアな動機が隠されていることが多いようです。上司としては若手の本音を引き出すコミュニケーションを心がけ、若手が活躍できる現場を作っていってください!
【著者プロフィール】田岡 英明
働きがい創造研究所 取締役社長/Feel Works エグゼクティブコンサルタント
1968年、東京都出身。1992年に山之内製薬(現在のアステラス製薬)入社。全社最年少のリーダーとして年上から女性まで多様な部下のマネジメントに携わる。傾聴面談を主体としたマネジメント手法により、組織の成果拡大を達成する。2014年に株式会社FeelWorks入社し、企業の管理職向けのマネジメント研修や、若手・中堅向けのマインドアップ研修などに携わる。2017年に株式会社働きがい創造研究所を設立し、取締役社長に就任。