実労働時間に関係なく、労使間で定めた時間の分を働いたとみなす「裁量労働制」。研究職やソフトウェア開発、マスコミなどで取り入れられている。時間管理も個人に委ねられるのが本来の姿だが、実際には会社が出退勤時間を管理するなど、「名ばかり裁量労働制」もまかり通っている。
企業口コミサイト「キャリコネ」に寄せられた、裁量労働制の口コミを見てみよう。
「子どもの迎えで早めに帰る社員も多い」「メリハリつけて働ける」
「MRに関しては裁量労働制となるため、自分で日々の業務をスケジューリングしながらこなしていくことになる。予定のある日は早めに帰ることもできるため、メリハリをつけて働くことができる」(MR、20代前半、男性、正社員、年収500万円)
「社風は、かなり自由。入社3年目から裁量労働制、コアタイムなし。アウトプットさえ出していれば、何時に出社しても良いし、何時に帰っても良い」(経営コンサルタント、20代後半、男性、正社員、年収850万円)
「裁量労働制で個人によって調整しやすいです。子どもの迎えなどで早めに帰る社員も多く、近年は遠隔で働けるフレキシブルワークなどの取り組みも積極的に進めています」(研究開発、30代前半、男性、正社員、年収850万円)
裁量労働制をうまく利用し、個人の裁量で仕事ができている人の口コミが寄せられた。裁量労働制の場合、業務遂行スケジュールを自分で決めてこなさなければならず、責任は重い。しかしその分、仕事さえきちんとしていれば勤務スタイルを自由に決めることができる。プライベートの時間を充実させ、ゆとりある生活を送ることも可能だ。
「謎の定時時間が決まっており、フレックスでもない。残業の出ないタダ働きシステム」
裁量労働制がうまく機能している企業がある一方で、都合よく使われているケースもある。
「今話題の、いわゆる裁量のない裁量労働制。残業代は出ず結局サービス残業。裁量労働制と言っておきながら仕事を自分で決定することが出来ず、さらに謎の定時時間が決まっており、フレックスにもなっていない。残業の出ないタダ働きシステム」(その他、20代後半、女性、正社員、年収300万円)
「突然、会社の一方的な判断で裁量労働制に変更された。見なし残業時間を超えた分の残業代が大きく減った。一方で、裁量は1ミリも変わらなかった」(その他、20代後半、女性、正社員、年収400万円)
「裁量労働制を採用しているが、朝は8時30分出社を求められる。1日15分勤務すれば出勤したとみなすと言いながら、13時に出社すると半日休暇を申請させられる。制度の悪用としか言えない」(プロジェクトリーダー、50代前半、男性、正社員、年収700万円)
本来は個人の裁量で出勤時間を決めることができる裁量労働制だが、始業時間や定時が決まっており、勤務時間を自由に決められないという口コミが見られた。残業代が出ない、減ったという声もある。
決められた時間を拘束されるのに、給与体系だけ裁量労働制を取り入れ、「残業代を出さなくても良い」という状態になっている。本来は裁量労働制でも法定労働時間(1日8時間、週40時間)を超えて働いた場合、企業は割増賃金を支払う必要があるが、「支払わなくて良い」と誤解している企業も存在する。
一歩間違えれば労働者にとって過酷な条件になってしまう「裁量労働制」だからこそ、企業側の理解と努力が求められる。導入する企業は、業務内容がそもそも裁量労働に合っているかを吟味し、個人の管理、責任で業務が回るか考える必要がある。また、ITを利用し個人の動きや勤務状況、成果などを社内で共有できるシステムを作るなど、裁量労働を会社全体で運用していく仕組みづくりも重要だ。うまく機能している企業を参考に、効率的な働き方を模索すべきだろう。