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日本人と同性パートナー関係、台湾人男性に在留特別許可「グレーの人生、明るい色に」

2019年03月22日 19:41  弁護士ドットコム

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日本人男性と20年以上もパートナー関係にあるにも関わらず、国が在留特別許可を与えず、退去強制命令書を出したのは違法だとして、千葉市在住の台湾人男性Aさん(40代)が処分取り消しを求めていた訴訟。国が3月15日、処分を取り消して、Aさんに在留特別許可を与えていていたことがわかった。本人と弁護団が3月22日、東京・霞が関の司法記者クラブで会見を開いて明らかにした。


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弁護団によると、日本人の同性パートナーをもつ外国人に対して、在留特別許可が与えられるケースは、今回が初めてという。弁護団の永野靖弁護士は会見で「同性カップルのパートナー関係が法的に保護された。極めて大きな意義を有する」と述べた。Aさんは「パートナーは私にとって大切な家族。これからも支え合って生きていきたい」と語った。



●国は「在留特別許可」を出さない処分をおこなった

弁護団によると、Aさんは10代のころ、自分の性的指向が同性愛と気づいたという。1993年、日本語能力試験の受験のために来日した際、日本人男性Bさん(現在50代)と出会って、交際をスタート。まもなく同居しはじめたが、Aさんは在留期間が過ぎて、オーバーステイとなってしまった。



Aさんは1995年ごろ、HIV陽性であることが判明したが、2人は支え合って暮らしてきた。Aさんは2016年6月、職務質問を受けて、オーバーステイで逮捕された。東京入国管理局は同年10月、在留特別許可を出さない処分をおこなったうえで、さらに11月、退去強制命令書の発布をおこなった。



在留特別許可のガイドラインには、許可が認められる積極的要素の一つとして、「日本人と婚姻が法的に成立していること」がある。そのため、異性のカップルが結婚している場合、外国人がオーバーステイだったとしても、在留特別許可が与えられるケースが少なくない。



一方で、現在、日本では同性婚が法的に認められていないが、Aさんは2017年3月、Bさんと20年以上も夫婦同然の生活をしてきたとして、国を相手取って、処分の取り消しをもとめて、東京地裁に提訴した。



●「同性カップルは隠れて生きていくしかできませんでした」

Aさんの本人尋問、Bさんの証人尋問を受けて、東京地裁が、国に「処分の見直しはできないか」と打診したところ、国から「再審査の申し出をすれば在留特別許可を与える」という回答があったという。その後、Aさん側が、再審査を申し出たところ、3月15日に在留特別許可(定住者・1年)が与えられた。Aさんは訴えを取り下げた。



Aさんは「オーバーステイで25年間、ひっそりと暮らしてきました。愛する人と一緒に暮らすことは、異性カップルなら社会的に認められていますが、僕らは同性カップルなので、隠れて生きていくことしかできませんでした」「日本国憲法は、同性婚を禁止していません。同性カップルの婚姻ができれば、僕たちの人生も変わっていたかもしれません」と心境を明かした。



Bさんは「パートナー(Aさん)がオーバーステイの状態から抜け出すことができました。私たちの人生や未来は、色にたとえると、グレーだと思っていました。これからは、少しでも明るい色になれるように、2人で前向きな気持ちと感謝の気持ちを忘れずに生きていきたいと思っています」と話した。2人は現在、千葉市の同性パートナーシップの手続きをおこなっているという。



(弁護士ドットコムニュース)