昨年までFIAヨーロピアンF3として開催されていたシリーズが、車両とフォーマットをそのままに、2019年から新たに『フォーミュラ・ヨーロピアン・マスターズ』として開催される予定だったが、シリーズの主催者であるフォーミュラ3・ファーマーケトゥンGmbHは、3月23日にシリーズの開催キャンセルを発表した。
ヨーロッパでは、今季からFIA国際自動車連盟の主導のもと、FIA-F3がスタート。その下位にリージョナルF3が世界各地で始まっており、アジアでもF3アジアシリーズが始まっている。新シリーズのシャシーはこれまでのF3とは性格が異なるものとなっていたが、これまでF3として使用されていたダラーラF317シリーズを使って、2018年まで同様DTMドイツ・ツーリングカー選手権のサポートとして、FIAヨーロピアンF3から名称を変更したフォーミュラ・ヨーロピアン・マスターズの開催が予定されていた。
フォーミュラ・ヨーロピアン・マスターズでは、昨年までよりもテストの機会を増やしたほか、F1ドライブに必要なスーパーライセンスポイント、さらに上位ドライバーにはDTMのヤングドライバーテストへの参加の機会、またチャンピオンには、全日本スーパーフォーミュラ選手権へのテスト参加の機会が用意されるなど、参加ドライバーに向けた多くの“特典”が用意され、シリーズの人気を保とうとする努力が行われていた。
しかし23日、フォーミュラ・ヨーロピアン・マスターズは、開幕まで6週間というタイミングで、シリーズ開催のキャンセルを発表した。主催者は、キャンセルの理由について「ヨーロッパのモータースポーツにおける厳しい競争環境のため、登録したドライバーの数が少なすぎたため、この苦渋の決定を選ぶ必要があった」としている。
「これはヨーロッパの若手ドライバーにとって本当に悲しい日だ」と語るのは、フォーミュラ3・ファーマーケトゥンのウォルター・メルテス代表。
「難しいヨーロッパの競争環境では、ドライバーに複数の異なるシリーズのための十分な推進力がなかったということだ。この状況を補うには多大な財政支出が必要で、我々はこれをチームに期待することはできなかったし、望んでいなかった」
シリーズはすでに10チーム20台が参戦の意思を示していたとされており、昨年マカオGPで負傷したソフィア・フローシュや、佐藤万璃音が参戦表明を行っていた。しかし、今回の決定により、20台近くのダラーラF317シリーズと複数の若手がレースの機会を失うことになる。
この結果、2019年にダラーラF312/F317シリーズを使ってレースが行われる予定なのは、全日本F3選手権と、同じくヨーロッパで行われ、F312/F317シリーズにトヨタ3S-GEエンジンを積んで争われているユーロフォーミュラ・オープン(今季名取鉄平が参戦を予定)のみとなる。これらのシリーズへの影響や、同シャシーを使っていたマカオGPへの影響が今後注目される。