インディカー・シリーズ第2戦サーキット・オブ・ジ・アメリカズでのレースを7位入賞で終えた佐藤琢磨は、レース翌日には日本に向かう飛行機に飛び乗り、大急ぎで鈴鹿へ向かった。鈴鹿で行われる鈴鹿レーシングスクール(SRS)の入校式に出席するためである。
今年からSRSのプリンシパルを務めることになった琢磨。すでに幾度もミーティングを重ね講師陣やカリキュラムの構成など、いろいろな懸案事項を進めていたが、この入校式でプリンシパルとして本格始動となる。
琢磨は早朝に鈴鹿入りし、午前中に鈴鹿サーキット南コースで行われていた走行に早速顔を出して、子供たちの走りを眺めてはアドバイスを送っていた。
午後からはSRS-F、SRS-K、SRS-MOTO合同のレーシングスクール開校式となり、今期入学するドライバー、ライダーの子供たちと保護者、そして講師陣や関係者が勢揃いしての盛大に行われた。
スーツ姿に着替えた琢磨は冒頭に「今日から入校するみなさんおめでとうございます! 22年前、僕もこうしてSRSの開校式に出席していたのを思い出します。当時の中嶋悟校長に『悔いなく精一杯やってください』と言われたのが昨日のことのようです」
「レースでは常に結果を求められますが、スクールでは失敗しても良い。挑戦できる場所です。自分の限界を高めていくために、いろいろなことに挑戦してほしいと思います。君たちには将来の日本や世界のモータースポーツを支えるドライバー、ライダーになってもらいたい」と挨拶。
入校する子供たちも、琢磨の訓示に食い入るように聞き入っていた。
また、琢磨がインディカーに出場している間、留守を預かるかたちとなる中野信治バイスプリンシパルも「ここにいる子供たちは素晴らしい可能性を秘めている子供たちだと思います。しかし、モータースポーツの世界は時間があっという間に過ぎてしまう」
「モータースポーツにも時短が求められている。レッドブルF1で戦っているマックス・フェルスタッペンは17歳でF1にデビューし優勝もしている。F1でもどんどん若返りをしているし、我々もその流れに取り残されないようにしないといけない」
「彼らが世界で戦えるドライバーになってもらえるように、我々も最大限のサポートをしますので、応援してあげてください」と挨拶した。
佐藤琢磨と中野信治は、1998年の在英時代からの間柄で、ジョーダンのテストドライバーだった中野が、イギリスに来たばかりの琢磨にいろいろアドバイスをしたり、共に世界のフィールドで戦いステップアップして来た旧知の仲だ。
その後、琢磨はF1を経てアメリカでインディ500のチャンピオンとなり、中野もモナコ、インディ500、ルマンと世界三大レースに出場した日本人唯一のドライバーとなった。
そんなふたりが今年からSRSを支え、世界に飛び出す若いドライバーを育てていくことになる。世界のモータースポーツを知り尽くした彼らが、どんな風に生徒たちを育てていくのか、大いに楽しみだ。