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『名探偵・明智小五郎』伊藤淳史が語る、妻役・岸井ゆきのから受けた影響 「熱量が高められた」

2019年03月31日 14:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 3月30日と31日、2夜連続スペシャルドラマ『名探偵・明智小五郎』(テレビ朝日系)が放送される。


 本作は、江戸川乱歩による原作に登場する神出鬼没の“怪人二十面相”を世界的ハッカー集団“ファントム20”に置き換え、ネット犯罪の脅威が忍び寄る現代日本を舞台にしたオリジナルドラマ。第1夜では“警察のデータベース流出から巻き起こる犯罪者連続殺人事件”、第2夜では“巨大病院を襲う絶体絶命のサイバージャック”に焦点を当て、サイバー犯罪に挑んでいく。名探偵・明智小五郎を演じるのは西島秀俊。また、明智とタッグを組む、原作の少年探偵団の小林少年を、警視庁刑事部“サイバー捜査支援室”の小林捜査官として、伊藤淳史が演じる。その他にも、石田ゆり子、岸井ゆきの、香川照之ら豪華キャストが揃う。


 今回リアルサウンド映画部では、伊藤淳史にインタビュー。これまでにも数多くの作品で共演してきた西島とのタッグや、サイバー犯罪をテーマとしたストーリーについて話してもらった。


■「視聴者の人に近いナビゲーター的な役割」


ーー江戸川乱歩の原作からは大胆にアレンジされている本作ですが、脚本を読んだ時の印象は?


伊藤淳史(以下、伊藤):台本を読んだ時に、純粋に面白い作品になりそうだなと思いました。現代版ならではのエンターテインメントで、今だからこそ作られるべき作品、楽しめる作品になっているなと。今回出演できることになり本当に光栄でした。


ーー確かにサイバー犯罪は現代だからこそより身近に感じられるテーマですね。


伊藤:僕自身も日々、人と人とが密に関わらなくてもいい社会になりつつあると感じています。会議もスカイプとかでできますし、そこに便利さを感じる反面、寂しさを感じることもあります。犯罪に関しても、そういう世の中になっていくほど厄介で、心のなさがどんどん見えてくるようにも思いますね。この作品も、そういう要素を含んではいるのですが、でもやっぱり「人間ドラマ」であるところをすごく大切にしています。それが成立するのは、やっぱり監督が役柄に魂を注ぎ込んでくれているからであり、人間ドラマとしての骨格がしっかりしているからこそ、サイバー犯罪をテーマにする意味や面白さが浮き彫りになっていると思います。


ーー伊藤さんが演じる小林は、捜査官の一人でありながら、明智事務所の人々とも関わっていくという役柄です。


伊藤:終始出ずっぱりではあるのですが、演技においては「受けの芝居」が多かったかもしれません。振り回されることが多かったというか(笑)。だから、視聴者の人が受ける感覚に近いのかもしれませんね。明智事務所に入った時の驚きや、明智小五郎という人間を前にした時の衝撃とか。小林はサイバー犯罪の知識が長けた人物ではあるのですが、心や気持ち、感情の面からアプローチしていくタイプで、視聴者の人に近いナビゲーター的な役割もあるのかなと。


ーー『チーム・バチスタ』シリーズなどでも、伊藤さんは個性的なキャラクターの相棒的ポジションでしたよね。


伊藤:言われてみればそうですね。僕が演じる役は、台本を読んだ時に「この人いい人だな、素敵な人だな」と客観的に思えることが多いんですよね。結果論ではありますが、そういった視聴者の拠り所になるような、同じ目線で見れる役は多いかもしれません。


ーー明智小五郎は、今回西島秀俊さんが演じています。お二人はこれまでにいろいろな作品で共演してきましたが、共演が多いからこそ困ったりすることはありますか?


伊藤:お互い笑っちゃうんですよ(笑)。誰もが笑ってしまうシーンだったら現場的にも笑いになるのでよいのですが、監督たちが見ていて「なんでこの2人笑っちゃってるの?」というようなものもあって。さすがに何とかしなきゃいけない(笑)。


ーーそれはシリアスなシーンでも?


伊藤:シリアスであればシリアスなほど面白くなっちゃうんですよ、僕のダメなところですね(笑)。限界まではお芝居しているふうにしてるんですけど。


同席していた長谷川晴彦プロデューサー:2人とも笑い始めるとだんだん顔が下の方に向いていってしまうんです(笑)。


伊藤:スタッフさんから「こいつら何なんだ?」と思われているかも(笑)。


■「岸井ゆきのさんは香川照之さんみたいになれるかも」


ーー明智と小林は、最初からバディなわけではなく、徐々に信頼関係が築かれていきますね。


伊藤:西島さんとは普段も仲良く、一緒にお芝居もさせていただき、休憩も楽しい、という素敵な付き合いをさせていただいています。演技において、「コンビ感」を出すというのはなかなか難しいのですが、そういったこれまでの関係性は今回かなりプラスに働いていると思います。


ーー香川照之さん、石田ゆり子さん、生瀬勝久さんと、これまで共演歴のある方が多い現場だったのでは?


伊藤:大御所揃いといいますか、かなり重鎮感の強い現場でしたね。ゆり子さんは、『MOZU』など同じ作品には出ているのですが、実は同じシーンはこれまでなかったんです。だから今回初めてお芝居させていただきましたが、ゆり子さんの魅力にやられるというか、芝居でもそれ以外の時でも、とても魅力的な方でした。また、香川さんとも何度もご一緒させていただいていますが、圧がすごい(笑)。芝居のエネルギーが凄まじい方です。香川さんは全部わかっていらっしゃるから、撮影もスピードアップするんですよ。いろんな時間が削ぎ落とされていって、いいものを短時間で作ることができる。今回も巨大な爪痕を残して帰られていきました。でも、あれは見習っちゃいけないなと(笑)。あんな偉大な人には絶対になれないので、自分とは別物として捉えています。


ーー妻役の岸井ゆきのさんとは、今回が初共演ですね。


伊藤:岸井さんは香川さんみたいになれるんじゃないかなと思いました。年齢的には岸井さんは27歳と年は離れているのですが、持っているエネルギーがすごいなと驚きました。こっちも頑張って押していかないと、飛ばされるんじゃないかと思うくらい。表情ひとつとっても引き込まれるし、ファンになっちゃうくらいです。岸井さんとのシーンはクランクインの日で、2話分の小林家の撮影を全部その1日で行ったのですが、準備運動せずにいきなり全力疾走するような感覚でしたね。あれは初日にやることじゃないです(笑)。


ーー小林家もなかなか個性派揃いですよね。


伊藤:事件でも振り回され、家庭でも振り回されて(笑)。でも、岸井さんのおかげで、この作品のベースとなる熱量が高められたというか、スイッチが入った気がします。(取材・文=若田悠希)