『小説 火の鳥 大地編』の連載が4月6日から『朝日新聞』土曜別刷り『be』でスタートする。
1954年の「黎明編」から1988年の「太陽編」まで手塚治虫が「人間とは、生命とは何か」を問うてきた漫画『火の鳥』シリーズ。『小説 火の鳥 大地編』では、未完となっている「大地編」の構想原稿をもとに桜庭一樹が長編小説化する。挿絵はイラストレーターの黒田征太郎が担当。連載は1年間、毎週掲載を予定している。
『朝日新聞』を新規で3か月以上購読した500人を対象に『第23回手塚治虫文化賞』の記念品「火の鳥ピンバッジ」を先着でプレゼント。また今回の連載開始を記念して「黎明編」が無料配信されている。
■桜庭一樹のコメント
実物に目を通したとき心が震えました。
まず、手塚先生ならこう描かれたはず、という忠実なアウトラインを引き、その上で、平成のその先へと生きていく自身の感覚と、小説ならではの表現を使って、火の鳥に再び熱い命を吹きこもうとしています。
わたしは小学校の図書室で『火の鳥』をみつけ、夢中で読みました。
この物語に流れている、命への賛歌、平和主義、そして、人間の気高さを信じる手塚先生から伝わる“悲しみを伴った独特のオプティミズム”から多大な影響を受けて大人になりました。
『火の鳥』の名に恥じない大ロマンに。そして、つぎの時代に繋がる新しい物語に。今年、全力で『大地編』を紡ぎたいと思っています。
■黒田征太郎のコメント
僕は、手塚治虫になりたかった少年です。9歳のとき、戦後の闇市で見た『新宝島』で、疾走する車のタイヤが楕円(だえん)に描かれているのを見て「これだ!」と思った。手塚さんの本を買うために新聞配達をしました。食べるため早く大人にならねばならない時代でしたが、手塚さんは心と頭に深く入り込んでいました。
昨年手塚さんを追憶する展覧会を開いた後も、手塚さんに質問するような、返答するような気持ちで、気が済まずにアトムの絵を描き続けています。
『火の鳥』には、手塚さんの時空を超えた自己表現がある。これまで、野坂昭如さんや中上健次さんといった作家とつきあってきましたが、桜庭さんは僕からしたら子どものような世代。手塚さんという巨人と、桜庭さんという新兵器に挟まれて、僕がどう反応していけるか、楽しみにしています。