2014年から5連覇中のメルセデスに所属する昨年の王者ルイス・ハミルトンが、F1第2戦バーレーンGPで語った発言が話題を集めている。
「今年のレッドブルが昨年よりはるかに優れたパワーユニット(PU/エンジン)を持っていることは間違いない。ホンダのエンジン性能が僕たちにかなり迫ってきてるようだ。その差はおそろく10馬力以内だと思う」
2018年のシーズン中盤でのホンダのパワーユニットの性能は、MGU-K(運動エネルギー回生システム)の回生エネルギーを合算した予選におけるピークパワーの推測数値で、約880馬力と言われていた。昨年のメルセデスPUの馬力が約940馬力だったから、その差は約60馬力あった。2019年も昨年と同様、ICE(内燃機関)の使用制限は年間3基となっていることを考えるとメルセデスPUの性能が下がることは考えられないので、ホンダPUの性能が大幅に向上したことは間違いない。
そこでこの件をホンダの田辺豊治F1テクニカルディレクターに金曜日に確認した。すると、田辺TDはこう回答した。
「参考にさせていただきます。でも、(馬力の測定には)いろんな条件があるので、正直わからない。そんなに近いですかね。ハミルトンに聞いてきてください」
そこでメルセデスのホスピタリティハウスに行ったが、ハミルトンがいなかったので、チームマネージャーのロン・メドウに聞いてみた。
■パワーユニットの性能を測る機会として重要な予選Q3
「パワーユニットの性能を計測するのは予選Q3なんだ。というのも、レースでは渋滞もあるし、タイヤをマネージメントしなければならないから、われわれはマキシマムパワーでは走っていない。エンジンの馬力を推し量るのは、予選の時。しかも、Q3だ。トップチームはQ1では通常モードでアタックし、Q2で少しパワーを上げたモードにして、フルパワーで走るのがQ3だからだ」
「しかも、われわれはその数値をGPSから算出するため、ドライバーが完璧にアタックすることを前提にしている。そのため、2台の平均値で測るようにしている。ところが、メルボルンではレッドブルはガスリーがQ1落ちし、フェラーリはQ3でルクレールがミスをしているから、参考にならなくなった。だから、正確な数値はまだ把握していない」
パワーユニットの性能というのは、車体の空力のセッティングやタイヤのグリップ力など、いろんな状況によって変わるため、正確な数値を算出するのは難しい。例えば、オーストラリアGPでルイスがマックス(・フェルスタッペン)に迫られたとき、ルイスはフロアにダメージを負っていた。
ただし、メドウはホンダPUの性能が上がっていることは、疑いようがないと断言する。
「正確な数値はわからないものの、50馬力も違っていたら、あのようなバトルはできていないと思う。10馬力かどうかはわからないが、かなり接近していることは間違いない」
バーレーンGPの初日のフリー走行で最高速をマークしたのは、ホンダPUを搭載するトロロッソのアレクサンダー・アルボンだった。バーレーンGPの予選メルセデス、フェラーリ、ホンダがアタックしたとき、その差がさらに縮まるのか、開くのか。Q3での予選モードに注目したい。