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「一貫して冤罪主張」GPS捜査など証拠排除も争点に…旭川の覚醒剤裁判、28日判決

2019年03月27日 16:41  弁護士ドットコム

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3月28日に旭川地裁で判決を迎える覚醒剤事件で、北海道警が令状なしに実施したGPS捜査の違法性が争点の1つになっている。


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2017年3月の最高裁大法廷判決は、令状なしのGPS捜査を違憲と判断。必要な令状についても、新たに立法措置を求めている。



被告人側はGPS捜査に関する証拠のほか、令状を取らずに撮影した動画などについても違法収集証拠として排除を要求。そもそも冤罪(求刑懲役7年・罰金150万円)だとも主張している。



●2013年からGPS捜査

被告人の男性(46)は2017年4月、旭川市内の病院の駐車場で覚醒剤を所持したとして、覚醒剤取締法違反(営利目的所持)の罪に問われている。薬物の粉末を入れた6つのケースを、駐車場内の車庫に隠したとされる。





検察側の冒頭陳述などによると、男性は元暴力団関係者。警察は覚醒剤密輸などの疑いがあるとして、2013年から男性の車にGPSをつけるなどして捜査していた。



現場となった駐車場は、このとき男性の出入りが多くあったことからマークされていたという。ただし、GPS捜査自体は男性がGPSに気づいて取り外したため、2014年に終わっている。



その意味で、仮にGPS捜査関係の証拠が排除されても、判決への影響は小さいかもしれない。だが、男性側が問題視する捜査手法はそれだけではない。



●令状なしに24時間のカメラ撮影

道警は男性に対する捜査を続行。GPS捜査の代わりに、動画カメラを使って、この駐車場を2017年2月から24時間撮影した。途中からは台数を増やし、2台体制で状況を注視していた。



道警は、カメラ映像などから同年5月に男性を逮捕。検察の主張通りなら、警察の執念が実ったことになる。



だが、警察のビデオ撮影や駐車場内での捜査は、駐車場の持ち主の承諾なく行われていた(覚醒剤が見つかった後の事後承諾)。



被告人側は、第三者の私有地内の撮影には令状がいるとして、違法な捜査手法として、ビデオ等を証拠採用しないように主張している。



●直接証拠がない

そもそも、映像には男性が覚醒剤が入った磁石付きケースを隠す様子が直接には映っていない。男性が一貫して無罪を主張していることから事件は複雑化している。



カメラに映っていたのは、男性が車庫背面の壁を探っている様子だった。その後、警察がその場所からケースを発見し、男性を逮捕した。



壁には、柱と直交するように梁が渡されていた。梁は下向きの「コ」の字型をしており、ケースは梁の裏側に磁石で貼り付けられていたのだ。





磁石付きケースで品物をやり取りするのは、男性が所属していた暴力団がよく使っていた手だといい、警察は梁に覚醒剤を隠すと踏んでいたようだ。



一方、男性は当日、駐車場に行ったことは認めているが、ケースはすでにあったと主張している。



●ケースは前からついていた?

裁判の最大の争点は、男性が「犯人」だという立証が十分かどうかだ。



男性側の言い分は、自身は貴金属売買などが専門で、覚醒剤は扱ったことがないというもの。警察からの詮索を嫌う顧客のため、合法のものでもケースを利用する方法で品物や現金を扱っていたという。



問題の日は、すでに何者かによってケースが貼り付けられており、ケース外側の手触りから自身に関係するものではないと判断。混同を防ぐため、そのまま立ち去ったと主張している。



ケースはすでにあったのかどうか。検察側は、男性が駐車場に来る50分ほど前に、捜査員が該当箇所を触り、何もないことを確認しているとする。



しかし、写真などの客観的な証拠はなく、捜査員の証言があるだけ。被告人側は立証の不十分さを指摘している。



●警察の不可解なカメラ操作

被告人側によると、カメラに映る警察の挙動には不審な点もあるという。



たとえば、直前には何もなかったと証言した捜査員。カメラにはこの捜査員が、梁の内側に触れるシーンが映っているが、該当箇所を確認した時間は1秒ほどだという。





現場は暗く、柱間の梁の長さは2mほどあり、上中下段の3本があったが、捜査員が触った場所は10cmほどの幅でしかなかったようだ。被告人側は確認が不十分だったと主張している。



また、男性が駐車場を訪れる前日や、訪れた直後など、カメラのアングルが変わって、現場がはっきりと映らなくなっているときや、記録が残されていないときもあった。



裁判所はどう判断するのか。判決は3月28日の午後に言い渡される。



(弁護士ドットコムニュース)