細川徹監督の新作映画『ヒキタさん! ご懐妊ですよ』が10月から全国で公開される。
同作は作家のヒキタクニオが自身の体験をもとに「男性不妊」について執筆した同名エッセイを映画化するもの。子供は作らずに夫婦2人だけで生きていくと決めていたヒキタ夫妻が「ヒキタさんの子どもに会いたい」という妻の一言をきっかけに夫婦で妊活を始めるも結果が出ず、検査で夫のヒキタに原因があると判明したことから、悲喜こもごもの夫婦の妊活の日々が始まる、というあらすじだ。
二回り近く年の離れた妻・サチと暮らす49歳の作家・ヒキタクニオ役を演じるのは、同作が初主演映画となる松重豊。妻のサチ役を北川景子が演じる。さらにヒキタの担当編集者・杉浦役に濱田岳、サチの厳格な父・和夫役に伊東四朗、ヒキタ夫妻の主治医・桑島に山中崇がキャスティングされている。撮影は昨年4月にクランクインし、約1か月でクランクアップを迎えた。
主人公・ヒキタクニオ役を演じる松重豊は脚本を読んだ感想について「妊活モノというのは全く想定外の出演依頼でして、ひとくちに子作りと言っても、大変な苦労があるものだなと、読んではじめて知らされることばかりでした」と語っているほか、北川景子と夫婦役を演じたことについて「この年齢差をどう成立させなきゃいけないのか、そればかり考えて現場に入りました。でもそこはさすが北川さん、実に自然な夫婦感を醸し出してくれました。思えば私にとって、夢のようなひとときでした」と明かしている。
北川景子は松重との共演について「松重さんとは何度も共演させていただいているので、信頼関係が出来上がっている状態で演じられたのは本当に良かったと思います。クランクインしてすぐに、自然と夫婦になれたような気がしました」とコメント。また「私はこの作品に取り組んで不妊治療について詳しく知ったのですが、夫婦の心の絆と、困難にぶつかっても乗り越える強さがなければ到底できない、大変なことだと知りました。私は経験がありませんでしたが、サチさんの不妊治療に取り組む姿勢をリアルに表現したいと思いました」と撮影を振り返っている。
細川徹監督は完成した作品について「子供が生まれるというのは当たり前のことのようでもありますが、その当たり前が実は奇跡であり、ドラマチックなことなのだと思います。テーマは、男の不妊治療ですが、子供がいる、いない、結婚している、していないに関わらず、夫婦が家族に成っていく物語は男女共多くの世代に受け止めていただける作品になったと思います」と述べている。
なお同作は4月に開催される『第9回北京国際映画祭』のコンペティション部門に正式出品されることが決定。日本公開に先駆けてワールドプレミアを迎える。
■松重豊のコメント
・脚本を読んで
妊活モノというのは全く想定外の出演依頼でして、ひとくちに子作りと言っても、大変な苦労があるものだなと、読んではじめて知らされることばかりでした。
・ヒキタを演じてみて
北川景子さんが奥さん役でしたので、この年齢差をどう成立させなきゃいけないのか、そればかり考えて現場に入りました。でもそこはさすが北川さん、実に自然な夫婦感を醸し出してくれました。思えば私にとって、夢のようなひとときでした。
・撮影や共演者について
北川さんはじめ、伊東四朗さん濱田岳くん、じつにナチュラルにこの世界を包んでくださる共演者に囲まれ、ストレスを微塵も感じないスタッフワークと共に、クランクアップが恨めしいほどでした。
・『北京国際映画祭』コンペティション部門への正式出品が決まって
こういう華やかな舞台は自分には無縁だと思っていました。
北京には美味しいカフェがあって、そこに繰り出してスイーツを食べるのが今から楽しみです。
■北川景子のコメント
・脚本を読んで
不妊治療をテーマにしながらもコメディタッチで描かれていて面白かったです。
弱音を吐かず、懸命に夫を支えるサチさんの姿は同じ女性としても感銘を受けました。
ヒキタさんとサチさんが歩んできた道のりをいかにリアルに、ユーモアたっぷりに表現できるかが鍵になると思いました。
・サチを演じてみて
ヒキタさんとサチさんはふた回りほど年の離れた夫婦ですが、松重さんとは何度も共演させていただいているので、信頼関係が出来上がっている状態で演じられたのは本当に良かったと思います。
クランクインしてすぐに、自然と夫婦になれたような気がしました。
私はこの作品に取り組んで不妊治療について詳しく知ったのですが、夫婦の心の絆と、困難にぶつかっても乗り越える強さがなければ到底できない、大変なことだと知りました。私は経験がありませんでしたが、サチさんの不妊治療に取り組む姿勢をリアルに表現したいと思いました。
とても難しかったですが、この作品がたくさんの方に届いてほしいと思います。
・撮影や共演者について
撮影はほぼ一年前。もう懐かしいです。松重さんと毎日朝から晩まで一緒にいて、本当に家族のような錯覚さえ覚えました。
濱田岳くんもよく知った方なので、アットホームな現場でした。
桜のシーンが印象的で、天候にも桜にも恵まれ、とても良いシーンになりました。
楽しみにしていてください。
■細川徹監督のコメント
・脚本執筆や撮影について
男の不妊治療の原作を映画化しないかというお話をいただき、興味を持ちました。原作を読んで益々関心が高まり、不妊治療のセミナーに通ったり、経験者や専門医の方々に取材を重ねる度に驚き、感動し、命を紡ぐ話を丁寧に書きあげようと努めました。原作はヒキタさんご自身の体験を書いたノンフィクションですが、精子の強化対策にがんばるヒキタさんの姿はコミカルながらも、感動的でした。原作と取材で出会った人々との出会いに感動したところを、より感動できるように、笑ったところを、より笑えるように、ということを心がけて、脚本を書き、撮影しました。
・キャストについて
松重さんとの顔合わせの時も、撮影が始まる前の衣装合わせの時も、松重さんは自分たちが夫婦に見えるかを気にされていましたが、二人が揃った初日の夫婦のかけあいがとても自然体な夫婦になっており、さすがでした。北川さんは、ドラマではキャラクターの濃い役を多くやられているので、ごく普通の女性の役は珍しいと思いますが、その自然な演技がとても魅力的で、新しい北川さんが発見できるかと思います。お二人のお芝居を見ているだけで楽しかったので、奇をてらわずに、まっすぐに撮るということだけを考えました。いい雰囲気の中で撮影できましたが、北川さんが松重さんより早くクランクアップした翌日の朝、スタッフ一同北川ロスになり、穏やかだった現場で初めて、怒号が飛んだのもいい思い出です。
・完成作品について
子供が生まれるというのは当たり前のことのようでもありますが、その当たり前が実は奇跡であり、ドラマチックなことなのだと思います。テーマは、男の不妊治療ですが、子供がいる、いない、結婚している、していないに関わらず、夫婦が家族に成っていく物語は男女共多くの世代に受け止めていただける作品になったと思います。
■前田浩子プロデューサーのコメント
・作品の成り立ちについて
テレビニュースの「男にも更年期障害はある」という特集が発端でした。同時に不妊の原因が男性側にあることが多いという事実に驚いている時に本作の原作エッセイを持ち込まれました。リサーチして知った、深刻な状況と共に、これは命を紡ぐ夫婦が本当の家族の話になっていくというラブストーリーであると確信し、企画がスタートしました。
・キャスティングについて
かなり年下の妻を持つ中年男が女性客にいやらしく映らない人、どこか少年の、いや子供のような可愛らしさのある大人の男。その条件を満たしているのは松重豊さんしかいないと監督と意見が合致しました。そして、その夫を支える妻は地に根の張ったような強さを持ち合わせながら優しさを秘めたイメージで、これもまた北川景子さん以外には考えられませんでした。濱田さんはそのチャーミングな個性が主人公とうまくアンサンブルを醸しだす相方として完璧だと思えたこと、山中崇さんは不妊治療専門医として無表情と温情のある両面を表現できると期待を込めて、そして、伊東四朗さんは監督と私が一度仕事がしたい!と憧れる俳優さんだったからに他なりませんでした。
・完成作品について
作品ごとに進化してきた細川監督はこの素晴らしいキャストを迎えて、ここにきて、今までになかった抒情性を持った、泣いて、笑って、胸が熱くなる作品に仕立てるに至りました。不妊治療をネガティブに捉えず、チャレンジする姿は愛おしさに満ちて、ラブストーリーとして観る人の心を打つと信じて止みません。