2019年03月31日 11:11 弁護士ドットコム
今すぐに退職したいが、雇用契約書には退職の3カ月前までに申告と記載があるーー。退職に関する相談が弁護士ドットコムに寄せられた。
【関連記事:「田中の対応最悪」社員名指しの「お客様の声」、そのまま社内に貼りだし公開処刑】
投稿者は上司との折り合いが悪く、転職を考えているそう。希望の会社の面接に進み、転職のめども立ったものの、今の会社の雇用契約書には「自己都合で契約を解除する場合は、少なくとも3カ月前迄に文書で申し出なければならない」とあったという。
こうした場合、雇用契約書の条項が最優先されるのだろうか。
「労働者には、退職の自由が認められています。これは、憲法22条の職業選択の自由、憲法18条の奴隷的拘束の禁止から導かれているものです」
労働問題にくわしい徳田隆裕弁護士はそう話す。退職の自由とはどういうことだろうか。
「会社に対して辞める理由を伝える必要もなく、会社から辞めることの承諾をもらう必要もなく、労働者は自由に会社を辞めることができます。
正社員の場合、退職の申し出をしてから、2週間が経過すれば、いつでも辞めることができます(民法627条1項)。そして6カ月以上継続勤務しており、全労働日の8割以上出勤していれば、10日間の年次有給休暇が権利として与えられます(労働基準法39条1項)。
そのため、平日5日勤務で土日が休みの週休二日制の会社に勤務している労働者であれば、退職の申し出をした後、平日10日間、年次有給休暇を取得すれば、会社に出勤することなく、2週間が経過するので、すぐに会社を辞めることができるのです」
雇用契約書などに「3カ月前までに」などと書かれていた場合はどうなるのか。
「民法627条1項で予告期間が2週間とされているのを、雇用契約書や就業規則で予告期間を3カ月に延長できるのかが問題となります。
この問題を検討するにあたり、高野メリヤス事件(東京地裁昭和51年10月29日判決)が参考になります。この判決は、次のように判断しています。
『法は、労働者が労働契約から脱することを欲する場合にこれを制限する手段となりうるものを極力排除して労働者の解約の自由を保障しようとしているものとみられ、このような観点からみるときは、民法第627条の予告期間は、使用者のためにはこれを延長できないものと解するのが相当である』
ようするに、労働者の退職の自由を保障するために、民法627条1項の2週間の予告期間を、会社が有利になるように延長することはできないということです。
そのため、相談者の方は、会社に対して、退職届を提出して、2週間が経過すれば退職することができ、3カ月前に文書で退職を申し出る必要はないことになります」
(弁護士ドットコムニュース)
【取材協力弁護士】
徳田 隆裕(とくだ・たかひろ)弁護士
日本労働弁護団、北越労働弁護団、過労死弁護団全国連絡協議会、ブラック企業被害対策弁護団に所属し、労働者側の労働事件を重点的に取り扱っています。「未払残業・労災・解雇から働く人を守る金沢の弁護士ブログ」(https://www.kanazawagoudoulaw.com/tokuda_blog)を開設して、毎日、労働問題について情報発信をしています。
事務所名:弁護士法人金沢合同法律事務所
事務所URL:https://www.kanazawagoudoulaw.com/