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「ダンメモ×デアラ」奇跡のコラボが生まれた舞台裏は? 大森藤ノ先生&橘公司先生が明かす【インタビュー】

2019年03月28日 14:22  アニメ!アニメ!

アニメ!アニメ!

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ライトノベル『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか』を原作とするスマートフォン向けRPG『ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか~メモリア・フレーゼ~(ダンメモ)』が、現在アニメ第3期を放送中の『デート・ア・ライブ』とクロスオーバーイベントを展開。3月28日11時00分から4月18日14時59分にかけて開催される。

「大冒険譚 剣姫カタストロフ」と題された本イベントは、『デート・ア・ライブ』橘公司先生×『ダンまち』大森藤ノ先生のW原案・共同執筆ということをはじめ、PVなどで判明した情報だけでも、ただのコラボイベントの枠に収まらない、濃密な内容であることが予想される。


この豪華なクロスオーバーはいかにして実現したのか?
前半・後半の2部にわたって両原作者にお話を聞き、この前半では本イベントまで至る経緯のエピソードや、お互いの作品に作家としての視点から感じた魅力を語っていただいた。
[取材・構成=山田幸彦]

■悪巧みから実現した濃密なストーリー
――今回の「剣姫カタストロフ」は豪華クロスオーバーと言っていい内容に仕上がっているというお話を耳にしたのですが、どのような経緯で今回のイベントは実現したのでしょうか?


前から一緒にやりたいね、という話だけはしていたんです。最初はいつでしたっけ?

大森
2018年に『キノの旅』のコラボ「冒険譚"迷宮の国と異邦の旅人"」が決まったときに、橘先生も機会があれば……ということは言っていて。
そんな話をしていたら実現できそうなタイミングが来たという感じです。


ちょうど『デート・ア・ライブ III』も決まっていましたからね。そして、実際にクロスオーバーが決定したと大森さんから聞いたときから、ふたりの間で悪巧みが始まりました。

――悪巧みとは?


最初にプロットをふたりで書いておいて、「こんな感じのことを考えたんですが……」と開発会社のWFSさんに先出ししたら、そのまま作っていただけないかなと(笑)。

大森
『キノの旅』のときもそうだったんですけど、今回も作家のわがままじゃないですが、エゴを出させてもらいましたね。申し訳ないと思いつつ、やりたいものをやらせていただいたという。

――初期からおふたりだけで打ち合わせを重ねられていたのですね。

大森
『キノの旅』のときに時雨沢恵一先生とガッツリ打ち合わせができたので、またこういう流れでクロスオーバーを進めたいと思ったんです。今回も橘先生に快諾していただいて……新宿にけっこうな回数集まりましたよね。


いっときは編集さんや家族より会っているんじゃないかというくらいの頻度で(笑)。

大森
さらに電話でも毎回2時間くらい話してて「メールができない(携帯を持ってない)中学生なのかな?」というくらいの頻度で(笑)。


僕が話したがりなのがいけないんです。編集さんとの電話も長くなりがちなので(笑)。

――「剣姫カタストロフ」というサブタイトルはどのような経緯で決まったのでしょうか?

大森
執筆を進めているときに「デート・ア・ライブにちなんで良いサブタイトルをつけたい!」と橘先生と話していたんです。十香デッドエンドとかですね。
今回アイズが重要なキャラなので「剣姫○○」という形にはしたいなと思っていたんですが、「何かいい案はないですかね?」と橘先生に聞いたら、カタストロフと言ってくれて。
「カタストロフィですね?」と言ったら「カタストロフ!」と(笑)。




そこは語感重視!(笑)。
→次のページ:ど直球なラノベ要素を持つ2作

■ど直球なラノベ要素を持つ2作
――『ダンまち』はファンタジー、『デート』はSFテイストな作品ということで、2つの作品を共存させる難しさも今回のクロスオーバーではあったのではないでしょうか?

大森
おっしゃる通り、ファンタジーではない作品とクロスオーバーをするのは手探りなところもあって、まだ構想が固まりきっていない時点では、どうしましょうか……とWFSさんと話し合う場面もあったんです。
でも、原作を読み切った瞬間、「絶対面白くなるからお願いします!」と全力でお願いしました。

というのも、『デート』の士道も『ダンまち』のベルも、ヒロインを助ける王道主人公のDNAが受け継がれているから、このふたりメインの話は絶対熱くなるという確信が持てたんです。

――大森先生の『デート』に対する第一印象はどのようなものだったのでしょうか?

大森
デビュー前、『ダンまち』をGA文庫大賞さんに送るうえで既存の作品を研究していて、そのときに『デート』に出会ったんです。
自分はラノベって訳ありのヒロインを助ける話が直球だと考えている節があるんですが、『デート』1巻を読んだときはまさに「どストレートな作品見つけた!」という感じでした。ここまでヒロインのために主人公が頑張ってるのは初めて見たなと。

ただ、一度3巻で読むのが止まってしまっていたんです。

――それはなぜですか?

大森
というのも、4巻のメインヒロインが五河琴里ちゃんなんですけれど、自分は妹プラスツンデレという王道の属性が苦手みたいで、この子がメインだからしばらく置いておこうかな……みたいな(笑)。




妹×ツンデレがダメ!?(笑)。あー……でも確かに『ダンまち』はみんな素直というか、好意をストレートに伝えてくるキャラが多いかもしれませんね。男キャラにはちらほらいますけど、ツンデレ。

大森
そして年上キャラでしかヒロイン打線組まれてないんです(笑)。原作後半でようやく年下ヒロインが一名出てくるありさまで……。あからさまなツンデレも恐らくいなかったと思います。でも男キャラのツンデレは許せるのかも……!(笑)
とにかく、そんな感じだったんですが、今回のコラボを進めるに当たって『デート』を改めて読んだら止まらなくなりました。





僕は作家としては恥ずかしながら、『ダンまち』の入りが実はマンガ版だったんですよ。
そこから小説を読んでみて、やっぱり原作も読まなきゃダメだなと。マンガのクオリティも抜群なんですけど、原作を読んでわかることも多いので。

――いざ原作に触れてみたところ、新たな発見が多かったのですね。


そうですね。改めて読ませていただくと、本当に面白かったです。
キャラクター、展開、全てが渾身で全てが真っ直ぐだなと思って。これ、当たり前かと思われるかもしれませんが意外とできないことなんです。決めるべきところで一歩外したくなったりするのはよくあることなので。
力いっぱい殴りつけるのは得がたい才能なので、いつまでも忘れないでいてほしいですね。

大森
ありがとうございます……!

――作家として感銘を受けたのは、具体的にどういった部分でしょうか?


個人的に好きだったのが6巻ですね。戦争遊戯(ウォーゲーム)自体も良かったんですけれど、そこに至るまでに仲間がひとりずつ加入していくところが好きで。

大森
編集さんもそこは言っていました。「戦いはおまけ」だと(笑)。


6巻は好きなシーンが多くて。ソーマ様もちょっと好きになりました。あとはもっと前の巻になりますが、神様たちが集まって二つ名決めるところも好きです(笑)。

大森
絶†影とかバーニング・ファイティング・ファイターとかですね(笑)。


あとはミアハ様と飲んでるヘスティア様のシーンですね。あのシーンで、惜しみない愛を主人公に注いでくれるヒロインはやっぱりいいなと。

大森
その初心は大切にしたいなといつも思っています(笑)。
そうだ、ひとつ聞きたかったんですが、『デート』はキャラが多いじゃないですか。それぞれの出番の配分は、どう考えられているんですか?


キャラ数でいったら『ダンまち』のほうが多いじゃないですか(笑)。

大森
自分の作品はゲームを意識した設定もあって、メインキャラが固定で、サブは助っ人として割り切ってる部分もあるんです。あとは『人』ではなく『場所』で捉えているというか、ギルドにはあの人が、酒場にはあの子が、のような。
でも、『デート』はヒロインの精霊が集まって、それぞれがメインヒロインの風格と可愛さがあるので、すごいなと。


そうですね、その巻のメインキャラはいるけど、できるだけみんなにも出番を与えないと、っていうのは意識してます。

大森
新しいヒロインとのデートも描きつつ、既存のヒロインもしっかり活躍している展開とか、よくこれだけのキャラを処理できるなといつも思っています。


ギアを上げながら坂道を登っていく自転車みたいなイメージです。どんどんペダルが重くなっていく(笑)。
だから後半に行くにつれてひとり2冊という構成が増えてきたんですよね。1冊目で既存キャラの活躍を描いて、2冊目で新ヒロインの活躍を見せる、という構造になってきて。
……あ、二亜は1冊でしたね。まあなんとかなったのでいいか(笑)。

でも、今になって改めて思うのですが、二亜みたいなキャラクターは後半じゃないと出せなかったですね。序盤はある程度万人受けを狙ったキャラクターを意識的に書いていましたが、後半になるに従って、わりと個性的な要素を足せるようになった気がします。

大森
変化球というか、斜め上に突き抜けて立っているキャラが増えてきましたよね。


シリーズが軌道に乗ったから出せたという側面もありますが、前半から登場しているキャラにはそれまでの蓄積があるので、後半登場キャラはある程度濃口じゃないと太刀打ちできないというのもありますね。
→次のページ:それぞれの好みのヒロインは……

■それぞれの好みのヒロインは……
――大森先生は『デート』だとどのキャラがお好きなんでしょうか?

大森
原作のほうになってしまうんですが、自分は14巻に出てくる六喰ちゃんというキャラクターが好きです!


アニメに出ていないためご存じない方もいらっしゃると思うのですが、ものすごく簡単に言うと……小柄なんだけど胸が大きいキャラです。
それを聞いたときは、「大森さん、やっぱり……!」って思いました(笑)。

大森
もちろんイラストの補正もありましたけど、最初に好きになったのは文章で読んだ時ですから!(笑)。

――橘先生はいかがですか?


僕はヘスティア様もアイズも好きなんですけど、なんか妙に命ちゃんが好きで。

大森
本当ですか! 仲のいい友だちも命が好きって言ってくれたんですよ。「なんでベルとカップリングじゃないんだ!」ってすごく怒られたことがあって。


なんでベルとカップリングじゃないんだ!(笑)。

大森
あはは(笑)。理由を説明すると、春姫というキャラクターもいるので、命とあまり喧嘩してほしくなかったというのがあったんです。
でも……少し守ってしまったかもしれませんね(笑)。

■両原作者の関係性が生み出した夢の共演
――共同執筆ということで、プロット以降はどの様な形で作業を進められていたのでしょうか?

大森
最初、基本骨子の部分を自分の方で書かせていただいて、WFSのスタッフさんとGA文庫さんの編集さんにも読んでもらったんですが、「『デート』のキャラがちょっと弱い」というご指摘をもらったんですね。
「そこは橘先生に書いていただけませんか?」とお願いしました。


なので、『デート』のキャラクターに関しては受け持たせていただいて。

大森
役割分担で『ダンまち』と『デート』をガッツリ書かせていただいた形ですね。


「折紙はこのシーンでどう動くものですかね?」とかも質問されたりして。



大森
折紙は難しかったんです……! この渾身のネタだったら橘先生も笑ってくれるはず! と入れたら全文書き換えられて……(笑)。


決してダメだったわけじゃないです!(笑)。

大森
その度に「自分の解釈違いでした! 申し訳ありません!」と(笑)。
でも、ペンを入れてもらったことで、真にクロスオーバーと言える内容になったのではないかなと。


楯突いて申し訳なかったです(笑)。

大森
滅相もないです(笑)。

――執筆の中で特に苦労されたポイントというと、どこになりますか?

大森
詳しくは後半でお話しますが、敵キャラに関しては悩みましたね。


それは悩みましたね!

大森
あとは、クロスオーバーである以上リスペクトし合わなきゃいけないし、disるようなことは絶対にしてはならないとは思いつつ、全てが円満なだけの話にはしたくないと考えていたんです。
そういう意味では今回のストーリーは異色だと思います。主人公たちが交流して仲良くはなるものの、その後突入する展開が、この手のイベントの中では珍しいものになっているのではないかと。

――ここまでお話を聞いているだけでも、かなりボリュームが濃厚になっているであろうことが伺えますね。

大森
プロットの文字数を数えたら2万字、文庫換算50ページくらいありました。『ダンメモ』で一番長いシナリオは1周年イベントの「グランド・デイ」だと思うんですけれど、それに肉薄するくらいのボリュームになったんじゃないかなと。

自分は橘先生と最初に会ったのがGA文庫さんの授賞式だったので、作家として業界に足を踏み入れた瞬間からお付き合いのある先生なんですよ。だからとても話しやすくて。
橘先生はノーガードじゃないですけど、自分に対しても言いたいことは言ってくれるし、逆に「もっと言ってこいよ!」という感じもあり、そのおかげでここまで濃いシナリオができたと思っています。


威厳がないんです(笑)。あと10年くらいやったら備わるかな……(笑)。

大森
今のままの橘先生でいてくれると嬉しいです(笑)。

――では最後に、本イベントの見どころをお願いします。


みなさんこの記事を読んでいるということは、キービジュアルやPVをご覧になっているのではないかと思いますが、なぜか十香ではなく狂三が前面に出ています。この構図的に「十香じゃないの?」と気になった方は、それをとっかかりとして、ぜひプレイしてみてください。
ボリューム満点なストーリーにも、どうぞご期待ください!

大森
『ダンメモ』をプレイされているユーザーさんには『デート』の熱い世界観を知って頂いて、『デート』のファンのみなさんは『ダンまち』をこの機会に知っていただければ嬉しいです。
今回のイベントをクリアした後は、必ずそれぞれの原作を読みたくなるんじゃないかと思います。恒例となった声優さんのネタもちゃんと入れているので、それも含めてぜひ楽しんでいただければと思います。