バーレーンGPで見せたフェラーリのエンジンパワーに、ライバルたちは困惑している。
予選3番手のルイス・ハミルトンがフェラーリ勢に0.3秒以上の差をつけられたことについて、メルセデスのトト・ウォルフ(メルセデス・ベンツ・モータースポーツ責任者)は、「彼らはストレートでわれわれよりコンマ5秒速かった。それが単にパワーによるものなのか、あるいはダウンフォースによるものなのか、われわれは分析しなければならない」と土曜日の予選後に語った。
ホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターは、興味深い発言をした。
「いま分析中ですが、われわれもフェラーリに対して、ストレートでタイムを失っています。ただ、それはワークスのフェラーリだけでなく、フェラーリのパワーユニットを搭載したほかのフェラーリ・ユーザーについても同様です。フェラーリ勢全体とホンダ勢4台を比較しています。ストレートでどれくらい失っているかだけでなく、コーナーではどういう状況なのかを分析して、パッケージとしてどうすべきかをチームと話し合っていこうと思っています」
田辺TDが指摘するように、今回のバーレーンGP予選ではトップ10のうち5人がフェラーリのパワーユニット(PU/エンジン)を搭載していた。そのため、バーレーンGPのパドックでは「フェラーリはオーストラリアGPでパワーユニットに何らかの問題を抱えていて、その性能を十分に発揮していなかった」という噂が広がった。
例えば、オーストラリアGPの決勝レースでセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)にオーバーテイクされたとき、ベッテルは明らかにパワー不足だったように見受けられた。というのも、もう1台のレッドブル・ホンダを駆るピエール・ガスリーは、同じホンダPUを搭載するダニール・クビアト(トロロッソ)を抜くことができなかったからだ。
つまり、フェラーリは、オーストラリアGPのレース序盤以外でエンジンのポテンシャルをフルに発揮していなかったと考えられる。
ドイツのモータースポーツ誌は、冷却に関する問題を指摘している。
「想定よりも外気温が3~4度低くなったために、ターボが冷えすぎ、ブースト圧の上昇に問題が発生して、不要な燃焼を行なっていたのではないか」という説だ。
いったい、どういうことなのか? あるPUマニュファラクチャーのエンジニアに確認すると、次のように解説した。
「ターボを含め、パワーユニットは冷えることに関してデメリットはない。ただし、レギュレーションでインタークーラーからの吸気温度は外気温プラス10℃以上というふうに決められている。冷却性能というのはボティワークの開口部の面積で変えるのだが、それは空力性能にも関係するため、予選後は変更できない」
「フェラーリの温度設定が、何らかの理由で想定より外れて、インタークーラーからの吸気温度が外気温のプラス10℃以下になってしまったのではないか。そこでフェラーリはターボに無駄な仕事させることで冷却性能を意図的に悪くして、インタークーラーからの吸気温度を外気温プラス10℃以上に保っていたのではないか。そうなると、当然、燃費は悪くなり、レース中はいつも以上にリフト・アンド・コーストしていた可能性がある」
バーレーンGPで、フェラーリはオーストラリアGPとは異なるエンジンカウルを使用していた。それはオーストラリアGPのものよりも明らかに後方の開口部が絞られたものだった。