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『まんぷく』主人公夫婦はマッドでクレイジー!? 周囲の人たちのエピソードが欠かせないスパイスに

2019年03月22日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

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 マッドな夫とクレイジーな妻。ネットでは『まんぷく』(NHK総合)主人公夫婦をそう呼ぶ声も聞こえてきます。


 最初の頃、あのラーメン屋台でデートしてた頃は、シャイでドジな発明家と、常識的ながんばり屋さんの、ほのぼのカップルだと思っていたのに。あの頃はお互いに自分をおさえていたのでしょうか。


 物語が進むにつれ、気がつけば萬平さん(長谷川博己)は夢中になると周囲が見えなくなる、マッドな発明家に。妻の福ちゃん(安藤サクラ)もそれを止めずに、むしろ夫を焚き付けて、生活が不安定であればあるほど楽しそうなクレイジーな妻に。ずいぶん印象が変わりました。


 ふたりの暴走(逮捕三回!)をあっけにとられて観ているうちにもう昭和40年代。白髪混じりとなったこの夫婦にはまた変化が起きています。一人で突っ走り、「どうしてわからないんだ!」と周りを責めていた萬平さんが「みんなで一緒にやろう」と若い部下たちに任せるようになり、萬平さんにべったりだった福ちゃんは、女友達と楽しげにおしゃべりするシーンが増えた。歳をかさねて、マッドな爆発もクレイジーな生活も、ある程度はコントロールできるようになったようですね。……ある程度、ですが。毎晩アイデアを思いつくたびに家族を叩き起こす萬平さん、それに耐える福ちゃんたち、すごい……。


 そして、そんな夫婦がどう見ても中高年にしか見えないのが、すばらしいと思います。白髪以外には特に老けメイクをしているように見えないのに、姿勢や声の出し方、手の動き(あの誰彼かまわずぺちんと叩く感じ)などが「老いた人」なんですよね。そういえば初めてのデートシーンでは逆に、二人とも初々しい若者にしか見えませんでした。


 長谷川博己・安藤サクラのお二人の、演技による年齢の変化が、ほんとうにうまい。


 寝室でお互いにマッサージなどして過ごす二人には、初期の頃の、見てるこちらがついドキドキしてしまうような色気は消えたけれど、その代わりにおだやかな、お互いを慈しむ空気があって、好きな人と一緒に年を取るのってステキだなと思います。見た目も形も変化したけど、愛は変化していない。


 残り数話となりましたが、二人の物語はどんな風に大団円をむかえるのか。マッドでクレイジーな夫婦の「変わるもの/変わらないもの」を最後まで見届けたいです。(文・イラスト=渡辺裕子)