2019年03月23日 09:51 弁護士ドットコム
自己破産した人の氏名や住所などをインターネット上に掲載したサイト「破産者マップ」が批判にさらされて、大炎上した。破産者マップの運営者は3月19日、ツイッター上で謝罪したうえで、サイト閉鎖を発表したが、いまだにその余波は広がっている。
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破産者マップは、官報に掲載された自己破産を申し立てた人の氏名や住所などの情報をGoogleマップ上で可視化するというサイトだった。当初から、インターネット上で「法律違反にあたるのではないか」と指摘されていた。
こうした状況のもと、破産者マップ被害対策弁護団が3月18日、立ち上がった。「(掲載された人の)名誉やプライバシーを侵害します」「すでに公表された情報であっても、人の目に触れやすくすることは違法行為となりえます」などと責任追及する構えだ。
また、個人情報保護委員会は「本人同意を得ずに、個人データを第三者に提供してはならない」「個人情報を取得時に利用目的を、本人に通知または公表しなければならない」として、破産者マップの運営者に対して、サイト停止をもとめる行政処分をおこなった。
個人情報保護委員会によると、サイトが再開されるおそれもあるため、引き続き注視していくという。
話題になった破産者マップに限らず、国や自治体の公開情報・オープンデータをわかりやすく可視化することはトレンドだ。破産者マップに似たサイトとして、昨年から「ブラック企業マップ」https://blackcorpmap.com/が話題になっている。こちらは、厚生労働省が公表している情報をマッピングしたサイトだ。
「『破産者マップ』のことを知ったときには、すでにアクセスできず、見ることができませんでした。正直なところ、混乱しています」。ブラック企業マップを運営する「社畜@ブラック企業マップ」さん(以下、社畜さん)は、今回の騒動について困惑を隠さない。そのうえで、理念やスタンスの違いを強調する。
「破産者というのは、その存在によって、誰かが苦しんだり、追いつめられるという性質のものではありません。ですから、破産した人だからといって、その人を避ける必要もありません。その点が、ブラック企業や違法企業とはまったく異なります」
「なぜ、破産者の情報をわざわざマッピングして周知させる必要があるのか、僕には理解できません。また、国が破産者の個人情報をそこまで詳細に公開していることも、今回初めて知って驚きました。そもそも、そうした情報公開がなぜ必要なのかもわかりません」
破産者マップのもとになった官報は、公開されているもので、直近30日のものであれば、インターネット上でも閲覧することができる。国や自治体の公開情報の活用がすすめられる中で、今回の騒動が投げかけた問題点は少なくない。社畜さんは「世に問う意義と公益性がポイントだ」と強調する。
「正直なところ、僕も今揺らいでいます。何が正しいのか、あらためて問い直しています。『ブラック企業マップ』が準拠している厚労省のリストも、ブラック企業のリストとして完璧に正しいデータだとは思っていません。重大な法律違反があった、そしてそれを国としても認めて公表した、という点でこのリストを採用しています」
「今、いろいろなオープンデータ(公開情報)を利用したマップがありますが、そのデータに、あらためて世に問う意義や公共性があるのかどうかがポイントなのではないでしょうか。少なくとも『破産者マップ』には、そうした意義や公共性があるとは思えません」
(弁護士ドットコムニュース)