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MotoGP:F1空力設計者が語るドゥカティの新デバイスがもたらすメリット

2019年03月27日 06:11  AUTOSPORT web

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MotoGP開幕戦カタールGPを制したアンドレア・ドヴィツィオーゾ
アルファロメオF1チームのエアロダイナミシスト(空力設計)を務めるアリ・ローランド=ラウズは、ドゥカティのスイングアーム下部につけられたデバイスが何をするものなのか確信しているという。

 開幕戦カタールGPでドゥカティが使用した“スイングアーム下部のデバイス”は、その目的がダウンフォースを発生させる空力デバイスではないかということで、アプリリア、ホンダ、KTM、スズキの4メーカーがFIM MotoGPスチュワード委員会に抗議した。

 この抗議は“スイングアーム下部のデバイス”がタイヤの冷却が目的ということで却下されたが、その後上訴され、MotoGP控訴裁判所で審議されることになった。

 MotoGP控訴裁判所の決定は、3月31日の第2戦アルゼンチンGP前に発表され、カタールGPの結果は、MotoGP控訴裁判所の最終決定に従うことになっている。

 ドゥカティの“スイングアーム下部のデバイス”については、論争が激化する一方だ。それはタイヤを冷却するもので、つまりは合法なのか? それともそれは空力デバイスで、違法である可能性が高いのか?

■“スイングアーム下部のデバイス”は「本当にクレバーだ」
 抗議の対象となっているドゥカティの“スイングアーム下部のデバイス”をローランド=ラウズは次のように分析する。

「これは3つの要素からなる短いウイングデバイスで、直立した状態のバイクに十分なダウンフォースを与えるものだ」

「スイングアーム下部のデバイスは時速約128~160km/hを越えた時に、リヤタイヤに荷重をかけ、ホイールスピンを減らす。空気力学では、生み出されるダウンフォースは速度の2乗で増大するから、スピードが2倍になれば、4倍のダウンフォースを得ることができる」

「荷重をかけるとタイヤ内の温度は上がり熱を持つが、このデバイスは、ホイールスピンによるタイヤ温度の急上昇を避けるのに役立つ。ホイールスピンはタイヤのデグラデーションの点では最悪なことだからね」

「このデバイスは本当にクレバーだ。他のMotoGPの空力デバイスはすべてフェアリングの上部に搭載されているから、生み出されたダウンフォースはサスペンションを通して伝わる。だから硬いスプリングを使ってつり合いを取らなければならない。だが、スイングアーム下部のデバイスはサスペンションを通していないため、生み出されたダウンフォースはタイヤに直接伝わる」

「これはダウンフォースを伝える最高のやり方だ。なぜならグリップに素晴らしい効果がでる。ダウンフォースはリヤサスペンションを通して伝わらないから、サスペンションのセットアップでつり合いを取る必要がない」

「このデバイスはブレーキング中にはダウンフォースを増やさない。ライダーが強くブレーキをかけると、アンダーカウルの前部が地面に近づき、デバイスに届くはずの空気を遮るからだ」

「ドゥカティはルールを厳格に守る。彼らはF1チームのように運営されていて、すべてのことに完全に目を配っている。他のチームも、同じようにしなければならないことに気づく必要がある」

 こういった議論を呼ぶような新技術が厳密にルールに抵触しているか否か対処するためのシステムが、F1にはすでに存在するとローランド=ラウズは話す。

「もし新しい大きな新技術が違法ではないと見なされたら、F1はチームがその技術をレースで使えるように、シーズン中は合法と見なす」とローランド=ラウズ。

「そして、その年の終わりに、F1の裁判所でルールをどのように解釈すべきかが審議され、新しいデバイスをこの先も合法とするか違法とするか判断を下す」

「だからチームは何か新しいものを開発することで見返りを得ることができ、作業が無駄になることはない。だがその年の終わりにF1は、対象の新技術が望んでいる技術か否かを判断することになる。MotoGPもそのようなやり方をする必要があるかもしれない」

 カタールGPでのドゥカティに対する異議申し立ての上訴審の日程は、まだ発表されていない。