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トップタイムで締めた平川亮が語るSF19の手応えとホンネ。「好調すぎて不気味」の山下健太【スーパーフォーミュラ合同テスト富士】

2019年03月28日 05:41  AUTOSPORT web

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鈴鹿、富士の両テストで好調ぶりを見せた山下健太(KONDO RACING)。果たして、その速さは開幕戦でどう活かされるのか
2019年のスーパーフォーミュラ開幕戦に向けて最後のテストとなった、富士スピードウェイでの第2回公式テスト。2日目最後のセッションでトップタムをマークした平川亮(ITOCHU ENEX TEAM IMPUL)、そして3番手タイムを記録した山下健太(KONDO RACING)。新型シャシー『SF19』を導入して迎える今シーズンのスーパーフォーミュラで、ライバル陣営からもひとつ抜けた存在として見られはじめたふたりに、今回のテストの印象、そして開幕戦に向けての手応えを聞いた。

 富士テストでの平川は、2日目午前のセッションでクラッシュを喫してしまった。

「100R縁石に乗ったらフロアが底を打ってしまってクラッシュパッドにぶつかりましたが、クルマはフロントウイングしか壊れていませんでしたので、その後、修復して走ることができました。午前のセッションでクラッシュしたので、午後のセッションでトップタイムを獲ることができたので、メカニックには恩返しができて良かったです。それでも、アタック自体は全然、手応えが良くなかった。トップタイムと聞いてびっくりしました」と平川。

 2回のテストを経て、平川なりの課題も見つかったようだ。

「もっと持ち込みセットアップの精度を上げないといけない。鈴鹿のテストの時は持ち込みは良かったのですが、路面コンディションが上がっていくにつれてクルマが合わなくなって、路面に合わせてセットアップを変えていったら良くなったのですが、それでもまだ鈴鹿ではトップのタイムは見えなかった。富士ではその鈴鹿のベースセットとほとんど同じ臨みまして、走りはじめて変更を加えて改善していきました」

 今回の富士テスト、2日目午後のセッションで特徴的だったのが、低速コーナーの多いセクター3のタイムだ。モニター表示で見る限り、多くのドライバーが37秒台でセクター3を駆け抜けるなか、平川と山下健太のふたりだけが36秒台中盤の速さを見せていた。もちろん、テストなので使用しているタイヤの摩耗状況は違うが、それでもこのふたりがセクター3で速いのは間違いなさそう。その秘密を平川に聞いた。

「僕はセクター2ではもうどうやっても速くならないと思っているので、セクター2は苦手です(苦笑)。チームからはセクター2をもっと速くと言われていますけど、僕はセクター3しか速く走りたくない(笑)。ですので、クルマのセットアップの方向もそういった低速コーナー向けになっていると思います」と平川。さらに今回のテストではコースで飛び出すドライバーがいつも以上に多く、赤旗中断も多かった。SF19になってパフォーマンスの限界が高くなったことで、ドライビングの難しさも高くなっているとの声も聞こえている。

「富士で乗ってロングランをしていても、SF19はタイムをまとめるのが難しい。ちょっと滑って修正しようとすると思ったよりも滑ってタイムロスしたり、コーナリング速度も上がっているので、ちょっとミスしたらその代償が大きい。それに今回は風が強かったからか、SF14よりドラッグが大きいことが関係していると思うんですけど、ストレートでも追い風になったり向かい風になったりがすぐ分かるくらい、クルマ自体、風の影響が大きいと感じました」とSF19の特性を話す平川。

 さらには、コーナリングスピードもSF14に比べて高まっていることで、ドライバーには肉体的な負担も大きくなっているという。

「100Rはほとんど(アクセル)全開ですので、首がヤバイです。レースの時はこれまで以上にしんどいですね。そのドライバーの厳しさをもっとメディアのみなさまには伝えてもらいたい。僕らドライバーの辛さを(苦笑)。富士でも100Rだけでなくてセクター3の低速コーナーでもタイヤを滑らさないように神経を使って走るのも体にはしんどくて、シーズンに入ると暑くなるので、厳しくなると思います」と平川。

■オフのテストで絶好調のコンドーレーシングの山下健太「クルマが相当、決まっています」


 いつもクールで、弱音のような言葉をなかなか言わない平川が不安になるほどSF19のコーナリングは速く、横G(横にかかる加速度)はかなりのレベルになっていることは間違いなさそうだ。

 また、富士テスト2日目午後のセッションで注目したいのが、3番手タイムをマークした山下健太だ。山下はセッションの最後、2周連続でアタックを行い、1回目アタックのセクター3で全体のファステストをマーク、2回目のアタックでセクター2を自己ベストをマークしながら、最後のセクター3で1回目のセクタータイムを抜くことができなかった。つまり、1周まとめてきちんとアタックができていればトップが充分に見えている状況だったのだ。

「最後は計測3周目にアタックしたのですけど、その時の路温気温を考えると4周目にいった方が良かった。3周目のアタックの時点でタイヤのグリップのピークがまだ来ていなくて、4周目のアタックではセクター2まではすごく手応えが良かったのですが、セクター3に入ったときにはタイヤが少しタレてしまいました。ちょっと欲をかいて、失敗してしまいましたね」と以後の予選モードを振り返る山下。

 それでも山下は前回の鈴鹿テストでもセッショントップタイムをマークし、この富士でも2日目は午前にトップタイムをマークし、午後も実質、首位と両サーキットで速さを見せており、このオフテストで頭ひとつ抜けた存在となっている。

「2日目午後のタイムも、タイヤは前回の鈴鹿で使って、今日の午前でもアタックしたソフトタイヤのユーズドでのタイムですので、クルマが相当、決まっています。鈴鹿、富士と両方のテストですごく好調で、ここまで好調だとちょっと不気味です。『寒いコンディションの時だけ合っているんじゃないか説(シーズンに入ったら合わなくなる)』を若干、感じています」と山下。

 ちなみに山下は平川と同様、セクター3がズバ抜けて速かったが、その秘密を聞くも「クルマが速いだけですね」と、特に意識している部分はなさそうだった。

 ライバルチームに聞いても、『KONDO RACINGの山下、TCS NAKAJIMA RACINGの(アレックス)パロウが抜けている。その次が団子状態」と話しているように、鈴鹿、富士の2回のテストで好不調が見えてきた2019年のスーパーフォーミュラ。果たして、この現在の状況は開幕戦でどのような状況となるのだろうか。勢力図、SF19の速さ、新人ドライバーたちのパフォーマンスにドライバーの体力の厳しさと、話題は尽きない。