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『まんぷく』影のMVPは松坂慶子? 福子と萬平を支え続けた鈴さんの圧倒的存在感

2019年03月24日 06:11  リアルサウンド

リアルサウンド

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 鈴さん(松坂慶子)のことが心配で仕方がない1週間だった。


参考:『まんぷく』第146話では、変装した福子(安藤サクラ)が「まんぷくヌードル」の市場調査を行う


 娘たちが思わずため息をついてしまうくらい、マイウェイを貫き続ける鈴。萬平(長谷川博己)が何か新しいことを始めるたびに愚痴をこぼしたり、娘や孫の結婚相手をやたらと気にしたり、ときに些細なことで拗ねてしまったり。子どもらしさを残しつつ、お茶目でチャーミングなところがとにかく素敵な鈴は、福子(安藤サクラ)たちとともに『まんぷく』(NHK総合)の世界を大いに盛り上げてくれた。その圧倒的な存在感と魅力的なキャラクターから、『まんぷく』のMVPだと考える方もおられよう。


 そんな鈴が今週の放送で、腹部に強烈な痛みを感じ急遽病院に搬送。今週末の放送では無事退院することができたものの、多くの視聴者が固唾をのんで見守る展開であった。克子(松下奈緒)が言っていたことだが、かつて咲(内田有紀)の結婚式を前にして腹痛で苦しむふりをした鈴だったが、今回も茶番だったらよかったのにと思ったものだ。ところが今回は違った。鈴は痛みと苦しみに対し、全力で闘っていたのだった。


 思い返せば、ハンコ作り、塩づくり、ダネイホン開発、即席ラーメンの発明といった多くの功績を残してきた萬平であるが、何だかんだいって事あるごとに鈴は福子たちをしっかりとサポートし続けてきた。福子や夢枕に立つ咲に説得されて、ずいぶんたくさんの仕事をこなしてきたのだ。会社の経理を務めたり、たくさんのご飯を作ってくれたり、福子と一緒にデパートで実演販売をしたり……。彼女が汗を流してきた仕事を挙げればキリがないが、愚痴をこぼしながらも力になってくれたのが鈴。武士の娘と名乗るだけあって、福子にも負けず劣らずパワフルである。


 鈴が入院することになり、病室には多くの家族や親戚が駆けつけた。みんなが彼女の回復を願い、ただただ祈り続けたのだった。「お義母さんがいなくなったら、“この世の終わり”や」と忠彦(要潤)、「そうです。お義母さんには長生きしてもらわないと」と真一(大谷亮平)。そんな言葉を聞いて、満足そうに笑う彼女の笑顔は本当に幸せそうだった。夢の中で鈴は咲や真一たちが全然自分にかまってくれずに、不安にさいなまれることもあった。でも、「元気な鈴さんに会いたいと思う気持ちはみんな一緒ですよ」。病室だけでなく、家でも会社でも鈴のことが話題になる場面を見て、そんな言葉を掛けてあげたい気持ちになったものだ。『まんぷく』を支え続けてほしいという思いは、登場人物も視聴者も一緒だろう。


 さて、話は変わるがいよいよ「まんぷくヌードル」は完成を迎えた。カップの素材をどうするか、具材をどうするか、麺とスープをどうするか、フタをどうするか、どうやって麺を固定するか、デザインをどうするか。様々な課題をクリアしながら完成に向かっていくのを観て、『まんぷく』のフィナーレが近づいていることがじわじわと感じられた。「まんぷくヌードル」は「まんぷくラーメン」以上に多くの人々のエネルギーが詰まっているように思う。


 例えば、具材一つとっても、スクランブルエッグには源(西村元貴)が、海老には神部(瀬戸康史)の思いと努力がふんだんに込められている。お湯を掛けて3分待ち、フタを開ければ色鮮やかに散りばめられた具材が目に飛び込む。黄色、緑、赤、茶。その色鮮やかな出来上がりは、みんなの努力の結晶を象徴しているようだ。もちろん、具材だけではない。チームのメンバーが苦労した麺もスープも、名木くん(上川周作)のデザインもそれぞれがそれぞれの場所で輝いている。


 ひとまず、そんなふうにして完成した「まんぷくヌードル」を鈴さんに見せることが出来てなによりである。(國重駿平)