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ARゲーム『アボ』はかわいいだけじゃない 細部まで工夫されたインタラクティブ性に注目

2019年03月27日 08:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 アボカドにギョロ目が付いていて、二足歩行で歩き出してほしいと思ったことはないだろうか?そのような人たちの夢を叶えるべく、イギリスのクリエイティブスタジオPlaydeoが動くアボカドの冒険ゲーム『Avo!(アボ)』を発表した。


(参考:『ジュラシック・ワールド』『ハリー・ポッター』……映画を題材にしたARゲームの魅力


 『Avo!(アボ)』はビデオの中でアボを操作して物語を進めていくARドラマであり、メインのキャラクターは発明家ビリー(Katy Reece)、そしてアボカドのアボ。物語は彼らと、ビリーの発明を盗もうと企んでいる悪役を中心に進む、まるで子供向けの探偵ドラマのような話の展開である。


 基本的な動作は、進みたい方向をなぞってアボを移動させ、地面に落ちているピンク色のビーンズやビリーに依頼されたオブジェクトを集めるだけで、いわゆる「ゲーム」的な要素は少ない。1000ビーンズを集めると次のエピソードが「購入」できる(現在は8エピソードが公開中・ストアでもビーンズを購入可能)。各エピソードにはボーナスシーンも含まれており、一回のプレイでは完全攻略(?)できない仕組みだ。また、ARモードではアボを目の前の空間に出現させ、歩かせたり踊らせたりすることができる。


 アボカドのアボも発明家ビリーもかわいらしく、二人の和やかなやりとりを見れることがゲームの面白さであるのは間違いないだろう。


 しかし、『アボ』は「かわいい」だけでは説明しきれないゲームだ。


 操作は至って単純だが、ストーリーの面白さ、映像のクオリティーの高さ、そしてゲーム中のカメラの自然な切り替えにより、ビデオとゲームの境目がわからなくなるような不思議な没入感が得られる。


 メイキングビデオによると、制作時は空間をすべて3Dスキャンすることで、映像に「奥行き」を与え、アボの動きに合わせてカメラを切り替えることを可能にしているようだ。また、紙・木・金属など素材に合わせてアボの足音を変えていたりと、細部までこだわって作られていることがうかがえる。このようなディテールこそがゲーム体験をより「リアル」に、そして映像との境目を曖昧にしているといっていい。PlaydeoのTimo Arnallは「どうやって人に動画を触ってもらうか、そして動画の中で人は何ができるのか?」を探求したのだという。


 「なぜアボカドを?」という質問に対しては、「形が独特で美しく、二足歩行させたときに本物の生物らしい絶妙な動きを見せたから採用した」とのこと。他のフルーツでも試行錯誤した様子が以下の動画から見ることができる。


 『Avo!(アボ)』はPlaydeo(play + video)というネーミングからも分かるように、動画の中で遊べることを重視して開発が進められた「触れるテレビ」であり、デジタルネイティブ・スマホネイティブの子供・若者に向けて作られたゲームだ。


 最近のティーンエイジャーのほとんどは従来のケーブルテレビではなく、NetflixやYoutubeで動画を見ることが多いことから、映像を再生する機能だけではなく、画面をタッチして制御可能なスマートフォンがプラットフォームならば、その映像にもインタラクティブ性をもたらせることは必然であったのかもしれない。


(かぷぬ)