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バーチャルシンガーYuNi、初のリアルライブイベントで伝えた“歌にかける思い”

2019年03月24日 12:31  リアルサウンド

リアルサウンド

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 3月16日(土)、バーチャルシンガーYuNiによる初の主催リアルライブイベント『UNiON WAVE – 花は幻 – Supported by SPWN』が、池袋HUMAXシネマズで開催された。


(関連:YuNiのライブ写真はこちらから


 このイベントでは、全国の劇場/映画館を筆頭に様々なスペースをVTuberやバーチャルアーティストのステージに変える「SPWN」が公演をサポート。ヒゲドライバーとYUC’eのDJ/ライブをはじめ、YuNiとYUC’eのクリエイターズ・トーク、そして5.1chサラウンドシステムによる立体的な音響空間で、YuNi自身によるARライブなど様々な企画が展開された。


 まずは冒頭、映画館の開演ブザーが鳴ると、「本日は『UNiON WAVE – 花は幻 – Supported by SPWN』にご来場いただき、誠にありがとうございます。開演に先立ちまして、ご来場のお客様にお願い申し上げます」とYuNiの声による公演アナウンスがスタート。観客が録音された音声かと思っていると、スタッフとして彼女を支える清らかな乙女丸が「YuNi~、何やってるの?」と音声でカットインし、YuNiが「ちょっと乙女丸! もう開場してアナウンスしてたところだよ!」とツッコむと、その光景に早速笑いが起こる。実はこのやりとりはリアルタイムで行なわれており、それに気づいた彼女のファン「ゆにチル」に向けてYuNiがどこから来たかを尋ねると、なんとこの日はカリフォルニアからやってきた観客も! このイベントがYuNiと観客がバーチャル/リアルの垣根を越えて邂逅する場であると同時に、世界各地のファンたちが集結するものでもあることを伝える瞬間だった。


 その後はYuNiの紹介を受けて一番手のヒゲドライバーが登場。序盤から『月刊少女野崎くん』のEDテーマ「ウラオモテ・フォーチュン」を筆頭にしたビート・ミュージックとしての魅力と良質なメロディとを兼ね備えた楽曲で会場を盛り上げると、以降も『Tokyo 7th シスターズ』の「Snow in”I love you”」や「PRIZM RISM」、「打打打打打打打打打打」、「あんきら!?狂騒曲」(『アイドルマスターシンデレラガールズ スターライトステージ』)といった人気ゲーム曲や、「スパッと!スパイ&スパイス」(『RELEASE THE SPYCE』)や「うまるん体操」(『干物妹!うまるちゃんR』EDテーマ)、「STEP by STEP UP↑↑↑↑」(『NEW GAME!!』OPテーマ)、そして会場一体となってタオルを回した「回レ!雪月花」(『機巧少女は傷つかない』EDテーマ)といった人気アニソン曲など、自身が手掛けた楽曲を次々に披露。こうした曲がそのまま近年のアニソン・ヒットメドレーになる雰囲気は彼ならではだ。終盤には「弊社御社」も披露し、序盤にして既に会場が熱気に包まれた。


 ここでYuNiがようやくステージに姿を見せる。「YuNiちゃーん!!」というゆにチルの呼びかけで観客の目の前に登場。ファンから送られたフラワースタンドを紹介して、会場が大きな歓声に包まれていく。


 以降は筆者が進行を担当させてもらったYuNiとYUC’eによるトークセッションがスタート。ふたりはYuNiにとって初のオリジナル曲「透明声彩」と、2曲目のオリジナル曲「Winter Berry」を制作した間柄で、対談はこの日が初となる。まずはお互いに感じる魅力を聞くと、YUC’eは「透明声彩」の制作前に、YuNiの動画をすべて観て魅了されたエピソードを披露。感激するYuNiの姿に会場からも温かい声が漏れ、その後話は「透明声彩」の制作エピソードへ。YUC’eがタイトルについて「声は透明で見えないものじゃないですか。でも、YuNiちゃんの歌声には世界を変えるような力があると感じて、『透明声彩』と名付けました」と伝えると、YuNiは「いただいたとき、『YuNiのために作ってくれた曲なんだ』ってすぐに伝わってきて、本当に嬉しかったです。この曲は、聴けば聴くほど魅力的に感じられる曲なんですよ!」とコメント。そのうえで、当時は「自分らしい歌い方って何なんだろうと悩んでいた」と続け、YuNi、YUC’e、kzの3人で初の本格的なスタジオレコーディングを行なった「透明声彩」を通して、「自分らしい声を見つけられました。YuNiを導いてくれました」と明かした。お互いにとって「透明声彩」が、特別な曲になったことを伝えるエピソードに会場から拍手が起こった。


 一方、YuNiとYUC’eのふたりで録音した2曲目のオリジナル曲「Winter Berry」については、YUC’eが「最初に曲のイメージを伝えるために挙げてもらった曲がどれもBPM128~130で、私自身は1曲も作ったことがないものでした。でもYuNiちゃんがテーマとして挙げてくれていた『冬の可愛さ』を想像したら、スッと楽曲ができました」とコメント。続いてYuNiが「YuNiは普段からその曲に合った情景を頭に思い浮かべながら歌を歌っているんですけど、「Winter Berry」は最初に曲を聴いたときに、頭にバーッとイメージが広がりました! この曲はお洒落な可愛さを意識して歌いました」と語り、「YUC’eさんの曲は最初から最後まで好き。イントロの時計の針の音から好き」と続けると、お互い照れ合う様子に会場が盛り上がる瞬間もあった。その後はYUC’eが楽曲の雰囲気から想像してタイトルに選んだ「Winter Berry」の中に、「V(=Bを音が似ているVに変換)」「R」という言葉が入れられると気づいた際の話などを経て、最後はYuNiがこれまで彼女を支えてくれたファンへの感謝を改めて伝え、「みんなの期待に応えられるような、それを上回っていけるようなバーチャルシンガーになります!」と伝えてトーク終了となった。


 続いてはじまったのはYUC’eのライブセット。彼女はYuNiから改めて紹介を受け、「accel.」や「バイバイ」でライブをスタートさせると、続いて「macaron moon」や「Night Club Junkie」といった自身名義の楽曲や、アレンジを担当したバーチャルYouTuberによるコンピレーションアルバム『IMAGINATION Vol.1』の収録曲、おめがシスターズの「Don’t say “lazy”」(『けいおん!』EDテーマのカバー)も披露。フューチャーベースを筆頭にしたクラブ・ミュージックの要素とポップ・ミュージックとしての魅力とを同時に詰め込んだ彼女らしい歌/楽曲を活かして、その後も「intro-duck-tion!!」や「Future Cake」で観客を盛り上げると、最後は「Summer Night Hiking」で合唱をうながし、この日のライブを終えた。


 そしていよいよ、YuNiのライブがスタート。まずは「Winter Berry」でライブをはじめると、サビでは別衣装を着た2人のYuNiがバックダンサーを担当し、3種類の衣装のYuNiが息を合わせて歌い踊る演出で会場が一気に華やかになる。バージョンの異なる3つのMVを並べると動画が繋がる「Winter Berry」のMVとのリンクを感じさせる演出だ。


 続いて、カバー曲「太陽曰く燃えよカオス」では、「みんな立って!」「みんなで『うー!』『にゃー!』するぞー!」と伝えるとステージを広く使って観客を煽り、中盤には観客が「うー!」「にゃー!」と合いの手を決める一幕も。観客をバーチャル世界に引き込むのではなく、彼女が現実世界の観客のもとにやってくるARライブならではの雰囲気に会場の歓声がますます大きくなっていく。一方、彼女の歌声を多くのリスナーが知るきっかけとなったもうひとつのカバー曲「シャルル」では、歌そのものの魅力を伝えるようにステージ中央で歌い上げるなど、楽曲ごとのパフォーマンスの幅広さも印象的だった。続く今月配信開始したばかりの3曲目のオリジナル曲「花は幻」では冒頭に音源にはない雨音が挿入され、5.1chサラウンドの雨音が響く中、スクリーンには実写で撮影された花の映像を表示。ライブ用の振り付けを踊りながら、「Winter Berry」とは異なる切ないボーカルで観客を魅了した。


 そしてライブはラスト曲へ。YuNiが「最後の曲は新しい衣装で歌おうと思います!」と告げ、「変身!」と瞬時に真っ白な新衣装に着替えると、披露されたのは自身初のオリジナル曲「透明声彩」。この曲は2018年10月にリリースされるとiTunes Store総合チャート3位/エレクトロニック・チャート1位を獲得した代表曲のひとつであり、バーチャルシンガーとしてYouTube上に様々な「歌ってみた動画」を上げていた彼女が、初めて“自分だけの曲”を届けた記念すべき1曲だ。この日はライブだけの演出として背後に過去の動画の数々が表示され、過去の思い出や単独リアルライブに辿り着くまでの歴史を噛みしめるような雰囲気で、未来への希望や胸の高鳴りが歌われていく。最後は重大発表としてYUC’e、la la larks、ヒゲドライバー、kzの4人が手掛けたオリジナル曲6曲とカバー曲6曲を収録した1stアルバム『clear / CoLoR』を4月24日にリリースすることを発表。ヒゲドライバーとYUC’eをもう一度ステージに呼び込んでお互いや観客に感謝を伝え、イベントが終了した。


 この日のライブ中、YuNiがMCで「『YuNiが遠い存在になった』と言う人もいるけど、それは違うんですよ。むしろ、みんなに近づいているんだよ」と伝えていた通り、彼女が現実世界に飛び出して行なった初の単独リアルライブ『UNiON WAVE – 花は幻 – Supported by SPWN』で感じたのは、これまでも多くの人々を魅了してきた彼女の歌や、歌にかける思いが、よりストレートに伝わってくるような雰囲気。アルバム・リリースに加えて元号の変わり目をまたいでのVRライブも控える彼女のさらなる活躍に、ますます期待したい。


(杉山 仁)