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『バンブルビー』トラヴィス・ナイト監督が語る、アニメーターとしての経験が実写映画に活きたこと

2019年03月23日 15:01  リアルサウンド

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 『トランスフォーマー』シリーズ最新作『バンブルビー』が現在公開中だ。本作は、マイケル・ベイが手がけてきた世界的ヒットシリーズ『トランスフォーマー』の人気キャラクター、バンブルビーの知られざる秘密を描いた物語。そんな本作で監督を務めたのは、スタジオライカの創業者でありCEOで、第89回アカデミー賞で長編アニメーション賞にノミネートされた『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を手がけたトラヴィス・ナイト監督だ。


参考:『バンブルビー』なぜ高評価を獲得? 『トランスフォーマー』シリーズの今後を占う重要作に


 今回リアルサウンド映画部では、本作で実写映画監督デビューを果たしたナイト監督にインタビューを行い、監督を務めることになった経緯やマイケル・ベイとのやりとり、そして実写映画とアニメーション映画の違いなどについて話を聞いた。


ーーこれまでスタジオライカでストップモーション・アニメーションを手がけてきたあなたが本作の監督を務めるというのは大きな驚きでした。


トラヴィス・ナイト(以下、ナイト):君と同じように僕も最初は驚いたよ(笑)。『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』を観てくれた『トランスフォーマー』の製作陣から連絡があったんだけど、「『トランスフォーマー』の監督」と聞いて、「絶対に間違いだ」と思った(笑)。これまでマイケル・ベイ監督が撮ってきたシリーズで、僕とは全く感性が違うと思ったからね。でも実際に彼らに会ってみると、今までとは全く違う路線にしたいということだったんだ。僕は子供の頃から『トランスフォーマー』自体は大好きだったから、そのキャラクターを使ってストーリーを作っていいと言われて、本当にワクワクしたよ。もしかすると、こういったフランチャイズものに、スタジオライカの哲学を注入することができるかもしれないとね。


ーーあなたに話がいった時点で既に路線変更は決まっていたんですね。


ナイト:僕が関わる前からスタジオやプロデューサーが綿密に話し合っていて、タイムトラベルもの、中世に戻るストーリー、サイバトロンにフィーチャーした物語など、いろんなアイデアをもとにしたストーリーが14個ぐらいあったみたい。僕に話がきた時点では、クリスティーナ・ホドソンによる脚本に決まっていたんだけど、プロデューサーやスタジオの幹部と会ったときに、「もちろん面白いんだけど、僕だったらここはカットして、ここにはこういうものを追加して、こういう方向に持っていく」というようなことをいろいろ言ったんだ。だから、二度と彼らから声をかけられることもないし、もう会うこともないと思っていた(笑)。そしたら、数週間後に連絡があって、「君が言ったように作ろう」と言われたんだ。本当にやることになって驚いたよ(笑)。でも僕はこの冒険には出たいと思ったし、今となってみればその決断は本当によかったと思っているよ。


ーー実際に監督を引き受ける決断はすんなりと?


ナイト:いや、ものすごく考えた。これを引き受けることによって人生が変わると思ったし、果たしてバランスが取れるのかどうかが分からなかったんだ。ライカもあるし、自分の家庭もあるし、全てを両立できるのかとね。だからいろんな人と話をして、結果的にできるという結論に至ったんだ。ひとつ言えるのは、これまで僕が手がけてきた過去の作品も、同じアニメーションという括りではあるけれど、毎回ジャンルが全然違うんだ。だから毎回新しいことをやる恐怖を感じながらやっていた部分もあるんだ。『バンブルビー』に関しても、新しいものにチャレンジしたいという気持ちはあるけれど、初めてのフランチャイズ作品に対しての恐怖感はあった。でも結果的に、自分が信じているようなエモーショナルな物語を、こういったフランチャイズという大きな作品で語れるというのは本当に楽しい経験だったね。


ーーこれまでのシリーズ全作品で監督を務め、今回は製作に名を連ねているマイケル・ベイと何か話はしたんですか?


ナイト:マイケルは本当に素晴らしくて、ものすごくサポートしてくれたよ。彼は、理想的なプロデューサーとは、監督を助けるものだということを理解しているんだ。僕の感性と彼の感性が全く違うことはマイケル自身も分かってくれていて、僕に「自分の映画を作りなさい」と言ってくれた。彼にはいろいろ質問したり、アドバイスをもらったりもしたけれど、それは全て僕自身の物語を語るためのサポートで、ものすごく自由を与えてくれたね。


ーー子供の頃から『トランスフォーマー』が好きだったと言っていましたが、何か具体的なエピソードはありますか?


ナイト:1980年代、僕が9歳ぐらいのときにちょうどアニメーションシリーズが放送されていて、心の底からカッコいいなと思っていたんだ。おもちゃもたくさん持っていて、自分でいろんなストーリーを作って遊んでいたよ。30年後にこうやって自分が作った作品が映画として公開されるなんてすごいことだよね。これまでの映画シリーズで一番好きなのは、大きな発見があった2007年の『トランスフォーマー』の第1作。もちろん『バンブルビー』がベストだけどね!(笑)


ーー本作はあなたにとって初の実写映画監督作となります。同じ監督でもアニメーションと実写映画では様々な違いがあると思うのですが、最も大きな違いは何でしょう?


ナイト:大きな違いで言えば、スピード感だね。『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』は完成させるまでに5年かかった。でも、実写はそういうわけにはいかなくて、とてもペースが早い。それがエネルギーにもなるし、プレッシャーにもなるわけなんだ。一方で、アニメーションと実写って、意外と共通する部分も多いんだ。特に今回は、主人公のバンブルビーがCGのキャラクターだったから、生命のないものに命を吹き込むという、今までやってきた経験がとても役に立ったよ。これまでの経験のおかげで、バンブルビーが本当に生きているような、感情のあるキャラクターに成立したと思うし、バンブルビーとチャーリーの関係もよりリアルになった。あと、アニメーターとしての経験が活きたこととして、忍耐力があるかな。例えば、この日のうちに集中して何かをやる、これはこの期間に全部やるというように、あらかじめきっちりと決めていたから、時間内に、しかも予算内で撮りきることができたよ。これは実写映画ではなかなかできないことじゃないかな(笑)。


ーー確かにそうかもしれませんね(笑)。今後はアニメーションと実写の両方をやっていくんですか?


ナイト:『バンブルビー』が高い評価もしてもらえたのはすごく嬉しいことだし、今回はいい体験をさせてもらったと思っているよ。ただ、もちろんアニメーションは大好きだし、僕にとって生きがいでもあるんだ。僕がやっていきたいのは、形式にとらわれず“ストーリーを語る”こと。ライカでもいろんなストーリーをいろんなジャンルで語ってきたからね。今後、アニメーションは当然続けていくつもりだけど、『バンブルビー』ではこれまでとは違う欲求を満たすことができたから、実写にもまたトライしていきたいね。


(取材・文・写真=宮川翔)